• TSRデータインサイト

2018年「マッサージ業、接骨院等」の倒産状況は過去10年で最多93件に急増、5年連続で前年を上回る

 街中でよく目にする「指圧、マッサージ」や「接骨院、整体」の看板。業界の生き残り競争は熾烈で2018年の「マッサージ業、接骨院等」の倒産は93件に達し、過去10年で最多を記録した。
倒産した「マッサージ業、接骨院等」の半数は個人企業で、従業員5人未満が全体の9割を占め、小・零細規模が多いのが特徴。さらに、業者間の過当競争から不正広告の横行、不正請求の増加も目立っている。

  • ※本調査の「マッサージ業、接骨院等」は、TSR業種コードの「療術業」から抽出した。具体的には、マッサージ業、整骨院、鍼灸院、整体などを含む。

2018年の倒産93件、過去10年で最多

  2018年(1-12月)の「マッサージ業、接骨院等」の倒産は93件(前年比36.7%増、前年68件)と前年より大幅に増加した。2009年以降の10年間では最多となり、5年連続で前年を上回った。
負債総額は20億2,700万円(同106.8%増、同9億8,000万円)に達し、前年より2倍増に膨らみ、10年間で最大になった。ただ、負債10億円以上の大型倒産はなく、同5千万円未満が83件(前年比22.0%増、構成比89.2%)と、小・零細規模が8割を占めた。平均負債額は2,100万円(前年比50.0%増、前年1,400万円)にとどまった。

個人企業が過半数を占める

 資本金別では、「個人企業」が52件(前年比18.1%増、前年44件)で、全体の過半数(構成比55.9%)を占めた。このほか、「1百万円以上5百万円未満」が25件(前年比56.2%増、前年16件)、「5百万円以上1千万円未満」が8件(同166.6%増、同3件)と続く。「5千万円以上」は発生がなかった(前年ゼロ)。
従業員別では5人未満が85件(前年比30.7%増、構成比91.3%)と9割にのぼり、小規模・零細企業の倒産が多いことを裏付けた。

原因別、販売不振(業績不振)が最多

 原因別では、「販売不振」(業績不振)が73件(前年比37.7%増、前年53件)と最も多かった。全体に占める構成比は78.4%で、同業者間での競争の厳しさを映し出している。
形態別では、事業消滅型の破産が78件(前年比25.8%増、前年62件)と全体の8割(構成比83.8%)を占めた。次いで、主に個人再生手続きによる民事再生法が15件(前年比200.0%増、前年5件)と3倍増と急増した。

「マッサージ業、接骨院等」の倒産 年次推移


地区別 9地区のうち北陸と四国を除く7地区で倒産発生

 地区別では、全国9地区のうち、北陸と四国を除く7地区で倒産が発生した。最多は近畿の42件(前年41件)。次いで、関東22件(同12件)、中部17件(同6件)、九州6件(同6件)、中国4件(同3件)、北海道1件(同ゼロ)、東北1件(同ゼロ)の順。
前年比では、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国の6地区で前年を上回った。

施術所数、10年で26.1%増

 厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、マッサージ業他の施術所(あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅうを行う施術所と柔道整復の施術所などを含む)は、2006年に10万8,139か所だったが、2016年は13万6,460か所に増加。この10年間で2万8,321か所(26.1%増)増えた。
就業状況では、就業あん摩マッサージ指圧師が2006年の10万1,038人から、2016年は11万6,280人(15.0%増)に増加。このほか、就業はり師が42.5%増(8万1,361→11万6,007人)、就業きゅう師が42.6%増(7万9,932→11万4,048人)、就業柔道整復師が76.0%増(3万8,693→6万8,120人)と、いずれも大幅に増えている。柔道整復師は、国家資格を取得できる養成校の増加も背景にあるとみられる。

最近、マッサージ業や接骨院等の不正広告が全国的に横行している。不正広告には、「○○療院」、「○○治療所」といった、病院または診療所と紛らわしい名称や適応症、効果・効能等の明示、料金表示などを店頭やチラシなどに掲示することも該当する。こうした不正広告が増えた背景には、同業者の増加による過当競争が挙げられる。あん摩マッサージ指圧師等は、国家資格だが、最近は無資格のマッサージ店なども林立し、競争激化に拍車をかけている。

さらに医師の診療報酬に当たる「療養費」で、接骨院など骨折や捻挫などの施術にあたる柔道整復師による不正請求が後を絶たない。一例として、白紙の療養費支給申請書に先にサインをさせ、架空・付増請求するケースのほか、無資格者による施術請求も行われているという。
関係者からは、柔道整復師はかつては養成校卒業後、5~10年ほど実務勤務した後、独立開業することが一般的だったが、最近は卒業生の約2割が資格を取得直後、すぐに開業し、「十分な知識や経験がないまま、不正行為に手を染めるケースもある」との指摘もあり、業者間の過当競争が沈静化する気配はうかがえない。
また、創業者支援の制度融資も「マッサージ業、接骨院等」の起業を促す要因になっているとの見方もある。
今後も、しばらくは業界内で新規開業と廃業の出入りの激しい動きが続くことが想定される。このため小・零細業者を中心にした淘汰の流れは注視することが必要だろう。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ラーメン店と好対照、中華料理店の倒産が低水準の謎

ラーメン店の倒産が過去最多ペースを辿るなか、中華料理店は対照的な動きをみせている。2024年1-8月の倒産はラーメン店が44件、中華料理店は7件と好対照だった。なぜ中華料理店の倒産は少ないのか。

2

  • TSRデータインサイト

全国の三セク鉄道 売上高トップは 「つくばエクスプレス」 三セク鉄道の約9割が輸送人員増も、6割が経常赤字

全国の第三セクター鉄道運営会社は、コロナ禍を経て9割が売上を伸ばした一方で6割が経常赤字から抜け出せず、地域によって明暗を大きく分けたことがわかった。 61社の2023年度の業績は、55社(構成比90.1%)が前年度から増収だった。ただ、経常赤字は37社で6割(同60.6%)と半数を超えた。

3

  • TSRデータインサイト

三井住友銀行をメインとする企業が10万社突破、東京・大阪・兵庫で強く

三井住友銀行をメインバンクする企業数が初めて10万社(10万442社)を超えた(8月21日号掲載、2024年全国メインバンク調査)。調査対象158万5,849社の6.3%がメインバンクに三井住友銀を選んでいる。

4

  • TSRデータインサイト

「想定為替レート」 平均は1ドル=143.5円 3期連続で最安値を更新

株式上場する主要メーカー109社の2024年度決算(2025年3月期)の期首の対ドル想定為替レートは、1ドル=145円が54社(構成比49.5%)と約半数にのぼることがわかった。 平均値は1ドル=143.5円で、前期から14.5円の円安設定だった。期首レートでは2023年3月期決算から3期連続で最安値を更新した。

5

  • TSRデータインサイト

企業が選ぶ次の自民党総裁は高市早苗氏 立憲民主党は野田佳彦氏

野党第一党の立憲民主党の代表選は9月7日に告示され、4人が立候補し、23日に開票される。また、与党第一党の自民党総裁選は9月12日に告示され、過去最多の9人が立候補し、27日に開票される。 世代交代も注目されるなか、企業に景気や自社ビジネスの発展に寄与すると思う候補者を聞いた。

TOPへ