• TSRデータインサイト

宅配需要と経済再開で段ボールメーカーの業績回復へ

 コロナ禍で通販や宅配が浸透し、何かと段ボールのお世話になることが増えた。2020年度(2020年4月-2021年3月)の段ボールメーカー647社の業績は、コロナ禍で一部産業向けが落ち込んだが、小幅な減収減益にとどめた。2021年度は根強い宅配需要と経済活動の再開で生産が回復し、再び成長軌道に乗りそうだ。


 全国段ボール工業組合連合会によると2021年1-9月の段ボール生産数量は前年同期比3.7%増と伸びている。業界大手のレンゴー(株)(TSR企業コード:570222265、東証1部)は、幅広い分野で好調を維持し2021年4-9月(中間)の連結売上高、純利益がともに上場以来、過去最高だった。
 好調が続く段ボール市況だが、一方で巣ごもり需要の反動減や原材料高騰、脱段ボールの動きなど、新たな動きも出ている。

宮原先生

2020年度はコロナ影響で減収減益

 段ボール製造業や段ボール箱製造業、段ボール原紙製造業を「段ボールメーカー」とし、647社の業績を分析した。
 647社の売上高合計は、2020年度が1兆8,805億1,600万円(前期比4.3%減)で、当期純利益も最新期は585億4,900万円(同1.1%減)と減収減益だった。
 2019年度の売上高計は、1兆9,651億6,000万円(同2.5%増)と伸ばし、利益計も592億2,900万円(同77.9%増)だった。一転して、減収減益に転じた背景はコロナ禍による経済活動の停滞、需要の減退が大きい。

中小企業も多く、収益力に差も

 段ボールメーカーは、資本金1億円未満が605社(構成比93.5%)と9割超を占め、業界の大半は中小企業で成り立っている。
 2020年度の赤字は、178社(同27.5%)で、前年度から9.6ポイント上昇し、赤字企業が約3割に迫った。
 資本金1億円以上の大企業で赤字は42社のうち、4社(同9.5%)にとどまる。1億円未満の中小企業(個人企業他を含む)が605社のうち、174社(同28.7%)が赤字だっただけに、規模格差が収益格差につながっている。


 引越や宅配では、脱段ボールの動きもあり、段ボールを使わない配達も目立ち始めた。段ボールは95%以上がリサイクルされているが、今後もゴミ削減など環境に配慮した技術革新が求められる。
 また、古紙価格などの原材料や生産コストが上昇すると、収益圧迫につながる。
 当面、段ボール需要は堅調な推移が見込まれるが、段ボール以外の生産多角化や、大手と段ボール専業の中小との二極化の進行など、業界再編が進む兆しも見え始めた。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年11月30日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

破産の聘珍樓に予約 約1,000組、前払い客も ~ 横浜中華街の御三家の一角、破産の影響広がる ~

横浜中華街の御三家として知られる老舗の中華料理店である(株)聘珍樓(TSRコード: 017658390、横浜市)と関連2社が5月21日、破産開始決定を受けた。

2

  • TSRデータインサイト

警備業界は大手2社の寡占化が進む 人手不足で倒産・休廃業が過去最多

全国の主な警備会社828社の2024年の業績は、売上高が1兆9,180億円(前年比2.6%増)、最終利益は1,604億円(同15.6%増)と、堅調に推移している。 業界市場は拡大しているが、大手の寡占化が進み、中小・零細事業者は人手不足でコストが上昇し、経営環境は厳しさを増している。

3

  • TSRデータインサイト

ミュゼプラチナム、第三者破産に「積極的な対抗せず」 ~ 運営会社MPH・高橋英樹社長 単独インタビュー ~

大手脱毛サロン「ミュゼプラチナム」を運営するMPH(株)の動向が注目されている。MPHのほか2社でフランチャイズ展開を進めているが、今回の第三者破産を当事者はどう受け止めているのか。 東京商工リサーチは、MPHの高橋英樹社長と関係者に単独取材した(取材日は5月21日)。

4

  • TSRデータインサイト

2025年1-5月の「早期・希望退職」募集人数は8,711人で前年2倍に急増、相次ぐ大型募集

 2025年1月-5月15日までに「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は19社(前年同期27社)で、前年同期より約3割(29.6%減)減少した。しかし、大手メーカーの大型募集が相次ぎ、対象人員は、8,711人(前年同期4,654人)と前年同期の約2倍(87.1%増)に急増した。

5

  • TSRデータインサイト

中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」 は企業の85%が予定

2025年度に賃上げを予定する企業は85.2%だった。東京商工リサーチが「賃上げ」に関する企業アンケート調査を開始した2016年度以降の最高を更新する見込みだ。全体で「5%以上」の賃上げを見込む企業は36.4%、中小企業で「6%以上」の賃上げを見込む企業は9.1%にとどまることがわかった。

TOPへ