• TSRデータインサイト

2020年1-3月 上場企業「早期・希望退職」実施状況

 2020年1-3月に早期・希望退職者を募集した上場企業は23社(前年同期11社)で、前年同期の2倍増のペースで推移している。1-3月期に20社を超えたのは、2013年(35件)以来、7年ぶり。
 小売や食料品関連など、将来の市場縮小を見越した“先行型”の実施に加え、2月以降は日中貿易摩擦などで不透明感の増す製造業、世界的に猛威を振るう新型コロナウイルスによる業績悪化でいち早く募集を実施する企業も目立った。
 新型コロナウイルス感染拡大で、業績の下方修正を開示した上場企業は4月21日時点で265社にのぼり、小売、サービスだけでなく、多くの業種に波及している。日本銀行は4月9日、全国9地区すべての景気総括判断を引き下げ、コロナ・ショックで国内景気が後退局面に入ったとの見方も強い。
 3月決算発表が出揃う5月中旬以降は、“黒字リストラ”といわれる業績堅調な企業の人員削減以上に、業績不振による“従来型”の赤字リストラによる退職者募集が増えることも懸念される。

  • 本調査は、希望・早期退職者募集の実施を情報開示し、具体的な内容を確認できた上場企業を対象に抽出した。
    実施が翌年以降の企業は除く。原則、『会社情報に関する適時開示資料』(2020年3月31日公表分まで)に基づく。

業種別 小売と食料品が各3社でトップ

 23社の業種別では、少子高齢化で国内の消費人口が頭打ちになり、今後の消費動向を見据えた小売と食料品が各3社でトップだった。店舗の抜本的見直しを進める百貨店(三越伊勢丹ホールディングス、以下HD)とコンビニ(ファミリーマート)、2月以降のインバウンド需要減を受けたラオックスが子会社の構造改革と併せて募集を発表した。
 食料品では、2019年末にすでに実施を発表していた味の素に加え、サッポロHDが20年内に2回の募集を行う予定。同じく、飲料が主力のダイドーHDは「ライフシフト支援施策」で50代以上の社員募集の一方で、20代~40代の社員約100人の新規採用を予定し、社内の若返りを図る。

新型コロナを要因とした募集は3月末までに2社 応募開始を延期する企業も

 新型コロナウイルスによる業績の早期・希望退職募集を開示した企業は、ラオックスと、ツアー旅行の手配や貸切バスの運営を行うHANATOUR JAPANの計2社。加えて、4月10日に旅行サービスの予約サイトなどを運営するベルトラ(マザーズ、東京都)が、新型コロナウイルス蔓延により、海外事業の一部閉鎖を発表した。これに伴い、該当部門の社員(数名程度)を対象に希望退職者を募ることを決めた。
 新型コロナウイルスの影響では、応募の申請期間を延期した企業も出ている。サッポロHDは3月27日、4月1日に開始予定だった一次募集を5月1日に延期することを発表した。適用対象者へ応募制度に関する十分な説明時間を確保することが困難なためとしている。
 現状、インバウンドや旅行業に限定されているが、多くの企業が本決算を発表する5月以降、業績が悪化した企業を中心に、早期・希望退職者募集の波が拡大する可能性が高い。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

制御機器メーカーのIDEC(株)が早期退職募集を実施=国内従業員の300人が退職

制御機器メーカーのIDEC(株)(TSRコード:570011370、大阪府、東証プライム)がセカンドキャリア支援制度を実施し、今年6月までに国内従業員の約300人が退職していたことが東京商工リサーチの取材でわかった。

2

  • TSRデータインサイト

上場企業の「早期・希望退職」募集 1-8月で1万人超え 募集の大型化で前年同期比1.4倍増、前年1年間を上回る 

今年1月から8月31日までに判明した上場企業の「早期・希望退職」募集の対象人数が、1万人を超えた。募集の大型化が目立ち、3年ぶりに1万人を超えた2024年の年間募集人数1万9人をすでに上回った。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-8月の「人手不足」倒産が237件 8月は“賃上げ疲れ“で、「人件費高騰」が2.7倍増

2025年8月の「人手不足」が一因の倒産は22件(前年同月比37.5%増)で、8月では初めて20件台に乗せた。1-8月累計は237件(前年同期比21.5%増)に達し、2024年(1-12月)の292件を上回り、年間で初めて300件台に乗せる勢いで推移している。

4

  • TSRデータインサイト

分配金遅延の「みんなで大家さん」、出資者が返金求め訴訟提起へ

不動産投資商品「みんなで大家さん」の出資者への分配金が遅延している問題で、投資商品を扱う企業に対して5名の出資者が1億円の返還を求め、東京地裁に訴訟を提起する。出資者側の代理人事務所は、リンク総合法律事務所。

5

  • TSRデータインサイト

銀行員の年収、過去最高の653万3,000円 3メガ超えるトップはあおぞら銀行の906万円

国内銀行63行の2024年度の平均年間給与(以下、年収)は、653万3,000円(中央値639万1,000円)で、過去最高となった。前年度の633万1,000円(同627万5,000円)から、20万2,000円(3.1%増)増え、増加額は3年連続で最高を更新した。

TOPへ