• TSRデータインサイト

SAY企画、日本年金機構が中国業者への無断再委託で処分

 3月20日、データ入力を手掛ける(株)SAY企画(TSR企業コード:295785276、豊島区、切田精一社長)に対し、日本年金機構が処分を発表した。
SAY企画を巡っては、無断で扶養親族等申告書の入力業務を中国の業者へ再委託していたことや、入力漏れなどで源泉徴収額を正しく反映できておらず波紋が広がっていた。これを受け日本年金機構は、内規に基づき向こう3年間の競争入札への参加資格を停止した。

SAY企画の本社

SAY企画の本社(3月20日撮影)

入力誤りは約31.8万人

 日本年金機構の発表によると、SAY企画の入力漏れで、2月15日の支払い時に正しい源泉徴収税額を反映できなかった。2月14日に入力漏れが判明した約6.7万人については日本年金機構が入力作業を行い、3月15日の支払い時に還付した。また、2月15日以降に判明した約1.7万人の入力漏れは、4月13日の支払い時に正しく反映するとしている。
入力誤りは約31.8万人を見込んでいる。日本年金機構が点検した約528万人のうち、源泉徴収税額に影響があった場合も4月13日の支払い時に正しく反映するという。

内規最長の3年間の指名停止

 日本年金機構は、SAY企画に3月20日から3年間の競争入札への参加資格を停止した。
処分理由は、期限内の納品遅れの常態化や入力漏れで履行しないものがあったほか、再委託禁止だった業務を無断で海外の関連業者に再委託していたことなど。3年間の停止措置は内規に基づく最長期間となる。
中国の関連業者への無断再委託は、申告書のうち氏名部分の抜き出しで、情報セキュリティ会社に委託した監査では適切に情報セキュリティが講じられていたという。また、入力情報は適切に管理・削除され、特段の問題はなかったとしている。
だが、無断再委託や入力漏れなどで年金への社会的な信用を失墜させたほか、二次コスト負担などは公表されておらず、ズサンな仕事ぶりが明るみになった業者との契約に批判が出ている。

 SAY企画は3月20日午前、東京商工リサーチの取材に対して「社長は来客中。本日は対応できない」とコメントした。
SAY企画は、2003年8月の設立でデータベース構築や入力業務を主力に展開している。厚労省など官公庁案件が売上高の9割を占め、2017年3月期の売上高は約6億3,000万円、当期純利益は259万円。主力事業で指名停止を受けた影響は、他の省庁にも及ぶ可能性もある。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年3月23日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ