2022年度「後継者難」倒産は409件 5年連続で増加、最多件数を更新
~ 2022年度(4-3月)「後継者難」倒産の状況 ~
2022年度(4-3月)の後継者不在に起因する「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は、409件(前年度比0.9%増)だった。2018年度から5年連続で前年度を上回り、調査を開始した2013年度以降で、最多を更新した。
要因別は、代表者の「死亡」が211件(構成比51.5%)、「体調不良」が139件(同33.9%)で、この2要因で「後継者難」倒産の8割超(同85.5%)を占めた。
産業別では、最多がサービス業他の91件(前年度比5.2%減)。次いで、建設業84件(同4.5%減)、製造業82件(同46.4%増)の順。
2022年の経営者の平均年齢は、63.02歳(前年62.77歳)で上昇が続いている。2022年の「後継者不在率」調査(約17万社対象)では、約6割(59.9%)の企業で後継者が未定となっている。
また、2022年に休廃業・解散した企業の経営者は、60代以上が86.4%と高齢化が著しい。
中小・零細企業ほど人的・資金的な制約もあり、事業承継や後継者育成への取り組みが進んでいない。こうしたなか、ここ数年、銀行が規制緩和で投資専門子会社を通じ、事業承継支援のために企業買収に動き始めている。倒産や廃業は、地域雇用の受け皿の消失や人口減などで地域経済の衰退を招きかねない。国や自治体、金融機関がポストコロナに向けて事業再生支援に傾注する動きもあるが、中小・零細企業の事業再生や事業承継への取り組みも重要になってくる。
※本調査は「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、2022年度(4-3月)の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)を抽出し、分析した。
「後継者難」倒産 5年連続で増加、調査開始以来の最多を記録
2022年度の「後継者難」倒産は409件(前年度比0.9%増)で、2018年度から5年連続で前年度を上回った。また、調査開始した2013年以降で、前年度の405件を上回り、最多件数を更新した。
企業倒産は、2022年4月から増勢を強めている。2022年度の「後継者難」倒産は、2022年6月、8月、10月、11月、2023年2月、3月と前年同月を下回るなど一進一退を繰り返しているが、事業を継続していく上では後継者不在は経営上のリスクになっている。
金融機関だけでなく取引先でも、後継者の有無が与信判断の材料として重要性を増している。
代表者が高齢であるほど新たな事業展開に消極的で、将来への投資や事業再構築、時流に合わせた弾力的な経営が難しく、業績悪化に陥る可能性が高まる。さらに、後継者不在による企業の倒産や廃業などの増加は、一企業の問題ではなく、地域経済の衰退を招きかねない。
アフターコロナに向け、自治体や金融機関、投資ファンドなどとともに、中小・零細企業の事業承継に本格的に取り組むことが必要な時期に差し掛かっている。
【要因別】「死亡」が5割、「体調不良」を合わせると8割超
要因別は、最多が代表者などの「死亡」の211件(前年度比1.9%増、構成比51.5%)。4年連続で前年度を上回り、調査を開始した2013年度からの最多を更新した。次いで、「体調不良」が139件(同4.5%増、同33.9%)で、5年連続で前年度を上回った。
「死亡」と「体調不良」は合計350件(前年度比2.9%増)で、5年連続で前年度を上回った。また、構成比は85.5%(前年度83.9%)と上昇した。
このほか、「高齢」が43件(前年度比8.5%減)で、2年ぶりに前年度を下回った。
事業承継までには、5~10年ほど期間が必要と言われる。代表者が高齢ほど、後継者の育成や事業承継の準備は後回しになるケースが多い。代表者の「死亡」や「体調不良」など、不測の事態が発生した場合、すぐに事業承継は難しく、事業継続が困難な状態に陥りやすい。
【産業別】10産業のうち、5産業で増加
産業別件数は、10産業のうち、農・林・漁・鉱業、製造業、小売業、金融・保険業、運輸業の5産業で、前年度を上回った。
小売業が48件(前年度比14.2%増)で4年連続、農・林・漁・鉱業7件(同75.0%増)と製造業82件(同46.4%増)、金融・保険業1件(前年度ゼロ)、運輸業14件(前年度比16.6%増)は2年ぶりに、それぞれ前年度を上回った。
一方、不動産業が15件(同37.5%減)で5年ぶり、建設業が84件(同4.5%減)で4年ぶり、卸売業が56件(同20.0%減)で3年ぶり、情報通信業11件(同15.3%減)とサービス業他91件(同5.2%減)が2年ぶりに、それぞれ前年度を下回った。
業種別では、土木工事業(5→13件)、一般管工事業(5→9件)、中古自動車小売業(3→7件)、はつり・解体工事業(2→5件)、化学機械・同装置製造業(ゼロ→4件)、ラーメン店(ゼロ→4件)、無床診療所(2→4件)。また、3件で型枠大工工事業(前年度ゼロ)、一般電気工事業(同1件)、織物製成人男子・少年服製造業(同1件)、織物製成人女子・少女服製造業(同1件)、各種機械・同部分品製造修理業(同1件)、菓子・パン類卸売業(同2件)、各種食料品小売業(同1件)、自動車(新車)小売業(同2件)、調剤薬局(同ゼロ)、花・植木小売業(同2件)、法律事務所(同ゼロ)、日本料理店(同1件)、配達飲食サービス業(同ゼロ)、訪問介護事業(同1件)などで、それぞれ前年度を上回った。
【形態別】破産が調査開始以来、最多の379件
形態別件数は、最多が消滅型の「破産」の379件(前年度比1.8%増、構成比92.6%)。5年連続で前年度を上回り、調査を開始した2013年度以降の最多を更新した。
一方、再建型の「民事再生法」は3件(前年度1件)、「会社更生法」は2013年度より発生していない。
後継者の育成や事業承継の準備まで手が回らない企業も多く、代表者に不測の事態が生じると事業継続が難しくなり、債務整理のため破産を選択するケースが多い。
【資本金別】1千万円未満が5割超
資本金別件数は、「1千万円未満」が233件(前年度比3.5%増)で、2年連続で前年度を上回った。構成比は56.9%で、前年度の55.5%より1.4ポイント上昇した。
このほか、「5千万円以上1億円未満」が13件(同44.4%増)で、2年ぶりに前年度を上回った。一方、「1千万円以上5千万円未満」は161件(同4.7%減)で、5年ぶりに前年度を下回った。
【負債額別】1億円未満が6割超
負債額別件数は、「1億円未満」が268件(前年度比9.1%減)で、6年ぶりに前年度を下回った。構成比は65.5%と、前年度の72.8%より7.3ポイント低下した。
このほか、「10億円以上」が3件(同40.0%減)で、2年ぶりに前年度を下回った。
一方、「1億円以上5億円未満」が120件(同22.4%増)で4年連続、「5億円以上10億円未満」が18件(同157.1%増)で2年連続で、それぞれ前年度を上回った。
「後継者難」倒産は、小規模倒産が主体だが、中堅規模の倒産にも広がっている。