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東京富士法律事務所・足立学弁護士 単独インタビュー(後編)

~ コロナ支援の副作用で倒産増へ、カギは「廃業型私的整理の活用」 ~


―コロナ禍前と比較して事業再生に変化は

 今年4月から課税庁の対応が大きく変わり、非常に厳しくなった印象だ。2年間滞納し、担保もなく速やかに完済する見通しも立てられないことは問題ではあるが、事業性があるのか、中小企業活性化協議会などの手続きの成立見通しがつくのかなど会社の中身も見て欲しい。不採算事業の閉鎖を進めると一時的にコストが掛かるが、効果が出てこれから反転攻勢に移るタイミングでも「年内に完済の目途がつかなければ差押」と言われるとつらい。課税庁と相談して分割で毎月支払っていたが、突然、ダメと言われるケースもある。
 事業再生を担当する弁護士が課税庁に現状が伝わるように説明しなければならないが、中身をみて判断して欲しいと思う。

―事業譲渡後の破産が増えているように感じる

 税金や社会保険料などの滞納分を完済することが難しいケースでは、事業の一部を譲渡する破産手続きが増えると思う。ただ、破産後に管財人が事業譲渡を認めないこともあり、予見可能性を高める必要がある。例えば500万円で一部事業を譲渡し、その後破産した場合、「あと200万円出さないと認められない」と言われるケースが増えると事業譲渡に及び腰になるし、譲受人に事前にきちんとした説明をするのが難しくなる。管財人によって事業譲渡の認識が異なることを防ぐためにも小規模の破産でも裁判所に事前相談できると譲受人も安心できる。
 

―私的整理の現場では「第三者支援専門家が偏っている」との声がある(※1)

 「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」では、再生実務の経験がある弁護士や会計士などで適格認定を得た第三者支援専門家が再生計画案などを検証することになる。これに基づき第三者支援専門家のリストが作成されている。金融機関など債権者が了承すればリストに載っていなくても選ぶことができるが、実際はリストに名前が載っていない人を選ぶケースはほとんどないのではないか。第三者支援専門家として挨拶すると、最初に金融機関から「リストに名前はありますか?」と聞かれる。ガイドラインに基づく手続きは、全国的に行われるべきだが、実際には第三者支援専門家のいない都道府県が多い。第三者支援専門家の認定にはいくつか要件があるが、第三者支援専門家の補助者を3件以上やると要件を満たす。また第三者支援専門家がいない地方では、ガイドラインに基づく手続きの件数も少ないことが見込まれるため、実際に補助者を3件やることは難しく、大都市への偏在が続くことが懸念される。
 このように地方に第三者支援専門家が少ないこともあり、地方の案件に関与させていただくことがある。中小企業では社長との距離感、寄り添うことが非常に重要だ。実際に弁護士と社長との間に物理的な距離があると、ウェブ会議や電話などを活用しても信頼関係が構築できず上手くいかないことがある。
 十分な能力がある専門家がいるのに、資格がないだけで担当できない事態が発生している恐れがある。推薦制度など地方の第三者支援専門家を増やす取り組みが必要だろう。

※1 2022年9月20日時点の第三者支援専門家リストによると、総数169人のうち、東京が91人、大阪が21人で、宮城や埼玉など15県はゼロ

―私的整理は地域で温度差があると聞く

 地域によって私的整理の位置付けが異なっている。その地域の有力な金融機関が消極的だと成り立たない。私的整理が進まず、最終的に破産しか選択できなくなることもある。そうした地域は私的整理の件数が少なく、第三者支援専門家も育たない。私的整理の多数決制度の導入がそのような流れを変える可能性はある。現状、私的整理に消極的な地域や金融機関があっても多数決が突破口となり成立する見込みが出てくる。



倒産増加を予想する足立学弁護士
倒産増加を予想する足立学弁護士

―私的整理ではリース債権の扱いが難しい

 活性化協議会などは金融機関を対象とし、リース債権者は対象外とするのが原則だ。ただ、資金繰り上の問題でリースの金額が大きいと、リース債権者にも残高維持を要請することがある。だが、リース債権者の取り扱いが定まっておらず、協議会の手続きとリース債権者の手続きの関係も明確とはいえない。
 一方、いわゆる「廃業型私的整理ガイドライン」(※2)ではリースも対象債権者として明記されている。例えば、金融機関は元本の返済を止めて利息のみ支払うとして手続きを進める場合、リース債権者は利息に該当する部分を考慮するのか否か、仮に考慮するとした場合、どのように考えるのかについて決まったルールはない。現状はケースバイケースで対応していると思われるが、リース債権者からは戸惑いの声も聞かれる。何らかの指針が示せると良い。

※2 「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の第三部で定められた「廃業型私的整理手続き」

―今後の倒産動向は

 間違いなく増える。コロナ融資の返済スタートもあるが、課税庁の差押などによる倒産も増えると見込まれる。
 廃業型私的整理手続きが活用されるかどうかが重要だ。ただ、懸念している点が大きく3点ある。1点目は、先ほど述べた第三者支援専門家の偏在の問題。2点目は、債権放棄の場面で事実上、特別清算手続を利用せざるを得ないことだ。経済合理性の判断において、破産では破産手続きの費用(管財人報酬等)などのコストがかかるが、廃業型ではそのコストが必要ない点も大きい。しかし、直接放棄が難しい信用保証協会付の債権の対応のため、特別清算手続きという法的手続きを要することになり、一定のコストが必要になっている。3点目は、補助金給付の判断の際、経済合理性の判定において補助金を考慮してよいのかとの論点があることだ。廃業型では、公認会計士などによる財務デューデリジェンスを要する。これは大変な作業で費用もかかる。破産ではそのような作業は必要ない。弁護士としても廃業型よりも破産申立の方が業務量は少ない場合が多いと思われる。それでも補助金を活用することで破産よりも廃業型の方が清算価値が高いという案件もあるだろう。補助金を考慮せず経済合理性で勝る場合のみ補助金の対象になるとすると、立ち行かない事案や入口段階で見通しが付かずに断念せざるを得ない事案も出てくるように思う。
 これらの問題をクリアして廃業型私的整理手続を活用できるかがカギになるだろう。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2023年7月28日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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