「想定為替レート」調査 1ドル=90円 1ユーロ=120円が最多
東証1部、2部に上場するメーカー143社のうち、全体の4分の1にあたる37社で期初の想定為替レートを1ドル=80円から90円に設定した。また、ユーロも1ユーロ=120円とする企業が最多を占めた。外国為替市場は、昨秋以降、歴史的な円高が修正されて円安傾向に転じ、輸出産業では業績が息を吹き返したところが多い。
- ※本調査は、東京証券取引所1部、2部に上場する主な電気機器、自動車関連、機械、精密機械メーカー(3月本決算企業)のうち、2014年3月期決算の業績見通しで想定為替レートが判明した143社を対象に調査した。資料は2014年3月期決算の決算短信、業績予想等に基づく。
2014年3月期決算の想定為替レート 1ドル=90円の企業が4割
東京証券取引所1部、2部に上場するメーカー143社のうち、2014年3月期決算(本決算)の業績見通しで、期初の対ドル想定レートを1ドル=90円と設定した企業が62社(構成比43.3%)と最も多かった。次いで、95円が51社、93円と94円が各9社、85円が6社と続く。90円と95円の合計は113社(構成比79.0%)と全体の約8割を占めた。想定レートの最安値は100円(2社)だった。
1年前とのレート比較 4社に1社が1ドル=70円台から90円台へ変更
1年前との期初想定為替レートの比較では、想定レートを「80円から90円」に変更した企業が37社(構成比25.8%)で最も多かった。次いで、「80円から95円」に変更が33社、「78円から90円」に変更が7社、「80円から93円」に変更が7社、「75円から90円」に変更が7社と続く。また1ドル=70円台から90円台へ変更した企業が36社(構成比25.1%)を数えた。
金融緩和効果で円安基調が続く
5月31日17時時点の円相場は1ドル=100円62~64銭(日本銀行調べ)で、前月末比では8カ月連続の円安・ドル高になった。これは1973年の変動相場制への移行後では、過去3回あった7カ月連続を抜き最長記録を更新した。昨秋以降の貿易赤字の定着と安倍政権が大胆な金融緩和を推進する政策を相次ぎ発表し、円安に一層拍車がかかった。
対ユーロ想定為替レート 1ユーロ=120円が最多
上場メーカー143社のうち、ユーロの想定為替レートが判明した96社では、2014年3月期決算の業績見通しで期初の対ユーロ想定レートで最も多かったのは、1ユーロ=120円の45社(構成比46.8%)だった。次いで、125円が25社(同26.0%)と続き、最高値は110円だった。
1年前、1ユーロ=105円の想定企業が最も多かったが、外国為替市場の円安基調を反映して想定為替レートを大幅に円安に変更した企業が続出し、想定レートの最安値は130円だった。
東証上場の主なメーカーの2014年3月期決算の業績見通しは、想定為替レートを1年前より円安に設定している。ただし、期初時点では今後の円相場の変動も勘案して、堅実な想定レートも多い。今後も円安局面が続くと輸出企業の収益改善が進み、業績が上方修正される可能性が高い。
一方、電力10社と都市ガス大手4社は、円安による液化天然ガスのなど輸入価格上昇を受けて、7月の料金を引き上げることを発表した。14社の一斉値上げは4カ月連続で、現行制度となった2009年5月以降の最高料金をいずれも更新する。このように円安が輸入コストの増加となる業界や企業への影響が懸念されている。また、歴史的な円高で海外生産を拡大した企業では、円高がマイナス要因になることも想定されるが、国内回帰の動きはまだ見えてこない。
超円高から円安へ、最近は1ドル=100円を挟んでの乱高下など、円相場のめまぐるしい変動に企業は揺れ動いている。