「東日本大震災」関連倒産(12月)
2016年12月の「東日本大震災」関連倒産は3件にとどまった。2015年10月と2016年6月の4件を下回り、調査開始以来の最少件数になった。ただし、収束傾向が強まるなかで、累計件数は震災から5年半を経過して1,780件(2016年12月31日現在)に達した。なお、2016年12月の負債総額は8億700万円で、2カ月連続で前年同月を下回った。
2016年12月の倒産事例
水産物加工の(株)三興(TSR企業コード:141042214、法人番号:6370301000549、宮城県)は、サンマ、イカなどの味付け加工と銀鮭フィレーなどの冷凍加工を主力としていたが、震災による津波で工場が被災し営業を中断した。その後、石巻市水産加工業再生支援事業による補助金受給で新工場を建設したほか、宮城産業復興機構から二重債務の買取決定を受けるなどから経営再建に注力したが。計画通りに販路開拓が進まず累積赤字が膨らんだことで破産を申請した。
震災関連倒産の2016年(1-12月)の年間集計は97件(前年比31.2%減、前年141件)で、前年より3割減で推移した。しかし震災の影響をいまだに引きずって、いまだに業績不振から抜け出せない企業がみられる。
2016年12月の地区別は、関東2件と東北1件(宮城)だった。
「震災関連」倒産の累計1,780件を都道府県別でみると、最多は東京の544件(12月1件)。次いで、宮城150件、北海道84件、神奈川71件、福岡と千葉が各70件、岩手68件、茨城66件、群馬59件、栃木54件、福島49件、静岡48件、山形46件、埼玉45件、大阪44件と続く。直接被災地の東北6県の倒産件数は367件(構成比20.6%)だった。
「震災関連」倒産の累計1,780件を産業別でみると、最多は宿泊業・飲食店などを含むサービス業他の471件(12月1件)。次いで、製造業が400件(同1件)、卸売業が332件(同1件)、建設業が216件(同ゼロ)、小売業が165件(同ゼロ)と続く。
被害型で分類すると、「間接型」1,620件(構成比91.0%)に対し、「直接型」は160件(同8.9%)だった。12月の「直接型」は1件。
震災関連の集計基準
「震災関連」の経営破綻は、原則として次の3つのどれかに該当するものを集計している。
- 震災により施設・設備・機械等に被害を受けて経営破綻した(直接型)
- 以前から経営不振だったが、震災による間接影響を契機に経営破綻した(間接型)
- 震災の影響による経営破綻が、取引先や弁護士等への取材で確認できた(直接・間接型)
- ※集計では、すでに震災前に再建型の法的手続を申請しながら、震災による影響で再建を断念し破産手続に移行したケースなどは、倒産件数のダブルカウントになるため集計から除外している。
- ※「震災関連」の経営破綻は下記の「倒産の定義」のいずれかに該当するケースを「倒産」として集計。「事業停止」や「弁護士一任」、「破産手続き中」などの企業は、今後の展開次第で事業再開の可能性もあるため、「実質破綻」として区別した。
倒産の定義(対象:負債額1,000万円以上の法人および個人企業)
- 会社更生法、民事再生法、破産、特別清算を裁判所に申請した企業(法的倒産)
- 手形決済などで6カ月間に2回の不渡りを出し、銀行取引停止処分を受けた企業(私的倒産)
- 企業が経営破綻により事業継続を断念したが、法的手続きを採らず弁護士などに事後を一任して私的整理(内整理)を明らかにした企業(私的倒産)