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東芝、半導体メモリ事業の売却に暗雲も

 8月10日、再建で揺れる(株)東芝(TSR企業コード:350323097、東京都)の2016年度(2017年3月期)及び2017年度第1四半期の財務諸表について、PwCあらた監査法人は「限定付適正」との意見表明を行った。これを受けて東芝は同日、本社で記者会見を開いた。


 会見で綱川社長は、「本日、2016年度の有価証券報告書、2017年度第1四半期報告を関東財務局へ提出した。限定付適正意見が付されたものの、2016年度末の貸借対照表は適正、2017年度第1四半期も前年同期との比較を除き不適正の表示はない」と述べ、「これにより当社の決算は正常化した」との認識を示した。

準備が進む会見場(8月10日、東芝本社)

準備が進む会見場(8月10日、東芝本社)

2016年度、最終赤字9,656億円で債務超過に

 資料によると、2016年度の連結業績は構造改革によるテレビ・パソコン事業の縮小などが響き、売上高は4兆8,707億円(前期比5.5%減)。営業利益は2,707億円の黒字(前期は4,830億円の赤字)を確保した。最終利益(当社株主に帰属する当期純利益)は、3月29日(アメリカ現地時間)にウエスチングハウス(WH)を中心とした海外原子力子会社(当時)が連邦破産法第11章を適用し、連結対象外としたことなどで損失1兆2,801億円を計上したため、9,656億円の赤字(同4,600億円の赤字)となった。
 これにより株主資本は5,529億円の欠損、資本合計(純資産)は2,757億円の欠損となった。
 東京証券取引所は上場廃止の基準を「債務超過の状態となった場合、1年以内に債務超過の状態でなくならなかったとき(原則として連結貸借対照表による)」と定めており、2017年度も債務超過の状態から抜け出せないと東芝は上場廃止となる。
 なお、6月23日に東芝が発表した2016年度の業績見通しを受け、東証は8月1日付で東証1部から2部へ指定替えしている。

利益の源泉は半導体メモリ事業

 2017年度第1四半期の連結業績は、売上高1兆1,436億円(前年同期比8.2%増)だった。ストレージ&デバイスソリューションのうち、半導体メモリ事業が好調に推移した。営業利益は966億円(同492.8%増)を確保。最終利益は前年同期に非継続事業利益として計上した家庭電器事業の売却益がなくなったことから503億円(同36.9%減)だった。
 半導体メモリ事業部門の売上高は2,578億円で全体の22.5%にとどまる。だが、営業利益は903億円で、全体の93.3%を占めている。
 綱川社長は「(半導体)メモリ事業は(販売)価格がキープされている。激しい市場なのでこれが長く続くかわからない。我々の見込みには4Q(2017年度第4四半期)にかなりの価格ダウンが入っている」と述べた。
 これは4Qの業績見通しが厳しいだけでなく、売却に向けた作業を進めている半導体メモリ事業の子会社である東芝メモリ(株)(TSR企業コード:023477687、東京都)の企業価値にも影響を与えかねず注目される発言だ。

東芝メモリ売却の行方

 東芝は、2017年度末での債務超過の回避を目指し、東芝メモリの売却を急いでいる。しかし、6月21日に産業革新機構、日本政策投資銀行、ベインキャピタル(アメリカ)、SKハイニックス(韓国)を主軸とする「日米韓連合」を優先交渉先に選定して以降、大きな進展はみられない。売却には各国の独占禁止法の審査を経る必要があるだけに、2018年3月末までの売却に残された時間は限られている。
 綱川社長は「独禁法の審査を考えると厳しいものがある。容易ではないと考えている。2018年3月末の譲渡に向かって最善を尽くす」と語るにとどめ、売却交渉の難航を滲ませた。交渉が進まない理由について、「ウエスタンデジタルとの訴訟が大きく影響している」と述べた。

東芝メモリ、売却以外の道は

 交渉が進まない場合、2018年3月までの東芝メモリ売却が一気に難しくなる。売却以外の選択肢はあるのか。
 ここにきて東芝メモリの売却以外の方策として、新規株式公開(IPO)の検討が一部で報じられている。綱川社長は半導体メモリ事業のIPOの可能性について、「一般的に選択肢としては色々なことがある」と含みを残した。


 東京商工リサーチが6月に実施した調査では、東芝グループの国内取引先は仕入先で7,281社、販売先で7,359社、合計延べ1万4,640社にのぼる。
 東芝グループと取引している企業の審査担当者からは、「毎月、(自社の)経営幹部に東芝との取引状況を報告している。最近は売却交渉の進展など動きが伝わってこないので困っている」との声も聞こえてくる。
 東芝は日本経済をけん引してきた一社だ。だが、その座はすでに大きく揺らいでいる。直接間接の取引先や下請け、雇用、地域経済への影響など、その動向は東芝だけの問題ではなくなっている。東芝メモリの売却ができなかった場合の代替案など、あらゆる可能性の説明が求められている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」8月18日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)


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