上場企業の雇調金 9社が100億円超え 小売は4割超が申請
新型コロナ感染拡大に伴う雇用支援で、2020年4月分から雇用調整助成金(以下、雇調金)の特例措置制度が適用された。2021年7月末までに開示された上場企業の決算資料で、雇調金の計上・申請が814社に達したことがわかった。上場企業(3855社)の21.1%を占める。
前回調査(2021年6月末)の807社から7社増えた。このうち、雇調金計上額は判明した723社で合計5190億4450万円にのぼり、6月末から523億6700万円(11.2%増)増加した。
調査を開始した2020年11月末は2414億5420万円で、8カ月間で2.1倍(114.9%増)に達した。
鉄道、航空などの交通インフラ、外食、サービス、アパレル小売など、業績回復が遅れた業界を中心に、年度をまたいだ雇調金受給が増加し、計上額を押し上げた。
東京五輪の開幕(7月23日)前に東京都などに発令された緊急事態宣言は9月12日まで延長され、対象地域も21都道府県に広がった。飲食を含む小売業やエンタメサービス業、交通インフラでは、依然として企業活動が制限されるなど、BtoCを中心に先行きが見通せない状況が続く。こうした状況から、当面は消費活動への打撃は避けられず、雇調金の計上額は今後も増えるとみられる。
- ※本調査は、雇用調整助成金の受給、または申請を情報開示した上場企業を対象に、2020年4月1日~2021年7月31日で金額、および活用や申請を開示資料に記載した企業を集計した。今回の調査で9回目。
【計上額別】「100億円以上」が9社
814社の計上額レンジ別は、最多は1億円未満で286社(構成比35.1%)だった。
次いで、1億円以上5億円未満が273社(同33.5%)で、ともに3割を占めた。
6月末と比べた社数では、増加は1億円未満(282社→286社)、1億円以上5億円未満(272社→273社)、10億円以上50億円未満(85社→87社)、100億円以上(5社→9社)。
一方、社数が減少したのは、5億円以上10億円未満(61社→59社)、50億円以上100億円未満(10社→9社)だった。
外食や鉄道が計上額を押し上げ、100億円以上は、6月末から4社増加した。
【業種別】小売(外食含む)と運送で社数増、小売の利用率は44.3%で半数に届く勢い
814社の業種別は、製造が322社(計上額1029億2,970万円)で最多だった。
次いで、外食を含む小売154社(同1014億1190万円)、観光などのサービス152社(同1003億7550万円)と続く。
利用率を業種別で見ると、小売が44.3%(347社中154社)と群を抜き、次いで運送39.2%(125社中49社)、サービス28.5%(532社中152社)と、新型コロナが直撃した業種で申請企業が目立つ。製造は21.6%(1490社中322社)だった。
計上額では、航空会社・鉄道を含む運送(49社)が1744億4700万円で最も多く、長引く外出自粛、移動制限による減便などが響いた。
業績回復が遅れた企業を中心に、2020年度から2021年度と年度をまたいだ受給が相次ぎ、7月末で計上額が100億円を超えた上場企業は9社に増えた。また、10億円以上は105社で、100社を超えた。
計上額が10億円を超えた105社は、百貨店、外食を含む小売(30社)、製造(27社)、交通インフラを含む運送(22社)、ホテルやブライダルなどのサービス(16社)に集中する。製造はアパレル関連や輸送用機器が目立ち、コロナ禍で深刻な影響を受けた業種に偏っている。
新型コロナは新規感染者数が高止まりし、観光やレジャー、小売、外食など、秋の書き入れ時に向けて先行きが見通せない状況が続く。さらに、最低賃金の上昇や、長引く個人消費の低迷を背景に、労働集約型の産業を取り巻く事業環境は厳しさを増している。特例措置の適用期間は、11月末まで延長されたが、感染状況によっては業種や業績に連動した新たな支援策も求められる。