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創業100年以上 4万2,966社へ 最古は創業から1445年の金剛組  ~ 2023年の全国「老舗企業」調査 ~

 2023年に創業100年以上を迎える老舗企業は、全国で4万2,966社ある。前年から2,197社増加した。
最古の老舗は、社寺建築の金剛組(大阪府)で、578年に創業、業歴1445年を数える。次いで、587年創業の華道「池坊」の池坊華道会(京都府) 、705年創業の旅館でギネスで“世界最古の宿”と認定された西山温泉慶雲館(山梨県)など、業歴500年以上は228社あった。

 全国で100年以上の老舗企業は4万2,966社で、日本の企業全体(358万社)の1.2%に過ぎない。
このうち100年以上200年未満は4万999社で、100年以上の企業群の95.4%を占める。200年以上300年未満は869社(構成比2.0%)と一気に減り、500年以上はわずか228社(同0.5%)と限られた存在だ。
 時代別でみると、明治と大正で3万8,657社(同89.9%)を占める。これ以前では江戸時代は3,914社、安土桃山時代は115社、室町時代は128社、鎌倉時代は51社、平安時代は66社、奈良時代は18社で、飛鳥時代の以前も17社ある。
 業種別では、「貸事務所業」(1,133社)、「土木工事業」(950社)、「建築工事業」(924社)、「清酒製造業」(850社)、「酒小売業」(800社)が上位を占めた。老舗企業の多くは、創業当時からの土地、商品、知名度などの事業資産を有効に継続している業態が多い。

  • 本調査は、東京商工リサーチ(TSR)が保有する約330万社の企業データから、創業年が1923年(大正12年)以前の企業を対象に抽出し、分析した。
  • 本調査では、創業100年以上を「老舗企業」と定義した。 

業歴別 「100年以上200年未満」が9割

 業歴別では、「100年以上200年未満」が4万999社(構成比95.4%)で最も多かった。以下、「200年以上300年未満」が869社(同2.0%)、「300年以上400年未満」が623社(同1.4%)の順。「100年以上200年未満」のうち、2023年に「100年」を迎える企業は2,649社。
 宗教法人を除いて最も創業が古かったのは、世界最古の企業として知られる社寺建築の金剛組(大阪府)の578年創業。聖徳太子の命を受けて百済から日本に招かれた一人が初代で、四天王寺建立にも携わったという。現在は2006年設立の新会社が旧金剛組の事業を継承している。次いで、生け花の根源として技術伝承を続ける池坊華道会(京都府)の587年創業。

老舗企業

時代別 「飛鳥」以前はわずか0.04%

 創業100年以上の企業を時代別でみると、最多は文明開花と殖産興業に沸いた「明治」の2万12社(構成比46.5%)で、約5割を占めた。次いで、「大正」18万645社(同43.3%)、「江戸」3,914社(同9.1%)、「室町」128社(同0.3%)の順。
 「江戸」は、流通が活発になった時代を反映して貨幣制度が確立し、多くの問屋やメーカーなどが誕生。事業が脈々と受け継がれた企業も多い。織田信長や豊臣秀吉時代の「安土桃山」以前に創業された企業も395社あり、古くは聖徳太子時代の「飛鳥」の創業も17社確認された。

老舗企業

産業別 「製造業」「卸売業」「小売業」で7割

 産業別では、「製造業」が1万1,359社(構成比26.4%)と最も多かった。次いで、「小売業」9,050社(同21.0%)、「卸売業」8,825社(同20.5%)と続き、上位3産業で全体の約7割(同68.0%)を占めた。
 最も少ないのは「情報通信業」で218社(同0.5%)。次いで、「金融・保険業」295社(同0.6%)、「農・林・漁・鉱業」454社(同1.0%)、「運輸業」750社(同1.7%)と続く。

老舗企業

業種別 「貸事務所業」1,133社で最多

 業種別では、「貸事務所業」が1,133社(構成比2.6%)で最多。老舗企業は、不動産等の資産を保有し、貸事務所業に業態を変更し事業を継続しているケースが多いようだ。
 次いで、2位は「土木工事業」950社(同2.2%)、3位は「建築工事業」924件(同2.1%)と建設業が続く。建設業は多層的な協力会社を組織することが信用となり歴史の重さも信頼につながりやすい。
 また、4位に「清酒製造業」850社(同1.9%)、5位に「酒小売業」800社(同1.8%)が入り、12位にも「酒類卸売業」が入るなど、酒類関連事業も多い。紀元前には米から酒造りが始まったとされ、酒造業者から販売会社まで多くの老舗企業が全国に存在する。
 6位は、「旅館,ホテル」724社(同1.6%)だった。温泉地や観光地、宿場などで創立し、事業を続ける宿泊業が上位に入った。 山梨県の西山温泉慶雲館は、創業705年で同社によると世界最古の宿としてギネスブックに認定されている。

老舗企業

売上高別 「100億円以上」が1,988社

 売上高別では、「1千万円以上1億円未満」が1万4,435社(構成比33.6%)と最も多かった。
次いで、「1億円以上5億円未満」が1万2,096社(同28.1%)、「10億円以上50億円未満」が5,203社(同12.1%)、「5億円以上10億円未満」が3,587社(同8.3%)と続く。「5億円未満」が2万9,096社(同67.7%)と、小規模企業が中心だが、「100億円以上」が1,988社(同4.6%)と大企業も多い。
 老舗企業のうち、単体の売上高トップはENEOS(1888年創業、東京都)が7兆7,411億円。以下、出光興産 (1911年、東京都)が5兆640億円、日本製鉄(1901年、東京都)が4兆3,659億円の順だった。 

老舗企業

従業員数別 「10人未満」が5割

 従業員数別では、「4人以下」が1万5,137社(構成比35.2%)で最多。次いで、「5人以上10人未満」8,446社(同19.6%)、「10人以上20人未満」6,407社(同14.9%)と続く。
 「10人未満」が2万3,583社(同54.8%)と小規模企業が中心だが、「300人以上」も1,564社(同3.6%)と大企業も多い。

老舗企業

上場企業 全上場企業の1割強

 東京証券取引所など国内証券取引所に上場する老舗企業は688社ある。内訳は、東証プライムが432社(構成比62.7%)で最多。次いで東証スタンダードが238社(同34.5%)で、2市場で97.3%と大半を占め、高い成長可能性を有する市場の東証グロースはゼロだった。
 上場企業で創業が最も古いのは、1586年創業のゼネコンの松井建設(東京都、東証プライム)。1586年創業で、前田利長から越中守山城(富山県)の工事を請け負ったのが始まりとされ、小田原城の復元工事も手掛けた。次いで、1590年創業の住友金属鉱山。京都で銅の精錬などを開業。1690年に愛媛県の「別子銅山」を開坑し、事業を拡大した。3位に綿半ホールディングスがランクイン。1598年に長野県飯田市で綿屋として創業した。

老舗企業


 業歴100年を超える老舗企業の歴史は貴重だ。日本国内には約400万社の企業があるとされ、老舗企業になれるのは、わずか1%の狭き門だ。2022年創業が老舗企業になるには2122年になるまで待たなければならず、100年後がどんな時代なのか予想すら難しい。
 歴史の荒波を乗り越えるだけでなく、従業員や取引先と良好な関係を保ち続ける秘訣も老舗企業にはある。新興企業は、新しい技術や市場を開拓することに長けるが、老舗企業の事業の継続性や承継、再構築など経営のバランス力にはかなわない。
 長期化するコロナ禍で日本経済は閉塞感が強まっている。厳しい時代こそ、老舗企業が時代に風穴を開けることが期待される。

※創業年について
     創業が「〇〇年間」等のように元号もしくは時代のみ判明した場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年とした。
     ただし、江戸時代は前・中・後期に分けた。

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