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「商機のカギは“自分のため”」、「メリーチョコレート」小屋松社長独占インタビュー(前編)

 2月14日はバレンタイン・デー。全国各地のデパートや専門店には、高級メーカーや人気ショコラティエらが監修する限定商品が並ぶ。多くのスイーツファンが希望の品目当てに店舗に駆けつける光景が繰り広げられる。
1950年創業の(株)メリーチョコレートカムパニー(TSR企業コード:291018475、大田区)は、1958年に新宿伊勢丹(東京)で日本で最初にバレンタインチョコレートを販売した。当時から現在まで、毎年趣向を凝らしたチョコレート商品を開発し、世代を問わず多くの人の支持を得ている。同社の小屋松儀晃社長に日本でのバレンタインの変遷と現在のトレンド、多様化するチョコレート業界の展望について話を聞いた。

-バレンタインがここまで広がった背景は
多くの要因はあるが、歴史的に女性の社会進出は大きい。店頭販売を始めた当時、女性週刊誌が次々と創刊されていた。メディアに取り上げられ、バレンタインが注目されるようになった。その後は他の菓子メーカーもバレンタイン商品の販売を開始し、次第に浸透していった。チョコレートが多くの人に好かれる食材だったのも大きい。プレゼントとして気軽に贈りやすい。今でこそ海外ブランド等の高級品も多いが、元々はそんな高価のものでもなかった。

-戦国武将をテーマにした「TSUWAMONO(つわもの)」シリーズがSNSを中心に人気だ
このシリーズは、織田信長や徳川家康、真田幸村、伊達正宗などの戦国武将をイメージしたチョコレート9種をそれぞれアソートにした。例えば、信長は宣教師から送られたとされる金平糖をあしらったガナッシュ。日本で初めてワインを飲んだとされる逸話にちなみ、ポートワインを使ったチョコレート等も入っている。家康のアソートは、長寿の秘訣だったと言い伝わる忍冬酒(薬味酒)のチョコレートなどを揃えた。

歴女を中心に話題の「TSUWAMONO」シリーズ(メリーチョコレートカムパニー提供)

歴女を中心に話題の「TSUWAMONO」シリーズ(メリーチョコレートカムパニー提供)

-“戦国武将”をテーマにした背景は?
様々なシーンで歴女(れきじょ)が話題だ。また、若い世代で歴史をテーマにしたゲームが人気を集めている。女性からの支持も高いとみて開発を進めた。“合戦”のイメージから、外部の方には「メリーのドメインから外れているんじゃないか」という声も聞かれた。だが、このぐらい挑戦した方がいい。
挑戦するからには、メリーとしての“こだわり”も伝えないといけない。チョコレートに武将の名前を“付けただけ”では、歴史ファンの方に伝わらない。その人物のパーソナリティを掘り下げた商品を開発し、ゆかりのある食材を使う。そして高い品質としっかり連動させなければならない。歴史ファンの方にも「ここまでやるのか」と驚いて頂けているようだ。

-「自分用チョコ」がバレンタインで定着してきた
「女性が自分に向けて買う」という商品を多く取り揃えている。商品開発で、「誰向けか」を考えるときに「自分自身」という軸は現在、最も重要な視点だ。今の時代はまず、女性が「自分で買って食べたい」と思えるかが命題。「自分のため」という軸がないと、今のバレンタイン自体の市場は成り立たないといえる。

-「自分軸」がここまで広がったのは?
日本のバレンタインの歴史で“チョコレートが主役じゃない時期”があった。バブル前後の時代だ。当時はネクタイや服飾小物と一緒に、何かの“ついで”としてチョコレートが選ばれていた。それが2000年以降、海外の著名なショコラティエが日本に進出してきて、再び“チョコレートのバレンタイン”が注目された。バレンタインの時期にだけ、ショコラティエが“来る”、限定商品が“出る”というように。また、サロン・デュ・ショコラが東京でも始まったことも大きいだろう。
市場のニーズを理解する上で、まず女性の潜在需要を探る。また、近年は「シェア」というキーワードも欠かせない。仲の良い人や普段お世話になっている人との共有。商品の見せ方も重要だ。人に「こんなの見つけたよ!」とつい報告したくなるような商品。企画段階の打ち合わせには男性社員も入っているが、「こういうものが(女性に)ウケるの!?」と男性陣が驚く場面も少なくない。

-サロン・デュ・ショコラパリ(※注)での活躍が話題になっている
昨年10月に開催されたサロン・デュ・ショコラパリ2018で、2016年から3年連続の金賞を受賞した。日本からの出展者の中では現在、最多受賞となっている。我々は2000年から出展しているが、当初は現地(フランス)の人から「口に合わない」とその場で言われたこともあったそうだ。それ以前に「日本でもチョコレートを作っているの」と驚く来場者もいたという。そこからのスタートだった。

-日本の食材を使って高い評価を受けている
常に“チャレンジ”の姿勢で臨んでいる。現地の人の好みにおもねることなく、寄せすぎない。出展を続けることで社員に自信がついた。使用する食材も「これは受け入れられるだろう」と。出展初年にはホワイトチョコレートと抹茶を組み合わせたチョコレートを出品したが、全然受け入れられなかった。向こうでは、日本以上にホワイトチョコレートが出回っていなかった。その上、抹茶も今のようにポピュラーではなく、初めて口にする来場者も多かったという。2002年に梅肉を使用したチョコレートで準グランプリ(現在の銀賞相当)を受賞した。初めて柚子をパリで使った2000年代当時、海外のショコラティエたちは「その柑橘は何だ」とびっくりしていた。それが、今では現地で栽培されるまでになった。ゴマやしょうゆ、シソも同様、今では違和感なく用いられるようになった。我々の発信で広まったのであれば、嬉しい限りだ。

-出展を続けるには相応のコストも掛かる
パリで挑戦し続けることが会社の原動力になっている。世界一を決める場で評価を受けることで、自分たちの立ち位置を改めて確認できる。“世界レベルのおいしさ”とは何かも、参加してみないと分からない。
(注)サロン・デュ・ショコラパリ…1995年フランスで始まった世界最大のチョコレートの祭典。ヨーロッパを中心に世界中のショコラティエが参加し、品評会も催される。開催期間中の来場客は11万人を超える。

(次回に続く)

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年2月7日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

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