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2014年度「不適切な会計・経理を開示した上場企業」調査

 2014年度(2014年4月~2015年3月)に「不適切な会計・経理」により過年度決算に影響が出た、あるいは今後影響する可能性があることを開示した上場企業は42社だった。2013年度(38社)を上回り、調査開始以来、最多を記録した。不適切な会計・経理処理は、監査法人から会計処理のミスなどを指摘されて過年度決算の訂正を行ったケースが依然多い。2012年度に一時的に減少した社数は2013年度に増加に転じ、なかでも子会社や関係会社が当事者となるケースが2年連続で増加した。業種別では、円安などで業績が好調な製造業のほか、運輸・情報通信業が前年から大幅に増加。また、子会社や関連会社を多く抱え、国内外でグローバル化を進める東証1・2部に増加が目立った。


  • 本調査は、自社開示、金融庁、東京証券取引所などの公表資料を基礎に、不適切な会計・経理処理した上場企業(連結ベース)を対象に集計した。
  • 業種分類は、証券コード協議会の業種分類に基づく。発生当事者は、開示資料に詳細な記載が無い場合、「会社」として集計した。本調査は2014年4月30日に続き4回目。

年度別推移

 2008年度以降の「不適切な会計・経理」の開示が行われた企業数の推移は以下の通り。2014年度は前年度に比べ4社増(10.5%増)の42社で、2007年の調査開始以来最多だった。2014年度の前半は前年度の17社と同数だったが、年度後半に開示企業が25社に達し全体数を押し上げた。

不適切会計

内容別 「在庫改ざん」「着服横領」を含む「その他」が最多

 2014年度の不適切な会計の内容別では、「その他」が最多で18社、次いで「子会社によるもの」が16社、「架空・水増し売上」が6社と続く。最多の「その他」は「集計ミスや資産の誤評価などによる誤った会計処理」など、単純ミスによる不適切会計のほか、従業員が不良品の発生を隠蔽し、在庫を改ざんしたケースなど、業績や予算達成を目的とした不適切会計も多く見られた。さらに「代表者に対する不正な利益供与」や、「元従業員による不正行為による会社資金の着服横領」など、コンプライアンスを無視した犯罪性の高いものまで、多様化している。内容別で増加が目立ったのは「子会社によるもの」で、前年度から3社増えて16社、「在庫操作」は2社だった。

発生当事者 「子会社・関係会社」が16社でトップ

  2014年度の発生当事者別では、「子会社・関係会社」が16社(構成比38.0%)で最多だった。次いで「会社」15社(同35.7%)、「従業員」8社(同19.0%)、「役員」3社(同7.1%)の順。 「子会社・関係会社」では、薬局を経営する子会社が診療報酬を不正請求していたケースや、中国子会社が実体のない取引を行い、過年度決算の訂正で一気に債務超過に転落したものなど、不適切会計の温床が徐々に子会社にシフトしている様子がわかった。
「会社」は経理処理のミスなどが多く、全体の件数を押し上げた。増加が目立った「従業員」は、不正取引による会社資金の着服横領のほか、営業成績のプレッシャーに圧されて不適切会計に手を染めたものなど、行き過ぎた成績至上主義が動機となった例も見られた。

不適切会計

業種別 製造業が大幅増加の15社

 2014年度の業種別では、製造業が15社で最も多かった。次いで、運輸・情報通信業12社、サービス業4社と続く。製造業は「子会社による資金融通を目的とした実体を伴わない取引」や「海外子会社における不正経理」など、企業のグローバル化を背景に前年度の6社から15社に急増した。運輸・情報通信業は「契約を装った架空取引による資金の還流」など、不正を原因とする不適切会計が12社中7社。サービス業は4社全てが不正を原因とする内容だった。

市場別推移 東証1部が16社でトップ

 2014年度の市場別では東証1部が16社(構成比38.0%)、ジャスダック12社(同28.5%)で、以下東証2部、東証マザーズ、地方上場の順だった。前年度までは、業歴が浅く財務基盤が比較的弱い東証マザーズ、ジャスダックなどの新興市場の増加が目立ったが、2014年度は新興市場、地方上場とも前年度から減少に転じた。国内外に子会社や関連会社を多く抱え、グローバル化を進める東証1部・2部の大手企業に不適切会計を行った企業が集中した。

まとめ

 2009年3月期決算以降、上場企業は財務情報の正確性強化のために「内部統制報告書」の開示が義務付けられ、不適切な会計や経理などを未然に防ぐ体制に力を注いできた。しかし、上場企業の不適切な会計・経理は2年連続で増加し、架空取引や着服・横領など、不祥事にまつわる不適切会計は依然多い。また、企業がグローバル化を進める中、目が行き届き難い海外子会社を舞台とする不適切会計も少なくない。金融庁と東京証券取引所は3月5日、上場企業に独立性が高い社外取締役2人以上を選ぶように促すことなどを盛り込んだ企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)を決定した。株主の権利・平等性の確保のほか、適切な情報開示と透明性の確保、内部通報制度の整備など5項目からなり、上場企業が守るべき行動規範を網羅したものだ。経済のグローバル化によりマーケットが広がり、企業活動が自由度を増す反面、不祥事により企業存亡に係る危機に直面することもある。企業が社会の信頼を得るためにも経営トップには、コンプライアンス経営を貫くという強い決意が求められる。

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