• プレスリリース

日本経営学会関東部会シンポジウムにて、早稲田大学商学学術院との共同研究の成果が発表されました

株式会社東京商工リサーチ(以下 「TSR」)と早稲田大学商学学術院(学術院長 横山 将義)は、2021年2月に産学連携に関する協定書を締結し、共同研究を推進してきました。
この取り組みの一環として2024年6月29日、早稲田大学で開催された日本経営学会関東部会シンポジウムにおいて、早稲田大学商学学術院との共同研究の成果が発表されました。
学術機関を始め、政府機関、金融機関、事業会社等から多数の参加があり、企業ビッグデータやそれを活用した社会課題解決に向けた取り組み、政策評価等に対する関心の高さがうかがえます。

全体テーマ

「退出か、躍進か:ビッグデータ・アンケート調査から見る日本企業のダイナミズム」

大規模な企業に関するデータを利用した研究を行っている研究者と、本邦でトップクラスの知見と実績を有するTSRが共同し、企業活動に関するビッグデータとアンケート調査に基づく4つ報告から日本企業のダイナミズムに迫りました。

報告テーマと報告者

「視点提供」
山野井 順一(早稲田大学)

各国と本邦における企業関連のビッグデータ・大規模アンケート調査と研究を概観し、「ビッグデータと大規模アンケート調査の利用により、企業ダイナミクスの解像度が上がる」という本シンポジウムでの大きなメッセージが示されました。

基調講演 「増加する倒産と窮境企業 ~ゾンビ企業推計に即して~」
原田 三寛(東京商工リサーチ 情報部 部⻑)

現在に至るまでの企業倒産件数の推移から、本邦における企業倒産が金融政策・金融支援によって大きく左右されてきたことが示されたほか、TSRが定期的に実施している企業アンケートなどを通じ、窮境企業の現状が詳らかになりました。今後の倒産見通しに加え、ゾンビ企業の推計手法や窮境企業増加で求められる対応策にも言及がなされています。

研究報告1 「日本企業のビジネスダイナミズムとマクロ経済のパフォーマンス」
宮川 大介(早稲田大学)

上場・非上場企業を対象とした企業レベルの大規模パネルデータに基づき本邦企業の過去20年程度の動態(参入、退出、成長、縮小)を描写した上で、ビジネスダイナミズムがマクロ経済にもたらす影響が議論されました。特に、米国との比較において日本の顕著な特徴である新陳代謝の悪さについて、データと整合的な理論的説明と幾つかのシミュレーション結果を参照しながら、今後の日本経済の展望について報告がなされました。

研究報告2 「企業のパフォーマンス向上のための『リアルEBPM』」
進 拓治(東京商工リサーチ 事業本部市場調査部 部長)

一般的な調査分析における問題点と統計的因果推論の必要性、統計的因果推論のボトルネックを克服するための手段として企業ビッグデータの活用が有効であることが報告されました。また、企業ビッグデータを活用した統計的因果推論の事例として、政策がもたらす企業への変化を定量的に計測した研究プロジェクト「地域未来牽引企業」がケーススタディとして紹介されています。

研究報告3 「経営者の心が折れるとき:コロナ禍での廃業の意思の分析」
山野井 順一(早稲田大学)

どのような要因が経営者に廃業を選択させるのか、またそれを思いとどまらせる要因は何かについて、TSRが実施した新型コロナアンケート調査に基づく報告がなされました。分析結果から様々な企業属性と経営者の廃業意思との関連が示され、理論面のみならず、実務面でも示唆が与えられています。

「パネルディスカッション」

日本における企業の「緩慢な退出」と「経済成長の停滞」の関係性、官民両者の企業関連のビッグデータ・大規模アンケート調査の今後の展開などについて、登壇者とシンポジウム参加者による議論を行いました。ビッグデータの活用に向けては、事後的な政策評価ではなく、効果検証に必要なリストや情報を事前に整理するといった政策評価を前提とした補助金等の制度設計が必要との提言がなされました。

これまでの早稲田大学との取り組み

三井住友ファイナンス&リース、早稲田大学との共同研究成果『滞在人口データを用いた取引先企業のリース需要予測』の公表について(2024/02/08)

企業の設備投資におけるリースに関する三井住友ファイナンス&リース、早稲田大学との共同研究の公表について(2023/11/02)

三井住友ファイナンス&リース、早稲田大学との共同研究成果について(2023/09/21)

東京商工リサーチと早稲田大学商学学術院が、産学連携に関する協定書を締結(2021/02/09)


今後もTSRは産業や企業に関する共同研究を推進し、研究成果を広く社会に還元していきます。

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