• TSRデータインサイト

「コロナ関連」の支援効果薄れ、美容室倒産が1.4倍のペース

~ 2023年(1-4月)「美容業の倒産動向」調査 ~


 2023年1-4月の美容業(美容室)倒産(負債1,000万円以上)が、31件(前年同期比40.9%増、前年同期22件)と大幅に増えている。2019年に過去最多の105件を記録した美容室の倒産は、コロナ禍の資金繰り支援策が奏功し、客足が減っても2020年に78件、2021年は65件と抑制されていた。しかし、コロナ関連支援が一巡した2022年後半以降、再び増勢を強めている。

 コロナ禍で「三密」が直撃した代表的な業界だった美容室は、利用控えによる客足減少などで厳しい業況に置かれたが、コロナ関連支援策の下支えにより倒産は減少していた。こうしたなか、美容室倒産に占めるコロナ関連倒産は、2020年は8.9%にとどまっていたが、2021年は27.6%、2022年は32.8%とジワリと上昇をたどり、2023年1-4月は54.8%と半数を超えた。
 美容室は参入障壁が低く、独立も容易で小・零細規模の経営が多い。厚生労働省が今年1月に公表した「令和3年度衛生行政報告例」によると、2021年度の全国の「美容所」は26万4,223施設で、コロナ禍でも前年度から2.5%増え、11年連続で増加している。
 人流が回復しコロナ禍が緩和しても、少子化や人口減少に伴う同業者間の競合は激化を増している。さらに、人件費増や電気代の上昇、商材の価格高騰も収益悪化に追い打ちをかけている。
 技術や価格などでの差別化が困難な美容室を中心に、今後は淘汰が加速し、2023年の美容室倒産は2019年以来、4年ぶりに100件台に乗せる可能性も出てきた。

※本調査は、日本産業分類の「美容業」に基づき、2023年(1-4月)の美容業の倒産を集計、分析した。



美容室倒産、新型コロナ関連は5割超

 2023年1-4月の「美容業」倒産は31件(前年同期比40.9%増、前年同期22件)で、前年同期の1.4倍と増勢を強めている。このうち、「新型コロナ」関連倒産は17件で、構成比は5割(54.8%)を超えた。
 近年、美容室は事業者数の増加による過当競争や人手不足などで、倒産は増勢をみせていた。2019年には105件と年間最多を更新したが、コロナ禍では外出自粛や利用控えが広がるなか、コロナ関連支援の効果で倒産は2年連続で減少。2021年は過去10年間で最少の65件にとどまった。
 だが、2022年に入ると、コロナ対策の資金繰り支援効果が薄れる一方、電気代や商材価格の高騰、人手不足による人件費上昇に見舞われた。こうした動きを背景にして、2022年10月以降は2023年1月と2月を除き、美容室の倒産は前年同月比50.0%超の増加率で推移している。現在のペースが続くと2023年の美容室倒産は、過去最多を記録した2019年の105件を上回る可能性も出てきた。

美容業倒産 月次推移

【原因別】『不況型』倒産の構成比が9割

 原因別では、最多は「販売不振」の25件(前年同期比19.0%増、構成比80.6%)。次いで、「既往のシワ寄せ」が4件(前年同期ゼロ、同12.9%)、「運転資金の欠乏」と「金利負担の増加」がそれぞれ1件(同ゼロ、同3.2%)だった。
 長引くコロナ禍で客足の減少や採算悪化が、業績に深刻な影響を与えたケースも散見される。
 『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は29件(前年同期比38.0%増)で、美容室倒産に占める構成比は93.5%となり、事業環境の厳しさを示している。

2023(令和5)年(1-4月)美容業 原因別倒産状況

【形態別】「消滅型」が96.7%

 形態別は、「破産」が27件(前年同期比35.0%増)で、美容室倒産に占める構成比は87.0%だった。「特別清算」の3件(前年同期ゼロ、構成比9.7%)と合わせると、96.7%が「消滅型」の倒産だった。
 「再建型」は個人企業の小規模個人再生1件のみで、体力に乏しい小・零細規模の事業者が多い美容室は、再生の見通しが立たず事業継続を断念するケースがほとんど。

2023(令和5)年(1-4月)美容業 形態別倒産状況

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

私立大学の経営、売上トップは(学)順天堂 赤字企業率5割に迫る、損益は地域格差が鮮明に

私立大学を経営する全国の543法人のうち、約半数の253法人が2024年決算で赤字だった。赤字企業率は46.5%にのぼり、前期(40.8%)から5.7ポイント上昇し、5割に迫った。

2

  • TSRデータインサイト

企業倒産、破産の割合が9割超で過去最大 ~ 背景に「手形減少」と「準則型私的整理」 ~

企業倒産のうち、破産の構成比が90.3%に達し、過去最大を記録した。民事再生法はわずか2.2%にとどまる。破産は、売上不振や財務内容が悪化し、再建が見通せない企業が選択する。なぜ今、破産の構成比が高まっているのか――。

3

  • TSRデータインサイト

2025年上半期 20床以上の病院倒産が急増 「病院・クリニック」倒産21件、5年連続で前年同期を上回る

病床20床以上の病院の経営が厳しさを増している。2025年上半期(1-6月)の病院・クリニックの倒産は21件(前年同期比16.6%増)だった。上半期では、コロナ禍の2020年を底に、2021年から5年連続で前年同期を上回り、1989年以降で最多の2009年同期の26件に次ぐ、2番目となった。

4

  • TSRデータインサイト

リフォーム・塗装工事の倒産が急増 ~ 点検商法などのトラブル多発 ~

リフォーム・塗装工事の倒産が急増している。2025年上半期(1-6月)の倒産は119件に達し、過去20年で最多だったリーマン・ショック後の2009年同期の111件を上回った。

5

  • TSRデータインサイト

ホテル業界 止まらない客室単価の値上げ インバウンド需要で高稼働・高単価が続く

インバウンド(訪日旅行客)需要に支えられ、ホテル業界は好調が続いている。ホテル運営の上場13社(15ブランド)の2025年3月期の客室単価は、インバウンド需要の高い都心や地方都市を中心に前年同期を上回り、稼働率も前年同期並で高水準を維持している。

TOPへ