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全国社長の年齢調査(2019年12月31日時点)

 全国社長の平均年齢(2019年12月31日時点)は、前年より0.43歳伸びて62.16歳となった。調査を開始した2009年以降で、最高年齢を更新した。
企業業績と社長年齢は相関性が強まり、年齢上昇に伴い減収企業や赤字企業が増える傾向にある。社長が高齢の企業では、事業承継の目途が立っていない場合、設備投資の停滞や人員採用の手控えなどで事業が縮小し、さらに業績の低迷を招く悪循環に陥りやすい。
都道府県別では、65歳以上の人口比率に比例して社長の平均年齢も高くなっている。若年層の減少が進む県ほど、社長の若返りも遅れている。
また、2019年に「休廃業・解散」した企業の社長の平均年齢は69.61歳で、生存企業の社長より7.45歳高かった。「休廃業・解散」した企業の社長は、70代以上が過半数(56.0%)を占めており、高齢化と業績悪化や事業承継の停滞は関連性が強まっていることがわかった。

  • 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(370万社)から2019年12月時点の代表者の年齢データを抽出、分析した。前回の調査は2019年2月。「社長」は、代表取締役社長のほか、個人事業主や理事長などを含む。

年齢分布 70代以上が初めて最多

 2019年の社長の年齢分布は、70代以上が構成比30.37%で初めて最多レンジとなった。70代以上は前年比2.24ポイントアップし、初めて30%台に達した。他の世代では60代と40代、30代以下が構成比を下げ、50代のみ構成比を上げた。

社長年齢1

年齢別企業業績 年齢に反比例して増収企業が低下

 社長の年齢別の企業業績は、「増収」は30代以下で58.6%と最も大きいが、年齢と反比例して減少し、70代以上では42.5%にとどまる。70代以上は「赤字」や「連続赤字」の割合が全年代で最も大きく、社長の高齢化と業績低迷には相関がみられた。

社長年齢2

都道府県別ランキング 平均年齢の最高は5年連続で高知県

 都道府県別では、31都道県が全国平均の62.16歳を上回った。社長の平均年齢の最高は高知県の64.25歳で、2015年以来、5年連続でトップ。前年の63.95歳から0.3歳上昇した。次いで、秋田県64.13歳(前年2位、63.71歳)、岩手県63.70歳(同3位、63.35歳)、山形県63.67歳(同4位、63.17歳)の順で、4位まで前年と顔ぶれが変わらない。
一方、最年少は広島県(60.930歳)で、大阪府(60.932歳)を僅差で下回った。このほか、滋賀県61.20歳、愛知県61.21歳、兵庫県61.57歳の順で平均年齢が低かった。
総務省統計局が公表する人口推計(2019年10月1日現在)から算出した「65歳以上人口比率」をみると、社長の平均年齢が高い高知県は35.2%(全国2位)、秋田県は37.1%(同1位)と高齢化が際立っている。一方、社長の平均年齢が低い広島県は29.3%(同34位)、大阪府は27.6%(同41位)で、各都道府県の高齢化の進み具合が社長の平均年齢にも反映している。

社長年齢3

業別平均年齢 最高は不動産業の63.86歳

 産業別の平均年齢は、最高が不動産業の63.86歳だった。次いで、卸売業の63.26歳、小売業の63.17歳と続く。最低は情報通信業の57.16歳だった。また、10産業すべてで平均年齢が前年(2018年)より上昇した。
年代別の年齢分布では、60代以上の比率は不動産業の62.74%が最高。一方、30代以下では情報通信業が6.38%と突出して高かった。

業種別ランキング 金融やインフラ企業には60代の社長が多い

 業種別の社長(理事長などを含む)の平均年齢は、農協や漁協など「協同組合」が最高の67.17歳だった。次いで、幼稚園から大学、専修学校まで含む「学校教育」が67.12歳、信用金庫、信用協同組合など「協同組織金融業」が66.92歳で続く。
70代以上の社長が占める割合は、「学校教育」が47.5%で最も高かった。続く「織物・衣服・身の回り品小売業」は43.8%、「協同組合」も42.6%と高い。60代は「銀行業」が69.2%で、最も高い。60代の社長は「協同組織金融業」や「鉄道業」、「放送業」、「ガス業」など金融やインフラ関連に多い。
30代以下と40代では、「インターネット付随サービス業」、「無店舗小売業」、「通信業」がともにトップ3を占めた。初期投資を抑えられ、参入障壁の低い業種に若年社長が多い。

「休廃業・解散」企業の社長は生存企業より7歳以上高く、70代以上が過半数

 2019年に休廃業・解散した企業では、社長の平均年齢は69.61歳で、前年から横ばいだった。生存企業の平均年齢(62.16歳)との差は7.45歳で、前年(7.88歳)から0.43歳縮小した。
「休廃業・解散」企業の社長の年齢別分布は、70代以上が56.0%と過半数を占める。代表者の高齢化をきっかけに事業継続を諦めたケースが多いことを示している。

社長年齢4

 2019年の全国の社長の平均年齢は、前年から0.43歳伸びた。2009年の調査開始以来、最大の伸び幅となった。社長の平均年齢が上昇を続ける背景には、事業承継や新規開業(新設法人)の低迷がある。
東京商工リサーチが5月29日に発表した「新設法人動向」調査によると、2019年の全国の新設法人数は13万1,292社で、2年ぶりに前年を上回り、過去最高だった2017年の13万2,306社に次ぐ水準だった。だが、2020年に入り、新型コロナウイルス感染拡大に伴って経済活動が停滞し、開業マインドに冷や水を浴びせられた格好だ。このため、今年は新設法人数が減少に転じ、社長の高齢化が進む可能性もある。
また、東京商工リサーチが2019年11月7日に発表した「後継者不在率」調査では、中小企業の55.6%で後継者が不在であることがわかった。後継者不在率は、現社長の年齢が70代の企業で29.3%、80代以上でも23.8%にのぼる。事業承継は、後継者の選定から交代まで数年の準備期間が必要とされ、時間的猶予のない企業の存在を浮き彫りにしている。
一方、「後継者あり」の企業でも、コロナショックによる景気後退を危惧し、事業承継を躊躇する可能性もある。社長の若返りは新規ビジネスを創出し、経済活性化を後押しする力を秘めている。それだけに、政府、自治体と金融機関が、税制面から金融面まで一体となり、新規開業や事業承継に向けた支援を強化することが急務になっている。

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