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不動産業から見た「活気のある街」トップは港区、木更津・相模原などの郊外も上位に

~企業数から見た首都圏の不動産業「活性度」調査~


 首都圏(1都3県)の不動産業における「活性度」トップは、「東京都港区」で66.8ポイントだった。企業数が1万723社で、他エリアに比べ突出して多かった。次いで、「埼玉県さいたま市大宮区」が65.5ポイント、「東京都中央区」が64.3ポイントの順で、トップ10のうち、8エリアを東京23区が占めた。
 東京都以外では、駅前再開発や東京湾アクアライン、リニア新幹線(開発進行中)などの交通インフラ拡充により、生活や交通の利便性が高まったエリアが上位。各県のトップは、埼玉県は「さいたま市大宮区」が2位、千葉県は「木更津市」が59.2ポイントで8位、神奈川県は「相模原市緑区」が58.3ポイントで11位だった。


 新設法人率は、東京都千代田区(7.0%)や東京都中央区(5.4%)など、オフィスや商業施設の集積エリアだけでなく、埼玉県八潮市(6.6%)、神奈川県横浜市磯子区(6.3%)、神奈川県逗子市(5.96%)、神奈川県相模原市緑区(5.94%)など、ベッドタウンでも高かった。
 新設法人増減率では、千葉県木更津市が250.0%増で最も高かった。このほか、横浜市栄区(233.3%増)、相模原市緑区と埼玉県入間市(各200.0%増)など、住宅地エリアで高かった。
 一方、企業数が多い東京都港区(17.1%減)や東京都千代田区(12.2%減)などの都心部では、新設法人数が減少したエリアもあった。
 郊外でも交通インフラの整備で利便性が飛躍的に高まったエリアは、活性度ランキングで上位にランクインしている。不動産価格の高止まりが続く中心部エリアに対し、開発余地を残す郊外エリアの活性度がどう変化するか、今後の動向が注目される。

※ 本調査は、東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース(約400万社)から、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の「不動産取引業」「不動産賃貸業・管理業」を抽出し、企業数が200社以上の131市区郡を各ランキングにまとめた。
※ 首都圏の不動産業を対象に、①企業数、②新設法人率(全企業数に占める新設法人数)、③新陳代謝率(倒産、休廃業・解散に対する新設法人の割合)、④2019年から2022年の新設法人数増減率、⑤エリア別の1企業あたりの世帯数、⑥2020年1月から2023年1月の地価公示増減率、を市区郡ごとに算出し、エリア別「活性度ポイント」を算出した。
※ 活性度ポイント:項目①~⑥をポイント化し平均したものを活性度ポイントと定義づけた。各項目のポイントは、一般的な偏差値の公式「(各項目の数値-項目の平均)÷標準偏差×10+50」で算出した。



活性度ランキング 東京都港区が1位

 活性度ランキングは、「東京都港区」が66.8ポイントでトップだった。新設法人数は、コロナ禍前の2019年比で17.1%減少したが、企業数は1万723社と突出して多く、ポイントを押し上げた。
 2位は、「埼玉県さいたま市大宮区」の65.5ポイントで、地価公示上昇率が際立って高かった。
 このほか、東京湾アクアライン開通で利便性が高まり、近年はコストコ本社の移転先として話題になった「千葉県木更津市」が8位、JR橋本駅南口でリニア中央新幹線新駅の工事が進む「神奈川県相模原市緑区」が11位にランクインした。
 ランキング下位エリアは、現状は注目度が低いエリアとなるが、交通面や生活利便面で大きな変化があった場合、一転して“穴場”エリアになる可能性もある。

不動産業 活性度ランキング(企業数200社以上)

企業数は港区が1万723社で、唯一1万社超え

 不動産業が最も多いエリアは、「東京都港区」で1万723社だった。商業施設やオフィス、マンションなど多くの施設が立地し、国内有数の職住一体エリアだけに用途を問わず様々な不動産が取引されている。各国大使館の半数以上が港区に所在しており、国内だけでなく、国外からの不動産需要も高いエリアになっている。
 次いで、2位が「東京都渋谷区」で6,863社、3位が「東京都新宿区」で6,771社と続く。5位まで官公庁やオフィス、商業施設などが集積する都内5区が占めた。さらに都内23区では、荒川区、墨田区、葛飾区、北区の4区を除き20位以内に入り、東京の一極集中を裏付けた格好となった。
 東京都以外では、20位に「神奈川県横浜市中区」がランクイン。「元町・中華街」や「関内」駅があり、商業施設や飲食店が多いエリアだ。このほか、埼玉県では21位に「川口市」が1,836社、千葉県では22位に「船橋市」が1,596社で、それぞれランクインした。

不動産業 企業数ランキング

新設法人率は千代田区が唯一の7%台

 企業数に占める新設法人率は、「東京都千代田区」が7.0%でトップだった。大企業が集中する丸の内・大手町を抱えた国内経済活動の中心地で、優れた交通利便性からオフィスを中心に不動産取引が活発なエリアになっている。新設法人数は430社で、2番目に多かった。
 2位は「埼玉県八潮市」の6.6%、3位は「神奈川県横浜市磯子区」が6.3%で続く。都心や横浜駅近郊のオフィスエリアへのアクセスが良好なベッドタウンであるほか、工場・物流施設が多い工業地帯としての性質を持ち合わせたエリアとなる。
 新設法人数が最も多い「東京都港区」は、新設法人率が5.1%で11位にランクインした。
 東京都はオフィス・商業施設が集積し、新設法人率も高いが、埼玉県、神奈川県、千葉県は、県内中心部よりベッドタウンエリアで新設法人率が高くなる傾向がある。

企業数に占める新設法人率ランキング



首都圏は大半のエリアで新設法人数が倒産、休廃業・解散数を上回る

 2022年の新設法人数と倒産や休廃業・解散数を比較し「新陳代謝率」を算出した。新設法人の割合が最も高いエリアは「東京都国分寺市」の1700.0%(新設法人17社、倒産、休廃業・解散1社)。新宿駅など都内中心部への交通アクセスが良く、自然を多く残す落ち着いたエリアである。
 一方、逆に倒産、休廃業・解散数が新設法人数を上回るエリアは、「東京都東久留米市」と「東京都青梅市」、「神奈川県横浜市港南区」の3エリアのみ。首都圏では、宅建業者を含め不動産業者数は増加傾向にあり、大半のエリアで新設法人数が倒産、休廃業・解散数を上回った。
 新設法人の割合が高いほど、経済活動が活発で不動産需要が高いエリアとみることができるが、その分だけ同業者間の競合は激しく、市場規模からみた過熱感の高まりから進出が難しいエリアになる可能性もある。

新陳代謝率(倒産、休廃業・解散に対する新設法人の割合)ランキング

新設法人増減率は「千葉県木更津市」がトップ

 新設法人数を2022年と2019年で比較した。最も増加率が高いエリアは「千葉県木更津市」の250.0%だった。東京湾アクアラインの開通で神奈川と東京中心部への利便性が高まったエリアで、住宅や商業施設などの開発が進んでいる。新設法人数は、2019年の4社から2020年8社→2021年12社→2022年14社と3年連続で増加している。
 次いで、2位の「神奈川県横浜市栄区」が233.3%、3位の「神奈川県相模原市緑区」が200.0%で続く。東京23区では、「東京都文京区」が30.5%で24位に入った。
 新設法人増減率は、オフィスなどの多い中心部より、住宅地エリアで高い傾向が見られた。企業数と新設法人数トップの「東京都港区」は、新設法人増減率が2019年比で17.1%減と減少した。

新設法人増減率ランキング

1社あたりのエリア世帯数は「埼玉県久喜市」が323.7世帯/社でトップ

 不動産業1社あたりのエリア世帯数を算出した。上位は住宅地エリア、下位はオフィスの多い中心部エリアが並んだ。
 1社あたりの世帯数が最も多いエリアは、「埼玉県久喜市」で323.7世帯/社だった。次いで、2位が「千葉県野田市」で305.8世帯/社、3位が「神奈川県座間市」で301.0世帯/社と続く。東京駅から20キロ以上離れたエリアが上位を占めた。
 1社あたりの世帯数が最も少ないエリアは、「東京都千代田区」で6.1世帯/社だった。次いで、2位が「東京都港区」で13.6世帯/社、3位が「東京都中央区」で14.9世帯/社で、都心3区が上位を占めた。中心部は住宅だけでなく、オフィスや店舗の取引比率が高く、1社あたりの世帯数は少ない傾向にある。
※ランキングが高いほど「活性度」ポイントは低い。

1社あたりのエリア世帯数

地価公示上昇率は「埼玉県さいたま市大宮区」が上昇率19.6%でトップ

 2023年とコロナ禍前の2020年(1月1日時点)の地価公示を比較した。地価上昇率は「埼玉県さいたま市大宮区」が19.6%で突出した。もともと埼玉県の商業の中心エリアだが、大宮駅周辺で大規模再開発が進行しており、さらに利便性が高まることが期待されている。
 次いで、2位が「千葉県浦安市」で14.0%、3位が「千葉県習志野市」で11.5%と続く。
 東京23区では、14位に「東京都台東区」が7.0%、16位に「東京都港区」が6.9%でランクインした。都心部でも地価公示は上昇しているが、すでに高価格帯で推移しており、相対的に割安感のある埼玉県や千葉県エリアで上昇率が大きい傾向が見られた。

地価公示変動率ランキング


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