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「新型コロナ」で内定取り消し、上場企業20社が救済へ

 「新型コロナウイルス」感染拡大は、「売り手市場」の新卒採用を一変させた。終息時期が見通せないなか、内定を取り消す企業も続出している。東京労働局によると、4月27日時点で、すでに全国33社で92名が新型コロナの影響による業績悪化などを理由に、内定取り消しを受けた。


 厚生労働省は、企業に対して雇用調整助成金など各種制度利用を呼びかけ、休業要請に応じた中小企業に休業手当全体の「助成率10割」を打ち出した。また、雇用保険被保険者(支給対象)にならない新卒者にも助成金を交付するなど、雇用のつなぎ止めに動き出した。
 こうしたなか、「新型コロナウイルス」の影響で内定取り消しとなった学生」に追加採用を表明し、救済に動く企業もある。

上場企業20社で250人以上の採用

 4月24日現在、適時開示やホームページで、新型コロナの影響で内定取り消しとなった学生を対象に、追加採用を表明した上場企業は20社にのぼった。
 採用人数を公表した企業のうち、人数が最も多いのは、情報配信などのモバイルコンテンツ事業の(株)アイフリークモバイル(TSR企業コード:870578618)、携帯電話ショップ運営のコネクシオ(株)(TSR企業コード:294213082)で約100名を予定している。
 2社はスマートフォンに関連したビジネスを展開している。
 また、住宅分譲のケイアイスター不動産(株)(TSR企業コード:310425727)や、家電量販大手の(株)ノジマ(TSR企業コード:360078605)は、採用人数に上限を設けていない。
 追加採用を表明した20社のうち、採用予定人数を公表している9社だけで250名以上の雇用が新たに生まれることになる。

採用企業の業種、最多は小売業

 業種別に追加採用を募集している20社をみると、最多は小売業の9社で半数近くを占めた。飲食店やスーパーなどが多い。次いで、情報通信業の4社で、慢性的な人手不足に悩む業界や企業には優秀な学生を採用するチャンスでもある。

追加採用実施企業 業種別

 また、採用活動で、Webや電話面接が多いのも特徴である。(株)ジェイテック(TSR企業コード:294268588)は、「説明会も選考もすべてWeb(Zoom、Skypeほか)で実施」という。感染拡大の防止に神経を尖らせ、通常の採用活動とかなり様相が異なる。企業にも学生にも、時間の成約が少ない点は好意的に受け止められているが、直接の面談でしかわからない微妙な感覚は次の面談で試されるのだろう。
 (株)パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(TSR企業コード:330232398)の子会社であるユニー(株)(TSR企業コード:403074118)は、3月28日までをエントリー期間とし、通常の採用フローより短い期間で選考を行ない、他の新入社員と同じ4月入社を可能にした。

上場以外でも採用の動き

 今回は企業だけでなく、各自治体も内定を取り消された人を対象に、臨時職員採用枠を設定するなど、雇用を守るための取り組みを進めている。
 上場企業に限らずスーパー「サミット」を展開するサミット(株)(TSR企業コード:290281989)、人手不足やドライバーの高齢化が問題になっている運輸業の三和交通(株)(TSR企業コード:350282862)なども、内定取り消しや、新型コロナウイルスの影響により就職活動を再開せざるをえなくなった学生を対象に追加採用に動いている。
 人手不足に悩まされていた企業にとっては、千載一遇の機会として追加採用に大きな期待を寄せている。
 だが、こうした採用に踏み切る企業がある一方で、新型コロナウイルスの影響による業績悪化を理由に、早期退職の募集を行う企業も出てきている。
 感染拡大が長期化し、景気の落ち込みが深刻になれば、雇用環境はますます悪化し、採用市場への影響は必至だ。
 新卒だけでなく中途採用の市場でも変化が起きている。エンワールド・ジャパンが4月27日に公表したデータが今後の転職市場の厳しさを示している。
 中途採用は7割の企業が実施しているが、3割の企業が「中途採用に消極的」だった。個別では、「(新型コロナの終息までは)採用活動をスローダウン」や「採用計画の人員削減」と先行きが不透明な中、マーケットの状況を見極めようとする動きが強まっている。
 雇用の悪循環に陥らないため、現在の雇用を維持する各種制度の周知と、新卒者以外の雇用確保への対策が急がれる。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年5月1日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

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