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FCNTのLenovoグループへの事業譲渡、清算配当率は「0%」

 5月30日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請したFCNT(株)(TSR企業コード:027062554、神奈川県)のLenovoグループへの事業譲渡が完了した。受け皿会社の担当者は東京商工リサーチ(TSR)の取材に応じ、「社員が営業日として稼働する10月2日より新体制で事業運営を開始した」とコメントした。




 「らくらくスマホ」で知られるFCNT(株)は同業他社との競合激化や円安の進行、世界的な半導体不足の影響などで行き詰まった。民事再生法を申請した時点では、プロダクト事業(携帯端末等の技術・開発、販売修理等)のうち、「製造・販売事業については、具体的なスポンサー支援の意向が表明されていない」と関係先に説明していた。ただ、6月16日付でLenovoよりスポンサー支援の意向表明を受けたことで状況が大きく変わった。その後、Lenovo Group Limited(DUNS:662424795)をスポンサーに正式に選定した。
 東京商工リサーチが独自入手した「事業譲渡に関するご説明資料」(9月11日付、以下本資料)によると、事業譲渡代金は「19億1,000万円(予定)」と記載されている。
 本資料によると、譲渡対象はFCNT(株)のプロダクト事業、サービス事業(携帯端末に関連する各種サービス事業)で、具体的には、▽在庫等の流動資産、▽設備等の有形固定資産、▽ソフトウェア、知的財産権等の無形固定資産、▽投資その他の資産などだ。ソリューション事業は含まない。また、再生債権に係る債務は承継しない。
 9月20日に受け皿会社となるFCNT合同会社(TSR企業コード:698849809、神奈川県)が設立された。本資料によると、FCNT(株)は大和管財(株)へ商号を変更するという。10月13日時点、FCNT(株)の商業登記簿は「登記事件の処理中」で閲覧できない。

清算配当率は「0%」

 本資料には、事業譲渡代金を19億1,000万円(予定)とする一方、清算配当率は「0%が見込まれる」と記載している。このため、「清算配当による場合と比較して再生債権者に有利な弁済率が見込まれる」と、事業譲渡スキームの正当性を主張している。
 破産(清算)を想定した場合、保有するソフトウェアや特許権、商標権などの無形固定資産について、「当社が販売する製品の開発・製造上で不可欠な技術ではあるが、他社事業の製品開発・製造に転用可能な汎用性には欠く」(本資料)と判断したという。また、簿価約6億円の在庫については、「FCNTの製品を修理する際に用いる修理用部材である」「他社事業に転用可能な汎用品のみではなく当社向けのカスタム品も相応にある」(本資料)とし、換価費用を見込んだ上で清算価値は0円とした。これらを考慮し、清算配当率は0%と試算した。
 再生手続の進捗によっては、一般債権者への初回の弁済率は0.5~1%を上回ることも想定しているという。また、追加で原資が確保できた場合、追加弁済することも明らかにしている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2023年10月17日号掲載「Weekly Topics」を再編集)

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