• TSRデータインサイト

売れ筋は「テイクアウト用弁当箱」、隠れ営業やダミー休業の横行も

 飲食店や喫茶店などに食材を卸す会社の担当者が、世相を囁いた。「今の売れ筋は、食材ではなくテイクアウト用の弁当箱や小分けしたケチャップ、ドレッシングだ」。
 そう話した後、東京商工リサーチ(TSR)の取材に、一斉休業の裏話を話し始めた。

 担当者によると、多くの飲食店は当面の店舗営業が期待できず、穴埋めでテイクアウトにシフトしている。それを裏付けるように、今まで発注がなかった「テイクアウト用弁当箱」や「小分けされた調味料」、「弁当用の総菜」が急増している。なかでも、「弁当箱」の在庫が一気に捌けたという。「発注しても全部は入ってこない」ため、このままでは数週間で在庫が無くなる可能性すらある。とはいえ、特需があっても「全体の売上は、通常から7割減少している。おかげで週2~3日は自宅待機だ」とこぼす。

 いま、「新型コロナウイルス」感染拡大の防止で政府や自治体は事業者に休業を要請し、要請に応じた事業者には協力金の支給に向けた準備が進んでいる。ところが、この担当者が声を潜めて驚くようなことを話し出した。

 「表に休業中の紙を張り出し、消灯しているお店が常連客にこっそり営業時間を伝え、暗闇の中で営業している」というのだ。「休業中」なのに発注があり、「隠れ営業」がわかるという。
 別の飲食店は、毎年ゴールデンウィーク中は定休日にしている。だが、今年はあえて「ゴールデンウィーク中は休業」と告知した。営業マンは、「休業補償の協力金を狙っているのだろう」と憶測する。あの手この手で難局を乗り切る知恵か、それとも姑息な手段なのか。

 この担当者は、これまで苦労している経営者を見てきた。それだけに新型コロナの感染拡大の中で、「休業や時短が続けば生き残りは難しい。グレーとわかっていても事業継続したいと思うのだろう」と、やるせない心情を漏らした。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年4月27日号掲載予定「SPOT情報」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ハンバーガー店の倒産、最多更新 ~ 材料高騰、大手と高級店の狭間で模索 ~

年齢を問わず人気のハンバーガー店が苦境だ。2024年は1件だった倒産が、2025年は8月までに7件に達し、過去最多の2014年の年間6件を上回った。

2

  • TSRデータインサイト

2025年「全国のメインバンク」調査 ~GMOあおぞらネット銀行 メイン社数の増加率2年連続トップ~

「2025年全国企業のメインバンク調査」で、GMOあおぞらネット銀行が取引先のメインバンク社数の増加率(対象:500社以上)が2年連続でトップとなった。

3

  • TSRデータインサイト

タクシー業界 売上増でも3割が赤字 人件費・燃料費の高騰で二極化鮮明

コロナ禍を経て、タクシー業界が活況を取り戻している。全国の主なタクシー会社680社の2024年度業績は、売上高3,589億5,400万円(前期比10.6%増) 、利益83億3,700万円(同11.1%増)で、増収増益をたどっている。

4

  • TSRデータインサイト

「葬儀業」は老舗ブランドと新興勢力で二極化 家族葬など新たな潮流を契機に、群雄割拠

全国の主な葬儀会社505社は、ブランド力の高い老舗企業を中心に、売上高を堅調に伸ばしていることがわかった。 ただ、新たに設立された法人数が、休廃業・解散や倒産を上回り、市場は厳しい競争が繰り広げられている。

5

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

TOPへ