• TSRデータインサイト

2014年「休廃業・解散企業」動向調査

 2014年の休廃業・解散件数は2万6,999件。3年ぶりに前年を下回ったが、過去10年間で3番目に多い件数で、休廃業・解散企業は高い水準で推移した。後継者難や業績ジリ貧などで事業継続を断念する企業が依然として多いことを浮き彫りにした。


  • 本調査は、東京商工リサーチの企業データベースから休廃業、解散が判明した企業を抽出した。「休廃業」は、資産が負債を上回る「資産超過」状態での事業停止で、倒産には集計されない。また、「解散」は事業継続を断念する点では倒産と同じだが、資産に余力を残す状態で清算手続きをとるケースもあり、「解散」を決議した段階では倒産に集計されない。

2014年の休廃業・解散件数 年間倒産の約2.8倍

 2014年の休廃業・解散は、2万6,999件(前年比8.2%減、前年2万9,414件)だった。アベノミクス効果による景気回復機運も影響して3年ぶりに前年を下回った。
ただし、倒産の沈静化が際立つなか、休廃業・解散は高水準で推移し、2014年は年間の倒産件数9,731件に対して約2.8倍にのぼった。また、「倒産」と「休廃業・解散」の合計が、2008年のリーマン・ショック後は依然として4万件近くで推移していることが注目される。

休廃業・解散、倒産件数 年次推移

産業別 建設業が約3割

 2014年の休廃業・解散の産業別では、最多が建設業の7,214件(前年比16.4%減、構成比26.7%)だった。公共工事拡大や消費税率引き上げ前の住宅・建築需要の活況から、減少幅が大きくなった。ただし、こうした状況にあっても人手不足、労務費や建築資材の高騰が重なり、事業継続を断念したケースも多かったとみられる。次いで、飲食業や宿泊業などを含むサービス業他が6,530件(前年比1.6%減)、小売業3,936件(同2.1%減)、製造業2,748件(同4.9%減)と続く。前年比では、10産業すべてで前年を下回ったが、零細規模が多い飲食業を含む「サービス業他」と価格競争が厳しさを増す「小売業」の減少幅が他産業と比べて小さいのが目を引く。

地区別 9地区のうち7地区で減少

 地区別では、9地区のうち7地区で前年を下回ったなかで、中部は3,757件(前年比1.6%増)で、8年連続で前年を上回った。建設業が減少した一方で、サービス業他や小売業、製造業で増加をみせた。また東北は2,006件(同7.8%増)で2年ぶりに増加に転じ、不動産業やサービス業他での増加が目立った。2014年の企業倒産は減少ぶりが際立ったが、一方で後継者難や事業不振などから「休廃業・解散」は高水準で推移した。中小・零細企業の経営実態の把握には「休廃業・解散」の動向も勘案する必要がある。最近の急速な円安による原材料価格の上昇で、ダメージを受けている中小企業も多いことから、「休廃業・解散」企業が増勢する懸念を払拭できない。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ