• TSRデータインサイト

主要上場ゼネコン56社 2014年9月中間期の決算状況

 主要上場ゼネコン56社の2014年9月中間期決算(2014年4月1日~9月30日)は、全体の約6割の34社(構成比60.7%)が売上高・純利益で増収増益を示し、好調な決算となった。
56社の売上高合計は前年同期より6.8%増加し、純利益も43.8%増加した。東日本大震災の復興工事に加えアベノミクスによる公共工事の前倒し発注が工事量を増加させ、売上は増加し、採算面では選別受注可能な環境を作り、利益好転に結び付けられた。建設業界は人手不足に伴う人件費高騰、材料費の値上がりなど、コストアップの厳しい収益構造が続いている。そうしたなか上場ゼネコンは工事管理と選別受注を行い、全体的に好業績を示した。


  • 本調査は本決算が3月の主要上場ゼネコン56社を対象に、2014年9月中間期決算(2014年4月1日~9月30日)の決算短信を基に、前年同期と比較可能な「売上高」、「営業利益」、「当期純利益」、「受注高累計」、「通期予想」を集計・分析した。
  • 「売上高」、「営業利益」、「当期純利益」、「通期予想」は原則として連結決算数値。「受注高累計」は個別決算の数値(判明分)を前年同期と比較した。「受注高累計」の内訳が判明した38社については、「官公庁」と「民間」の構成比を示した。

主要上場ゼネコン56社の2014年9月中間期決算業績状況

売上高 前年同期比6.8%増

 56社の2014年中間期決算の連結売上高合計は6兆3,799億5,200万円で、前年同期から6.8%増加した。前年度における増加率は9.6%で、今年度の増加率は2.8ポイント減少した。
56社のうち、増収企業は39社(構成比69.6%)と7割近くを占め、減収企業は17社(同30.3%)だった。増収率上位10社では、受注が順調であったことに加え、前期からの工事で当期に完成したこと等が影響した。一方、減収率が高かった10社は、56社のうち連結売上高が比較的小さい企業が多かった。
スーパーゼネコン4社はそろって増収で、大林組は前年同期比12.0%増だった。前年同期比30%以上の増収企業は2社(日鉄住金テックスエンジ、新日本建設)。一方、減収10%以上企業は5社(南海辰村建設、世紀東急工業、淺沼組、植木組、ナカノフドー建設)だった。

純利益ベース 56社で43.8%増益、増収増益企業が6割超

 純利益は、56社合計1,366億9,800万円で、前年同期(950億8,600万円)より416億1,200万円(43.8%)増加した。56社のうち、増益は44社(構成比78.6%)、減益は12社(同21.4%)。純損失を計上した企業は4社(同7.1%)だった。売上高・純利益の増収増益は34社(同60.7%)で全体の6割超を占め、減収減益は7社(同12.5%)にとどまった。
一方、本業の儲けを示す営業利益は、56社合計で1,801億3,700万円。前年同期(1,158億6,300万円)より642億7,400万円増(55.5%増)となった。増益の要因として、復興・防災の推進に向けた公共投資の増勢に加え、企業収益改善を背景に民間設備投資が堅調に推移したこと、このため選別受注が行える環境下で、採算性や生産性を重視した受注を行う企業が多かったことによる。56社のうち、増益47社(構成比83.9%)、減益9社(同16.0%)だった。増収増益の企業は36社(同64.2%)と6割を超え、減収減益は6社(同10.7%)にとどまり、本業好調な収益状況を示した。

受注高 56社で0.7%増 官公庁工事は52.4%増加

 56社の受注高累計は6兆5,184億4,100万円で、前年同期(6兆4,712億9,900万円)より471億4,200万円増(0.7%増)だった。56社のうち、30社(構成比53.5%)で受注が増加した。
受注高内訳が判明した38社でみると、官公庁工事は前期より52.4%増えた。一方で、民間工事は22.1%減少し、官民で受注に差が見られた。アベノミクスのもと、年間予算の前倒し発注により官公庁工事受注は増えたが、民間工事は消費増税に伴う駆け込み需要の反動などから全体に受注高は減少したとみられる。

通期業績予想 8割が増収増益予想

 2015年3月期の通期業績予想は、売上高は56社合計で14兆1,342億7,000万円、前年同期より8,997億4,000万円(6.8%)の増加見通しとなった。また、営業利益は同合計4,381億5,000万円で、前年同期より1,413億8,000万円(47.6%)の増加見通し。当期純利益は同合計2,745億6,500万円で、前年同期より850億6,500万円(44.9%)の増加見通しとなった。
以上から56社のうち売上高・営業利益ベースで増収増益予想が47社(構成比83.9%)、売上高・純利益ベースで増収増益が44社(構成比78.5%)で、2015年3月決算も約8割の企業が増収増益の好決算を予想している。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ