• TSRデータインサイト

「燃料高」「人手不足」で疲弊する道路貨物運送業 倒産件数は1-9月で234件に急増

 2023年1-9月の道路貨物運送業の倒産は、件数が234件(前年同期比34.4%増)と、3年連続で前年同期を上回り、2014年以降の10年間では、2014年同期(238件)に次ぐ高水準だった。
 負債総額は、342億2,700万円(前年同期比12.5%増)で2年連続で前年同期を上回った。倒産件数の大幅な増加に加え、負債5億円以上10億円未満が14件(前年同期8件)、1億円以上5億円未満が88件(同58件)と増加し、負債総額を押し上げた。なお、10億円以上の大型倒産は1件(前年同期4件)にとどまった。
 資本金別では、1千万円未満が170件で構成比72.6%(前年同期56.3%)を占め、中小・零細企業の割合が高まった。

 燃料費の高騰などによる「物価高」関連倒産は85件(前年同期比84.7%増)で、前年同期の1.8倍に増加。2023年9月末時点で軽油価格は1リットル160.1円と、2008年以来の160円台で推移し、高止まりの状況が続いている。「物価高」関連倒産は、2023年6月以降、10件以上で推移しており、燃料費の高騰が運送業者に大きな打撃を与え続けている。

 「人手不足」関連倒産は、30件(同114.2%増)で前年から2.1倍に急増し、集計を開始した2013年以降では最多件数となった。求人難が15件(前年同期4件)、人件費高騰が9件(同2件)とそれぞれ急増しており、深刻な人手不足と、人材確保のための賃金アップや時間外手当などの捻出に苦しむ企業の実態が浮き彫りとなっている。

 ドライバーの時間外労働の上限が年間960時間に規制されるまで半年を切った。政府は、外国人労働者の在留資格である「特定技能」への自動車運送業の追加や、輸送手段を鉄道やフェリーなどに転換する「モーダルシフト」を進める目標を掲げるなど、「2024年問題」に対応する施策の検討を進めている。しかし、ゼロゼロ融資の返済に加え、燃料費の高止まりや人手確保のための人件費上昇で、すでに経営が疲弊した企業は多い。業績回復が遅れ、資金繰りが限界を迎えた中小・零細企業を中心に倒産は増勢が続く可能性が高い。


道路貨物運送業の倒産 年次(1-9月)推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2024年度「他都道府県への本社移転」 1万6,271社 TSMC効果?九州が転入超過トップ、県別トップは埼玉県

2024年度に他都道府県に本社・本社機能を移転した企業は1万6,271社(前年度比18.7%増)で、前年度から大きく増加した。コロナ禍からの人流回復や需要変化に合わせ、本社移転の動きが活発化している。

2

  • TSRデータインサイト

創光科学の「破産開始決定」が取消しに ~上場子会社、複雑に絡まり合う利害関係 ~

東証プライム上場の医療機器メーカー、日機装(株)(渋谷区)は5月15日、連結子会社の創光科学(株)(渋谷区)の破産開始決定の取消しに関する経過を開示した。 破産手続きを巡り、2年にわたる親会社VS創業者の異例の抗告合戦へと発展した事件は、最高裁の判断でようやく決着した。

3

  • TSRデータインサイト

警備業界は大手2社の寡占化が進む 人手不足で倒産・休廃業が過去最多

全国の主な警備会社828社の2024年の業績は、売上高が1兆9,180億円(前年比2.6%増)、最終利益は1,604億円(同15.6%増)と、堅調に推移している。 業界市場は拡大しているが、大手の寡占化が進み、中小・零細事業者は人手不足でコストが上昇し、経営環境は厳しさを増している。

4

  • TSRデータインサイト

「雇調金」不正受給 倒産率は平均の約31倍 不正公表1,699件、サービス業他が45%

全国の労働局が4月30日までに公表した「雇用調整助成金」(以下、雇調金)等の不正受給件数は、2020年4月からの累計が1,699件に達した。不正受給総額は551億6,918万円にのぼる。

5

  • TSRデータインサイト

マレリにマザーサンが買収提案、私的整理の協議の行方は ~ 「マザーサンの提案は選択肢の一つ」 ~

自動車部品大手のマレリホールディングス(株)は5月26日、私的整理を協議するために都内で集会を開催した。 集会後、マレリHDの関係者が東京商工リサーチの取材に応じ「マザーサンの買収提案は選択肢の一つだ。それしかないような報道がなされているが、一択ではない」とコメントした。

TOPへ