「令和」生まれ企業 4年間で約53万社 商号最多は「link」
~ 「令和」設立企業 動向調査 ~
5月1日、元号が「令和」になって丸4年を迎える。「令和」の4年間に設立された企業(以下、「令和」設立企業)は52万8,528社で、最も多かった商号は「link」の178社だった。
産業別では、最多はサービス業他の22万1,125社(構成比41.8%)と約4割を占めた。このうち、学術研究,専門・技術サービス業が7万5,983社で最も多かった。経営コンサルタントや士業、デザイン事務所など、経営者の能力を生かした専門サービスが中心で、“重厚長大“産業が中心だった「昭和」とは様変わりしている。
都道府県別では、最多は東京都の15万8,925社(構成比30.0%)で、全体の3割を占めた。また、1万社以上は大阪府など大都市の10都道府県。一方、最少の鳥取県の1,258社(同0.23%)をはじめ7県が1,000社台で、企業数の地域格差もみられる。
また、「令和」設立企業の倒産は、令和2(2020)年3月の第1号から、累計586件に達する。令和2年度(2020年4月-2021年3月)に38件、令和3年度に157件、令和4年度に390件と右肩上がりで増え、令和4年度(2022年度)は倒産全体(6,880件)の5.6%を占めた。
倒産企業の産業別は、サービス業他が288件(構成比49.1%)と約半数を占めた。参入障壁が低い飲食店や介護関連などが中心だった。「令和」設立の企業は、起業ブームを背景に小資本でスタートした企業が多いが、設立間もない時期にコロナ禍に見舞われ、当初の事業計画通りに進まなかった企業も多い。
※本調査は、令和1年5月以降に設立された法人を「令和」設立企業として抽出し、分析した。
※「令和」設立企業の倒産は、令和5年3月までの全国企業倒産(負債1,000万円以上)から抽出した。
「令和」設立企業 サービス業他が最多の4割
「令和」の4年間で、これまでに52万8,528社が設立された。産業別では、最多がサービス業他の22万1,125社(構成比41.8%)。次いで、建設業の6万139社(同11.3%)、不動産業の5万3,291社(同10.0%)、情報通信業の5万1,164社(同9.6%)と続く。
サービス業が4割を占めるが、さらに細かく分類した業種別でみても、社数トップは学術研究,専門・技術サービス業の7万5,983社。このほか、医療,福祉事業や飲食業など参入障壁が比較的低いサービス業が業種別の上位に目立つ。経営者が相応の経験を積んで起業する「独立型」が多く、起業時に小資本でスタートしやすい業種が多い点も特徴と言える。
また、「令和」設立の上場企業は42社だった。ただし、いずれも持株会社や経営統合などに伴って新設された企業が中心で、「令和」以降に事業をスタートさせて株式上場を果たした企業はなかった。
商号ランキング 最多は「link」、商号が「令和」は68社
「令和」設立企業の商号ランキングは、「link」が最多の178社。僅差で「アシスト」の175社が続き、以下、「NEXT」と「Rise」が同数の142社、「ミライ」が139社の順。
最多の「link」のほか、「コネクト」(9位、122社)、「縁」(16位、111社)、「Connect」(17位、104社)、「絆」(23位、100社)など、人やモノ、サービスなどの繋がりを連想させる商号が目立つ。上位30の商号のうち、カタカナ表記が14社、アルファベット表記が12社と拮抗し、漢字表記が3社でひらがな表記は1社だった。
また、「令和」を商号とした企業は68社で、49位だった。
【都道府県別】1万社以上の設立が10都道府県
都道府県別では、最多が東京都の15万8,925社(構成比30.0%)で、ダントツに多い。
次いで、大阪府の5万1,386社(同9.7%)、神奈川県の3万4,023社(同6.4%)、愛知県の2万6,985社(同5.1%)、埼玉県の2万4,059社(同4.5%)、福岡県の2万2,776社(同4.3%)と続く。大都市圏が上位に並び、1万社以上の設立は10都道府県にのぼる。
一方、最も少なかったのは鳥取県の1,258社(同0.23%)。次いで、島根県の1,336社(同0.25%)、高知県の1,576社(同0.29%)、秋田県の1,646社(同0.3%)などが続いた。
「令和」設立企業の倒産 累計586件が発生
「令和」設立企業の倒産は2020年3月に第1号が発生して以降、2023年3月まで月間1件以上が発生し、月を追うごとに増加が顕著になっている。
年度別(4-3月)では令和2(2020)年度が38件、令和3年度は前年度の4倍以上の157件、さらに令和4年度は前年度の2倍以上の390件が発生した。
特に、令和4年度は9月以降、月間30件を上回り、3月はこれまで最多の48件が発生した。この結果、令和4年度の「令和」設立企業の倒産は、倒産全体(6,880件)の5.6%を占めた。
【産業別】サービス業他が約半数
産業別では、サービス業他が288件(構成比49.1%)で約半数を占めた。次いで、建設業の81件(同13.8%)、小売業の65件(同11.0%)、情報通信業の45件(同7.6%)と続く。
サービス業他の業種別では、最多は飲食業の54件。開業のタイミングとコロナ禍が重なり、厳しい経営環境が続いたほか、テイクアウト業態に参入したが軌道に乗らなかった企業もある。
このほか、訪問介護などの老人福祉・介護事業の38件、経営コンサルタント業の24件など、参入障壁が低く、経営者の能力を生かした専門サービスが多い。
【原因別】「放漫経営」が約3割
原因別では、最多が「販売不振」の304件(構成比51.8%)。次いで、事業上の失敗などが中心の「放漫経営」が161件(同27.4%)で約3割。このほか「他社倒産の余波」が56件(同9.5%)、「過小資本」が31件(同5.2%)、代表者の病気や死亡を含む「その他」が17件(同2.9%)。
「放漫経営」が占める構成比が高いのが特徴で、このうち、大半が事業上の失敗に起因している。事業計画や資金計画の見込みの甘さから事業が軌道に乗らなかったり、そもそも本格稼働にこぎ着けることができず、設立からわずかな期間で破たんに追い込まれるケースも少なくない。
【負債別】負債1億円未満が9割超え
負債額別では、1千万以上5千万円未満が495件(構成比84.4%)で、8割以上を占めた。次いで5千万円以上1億円未満が47件(同8.0%)、1億円以上5億円未満が34件(同5.8%)と続く。負債1億円未満の小規模倒産が542件(同92.4%)で9割超を占めた。
負債10億円以上の大型倒産は9件(同1.5%)発生した。最大の負債額は電力小売(新電力)の(株)ホープエナジー(福岡市中央区、破産)の300億円で、ダントツだった。持株会社体制への移行で分割設立され、グループの新電力事業を承継したが、事業環境の悪化で逆ザヤに陥り行き詰まった。
元号が「令和」となって以降の4年間で、約53万社の企業が設立された。この4年間のうち、約3年はコロナ禍の影響下にあった。社会生活が制限され、企業を取り巻く事業環境が変わるなか、多くの企業がビジネスモデルの見直しや事業の再構築を余儀なくされ、その影響は今も尾を引いている。
こうした混沌の時代に誕生した「令和」設立企業は、コロナ禍とは不可分の関係になっている。「令和」設立企業のうち、586件が倒産したが、このうちコロナ禍が要因となった「新型コロナウイルス関連倒産」は192件で、3割超(32.7%)を占める。
一方でこの間、政策支援などにより倒産は歴史的な低水準に抑制された。緊急避難的なゼロ・ゼロ融資や補助金、助成金などコロナ禍の手厚い支援を得て危機を回避した企業は多い。今後、本格的なアフターコロナの時期に入り、コロナ融資の返済や新たな資金需要など、企業には数多くの課題への対応が必要になっている。また、物価高や人手不足などのコストアップの問題も浮上している。
「令和」設立の若い企業のイノベーションに大きな期待がかかる一方で、生き残りをかけた正念場はこれからが本番を迎える。