• TSRデータインサイト

2014年「全国女性社長」調査

 全国267万社のうち女性社長は調査開始以来で最多の31万55人にのぼり、全国平均が11.5%に上昇した。「女性の活躍推進」が政府の成長戦略の柱の一つに掲げられるなかで、女性社長は増加を続けている。都道府県別の女性社長率では、西日本が東日本より比率が高い「西高東低」の傾向がみられた。産業別では飲食業、介護事業などのサービス業他が全体の4割を占めた。

  • 本調査は、東京商工リサーチの267万社(2014年12月時点)の経営者情報(個人企業を含む)から、女性社長データ(病院、生協などの理事長を含む)31万55人(前年28万4,581人)を抽出した。調査は2010年から5回目。
  • 女性社長

女性社長数の最多は東京都、最少は鳥取県

 都道府県別で女性社長数が最も多かったのは、東京都の7万9,880人(前年7万2,109人)で5年連続トップ。次に大阪府2万7,678人(同2万5,315人)、神奈川県2万598人(同1万9,283人)、愛知県1万4,898人(同1万4,013人)、埼玉県1万2,891人(同1万1,490人)の順。一方、女性社長数が少なかったのは、鳥取県1,218人、島根県1,289人、福井県1,513人の順だった。

女性社長率は「西高東低」

 女性社長数と企業数を対比した「女性社長率」は、全国平均が11.5%で前年(11.1%)よりも0.4ポイント上昇し、都道府県別で全国平均を上回ったのは12都府県だった。
「女性社長率」が最も高かったのは東京都の14.0%(前年13.5%)。以下、神奈川県12.86%、福岡県12.80%、兵庫県12.6%、大阪府12.5%と大都市圏が続く。
女性社長比率が高い上位20位をみると、西日本の15府県(九州・沖縄6県、近畿4府県、四国3県、中国2県)がランクインし、「西高東低」の傾向がみられた。これに対して比率が低かったのは、岐阜県7.6%、新潟県7.7%、山形県8.003%、石川県8.007%、福井県8.05%の順だった。
総じて1世帯当たりの構成人員が多いところが目立ち、同居家族の多い地域ほど「家事・育児・介護」などとの両立が女性の起業、就業の課題になっていることがうかがえる。

産業別、サービス業他が4割を占める

 産業別では、宿泊業、飲食業、介護事業、教育関連などを含むサービス業他の12万5,388社(構成比40.4%)が最も多かった。また、産業別の「女性社長率」で最も高かったのは不動産業の21.0%で、5人に1人の割合を占めた。女性の起業は、個人向けサービス等の暮らしを充実させる分野での事業展開が多いという。女性の視点による商品開発やサービス提供が、新たな需要を掘り起していることも女性社長の増加に影響している。

女性社長の出身大学、日本大学が最多

 女性社長の出身大学別では、トップが日本大学の272人(前年265人)で5年連続でトップを占めた。2位は東京女子医科大学232人(同209人)で前年3位から上昇した。3位は慶応義塾大学の228人(同216人)だった。以下、早稲田大学200人、青山学院大学187人、日本女子大学162人、同志社大学136人、共立女子大学110人と続く。また国公立大学は、13位に東京大学が93人(前年84人)、26位に広島大学62人(同60人)、28位に北海道大学が60人(同59人)、37位に京都大学50人(同49人)だった。上位30位では女子大学が9校(前年10校)ランクインした。

女性社長の名前、「和子」が5年連続トップ

 女性社長の名前では、1位が「和子」の4,080人で5年連続トップ。2位が「洋子」3,380人、3位は「幸子」3,366人でトップ3は前年と変わらず。以下、「裕子」2,601人、「京子」2,318人、「恵子」2,251人、「久美子」2,210人の順。トップの「和子」は、昭和の始まりから昭和27年(1952年)頃まで、女性の生まれ年別の名前ランキングで常にトップを占めたことも影響した。
また話題になった「久美子」社長も7位にランクインし、3文字名前では最多だった。
上位20位では、「子」がつく名前が大半のなかで、唯一19位に「明美」(1,372人)がランクインし、世代交代の兆しもうかがえる。

売上高上位は外資系が目立つ

 売上高別の上位5社では、トップが米国半導体メーカーの日本法人、インテル(株)(東京都、江田麻季子社長)、2位がハンバーガーチェーンの日本マクドナルド(株)(東京都、サラ・エル・カサノバ社長)、3位がイオングループの食品メーカー、イオンフードサプライ(株)(千葉県・間處博子社長)、4位が人材派遣の(株)リクルートスタッフィング(東京都、長嶋(渡邊)由紀子社長)、5位が玩具販売の日本トイザらス(株)(神奈川県、モニカ・メルツ社長)だった。

女性社長の上場企業は29社

 女性社長(代表執行役を含む)の上場企業は29社(判明分、2014年12月現在)だった。産業別では、最多がトレンドマイクロやネットイヤーグループなど情報・通信業の5社、日本マクドナルドホールディングスなど小売業の5社、化粧品メーカーなどを含む化学の5社だった。

 全国の女性社長数は、2010年の21万人から2014年には31万人に増加した。政府の成長戦略の柱の一つに「女性の活躍推進」が位置づけられるなど追い風が吹いていることから、今後も増勢が続くとみられる。これまで女性社長は、親や配偶者などから事業を引き継ぐ同族継承パターンが多かったが、最近は高い専門性を持った意欲ある女性の起業が目立つ。女性の起業増加は、経済活性化につながるため、起業支援だけでなく起業後も国の実効あるサポートが求められる。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ