人を大切に、新しい価値を生み出す佐賀県政の挑戦 ~佐賀県・山口祥義知事 インタビュー~ 2026/8/6

佐賀県の地域経済、まちづくり、人材育成、新たな産業分野への挑戦をテーマに、佐賀県の山口知事へインタビューを行った。山口知事は、近年の佐賀県の変化について、単なる政策支出ではなく将来価値を生む投資として施策を積み重ねてきた成果であるとし、“人”を基軸とした県政運営と、“新しい価値”を生み出す投資、そして企業や地域に寄り添う支援を通じ、佐賀県の可能性をさらに広げていく考えを示した。

―近年、佐賀県が進化している背景はなんですか

佐賀県では、“新しい価値”を作り出すことに力を入れてきました。佐賀県の1人当たり県民所得が、令和5年度に初めて九州1位となったことは嬉しい出来事でした。地価についても、特に全国の県庁所在地において、佐賀市の上昇率は全国3位の高い水準となり、有効求人倍率も直近で九州上位の状況が続いています。こうした数字を見ると、県全体が変わりつつあることを実感しています。

こうした背景には、コロナ禍からの立ち直りの早さがあります。佐賀県は、コロナ後を見据え、「ピンチをチャンス」に、未来へ活きる取り組みとして、アウトドア、観光、宿泊施設、キッチンカー支援など、新しい需要を生む分野に投資してきました。象徴的な取り組みが「SAGAアリーナ」です。全国的にアリーナ整備が進む前から、佐賀県では単なる体育館ではなく、稼げるアリーナとして整備する方針を打ち出しました。SAGAアリーナには多くの来場者があり、スポーツやコンサート、全国大会など、これまで佐賀県で開催の機会が限られていた催しが行われるようになりました。

バスケットボールをはじめ、スポーツ観戦の文化も定着しつつあります。まちの雰囲気や人の動きが変わり、土地利用や投資のあり方にも変化が出てきました。佐賀県が進化しているという評価は、こうした積み重ねの表れだと考えています。

また、県の政策を単なるコストとして考えないようにしています。大切なのは、その政策が将来に向けた投資となるかどうかです。佐賀県には“さがデザイン”という考え方があります。これは単に見た目を良くすることだけではなく、地域や事業などが抱える課題の本質を的確に捉え、コンセプトをデザインして解決へと導き、施策を磨き上げることです。SAGAアリーナも大きな投資でしたが、地域に新しい価値を生む施設にするというその課題設定が成功の要因になっています。SAGAアリーナは、単に建物を整備しただけではありません。音響や映像を含めて質の高い空間を作ったことで、アーティストや主催者から選ばれる施設になりつつあります。

その結果、バレーボールのプロチーム「SAGA久光スプリングス」の移転にもつながりました。そうした動きに加えて、久光製薬株式会社の研究機能を集約する新研究所の開設もありました。

単なる箱物ではなく、そこで生まれる感動をはじめとする数字には表れにくい価値こそが、人の流れや新たなビジネス、投資を生み出し、地域全体を動かしている点が重要です。

山口祥義知事がインタビューに応じる様子
インタビューに応じる山口祥義知事

―佐賀県では人を中心にとらえた取り組みが進んでいますが、人材育成にかける知事の思いをお聞かせください

今こそ地方が産業のハブを作ることができる時代だと考えています。かつて地方は都市部へ人材を供給する側面が強くありました。しかし、現在の佐賀県は有効求人倍率も高く、人材を県外へ送り出すのではなく、県内で活かしていく考え方が必要です。AIが標準的な業務を担う時代になるほど、人が果たす役割の価値はむしろ高まります。だからこそ、人材育成に力を入れる必要があります。

佐賀県は幕末維新期にも人づくりを通じて時代を動かしてきた地域です。私が1期目から掲げている、“人を大切に、世界に誇れる佐賀づくり”という考え方も、そうした歴史を踏まえています。佐賀県は四年制大学が2つしかなく、大学進学の段階で県外へ出る若者が多くいます。15歳未満人口の割合は全国2位である一方、18歳から20代の層が薄いことは、佐賀県にとって大きな損失だと考えています。

佐賀県は福岡都市圏に近く、広大な平野や豊かな水資源、食料自給率100%、豊富な電力などの地域資源にも恵まれています。こうした多様な資源が持つポテンシャルを成長へと結びつけていくうえで、人づくりこそが成長のエンジンになると考えています。

そのため、将来を担う若い世代が世界を見据えて未来をつくる、新たなフィールドとなる県立大学の構想や、佐賀大学におけるコスメティック分野の学びなど、若者が佐賀県で学び、活躍できる環境づくりを進めています。県外に出た若者が30歳前後で戻ってくる動きもあり、特に女性が戻ってくることは大きいと感じています。

そうした状況下で、女性の流出防止を声高に言うのではなく、女性の皆さんに選ばれる地域でなければいけないとも思っています。「女性はこうするもんだ」、「女性はこういう働き方をするもんだ」という、私の言葉でいうところの“もんだ症候群”が、地方から女性を遠ざける要因の一つになっていると考えており、「もんだ」に捉われず、地方で女性が活き活きとした働き方ができるのが一番よいと思っています。また、経験、体験することはすごく大事なことで、これまでも生理痛体験や妊婦体験など自ら体験し、共感の大切さを伝えてきました。男女間で気持ちを共有できると大きな力になります。今年度は、柱の一つとして「輝ける女性」施策を重層的に展開しています。建設業の女性のフォーラムを立ち上げたり、都市部以外では初となる「SAGA×WOMAN EXPO 2026」も開催しました。女性がありたい姿を思い描きながら活き活きと輝くことができ、「佐賀で働きたい」「佐賀で暮らしたい」と自然に選ばれる地域をつくることが、これからの佐賀県の成長につながると考えています。

―佐賀県では新たな産業分野への挑戦を進めていますが、今後どのような分野で新しい価値を生み出していこうとお考えですか

コスメティック産業は、原料から研究、製造、販売、輸出まで幅広い可能性があります。ヨーロッパやアジアとの連携、海外ブランドのOEMや代理店機能など、佐賀県を拠点に展開できる余地は大きいと考えています。産学官連携でコスメティック構想に取り組むジャパン・コスメティックセンターを中心に、アジアとの連携を進めており、今後も重要な産業分野として育てていきます。

佐賀大学にもコスメティック分野の新しい学びが生まれ、定員を大きく上回る志願がありました。理系と文系の両方を学ぶ分野であり、従来の枠組みにとらわれない新しい学びとして面白いと感じています。また、eスポーツを取り入れた高校でも志願者が増えるなど、新しい分野に価値を見いだす動きが出ています。

スポーツを軸にした地域づくりも重要です。スポーツを単なる競技にとどめず、地域全体を浮揚させる産業として育てていく「SSP(SAGAスポーツピラミッド)構想」も、佐賀県らしい挑戦の一つです。

また、佐賀県は企業や作品とのコラボも得意としています。ロマンシングサガ、ゾンビランドサガ、キングダム、島耕作、ゴジラなど、民間企業や作品とのコラボレーションを重ねてきました。相手のイメージを損なわず、掛け合わせによって“新しい価値”を作ることは佐賀県の得意技です。多様な経験を持つ人材が県庁で政策を作っていることも、こうした挑戦を支える強みになっています。

佐賀県は、人と人との距離が近く、政策の波及効果が大きい地域です。県の取り組みが横に広がりやすく、助け合いやすい地域性があります。CSO(NPOなどの市民社会組織)の活動も活発で、災害・復興、子育て支援、人と人とのつながりづくりなど、行政だけでは届きにくい細かなニーズに応える大切な存在になっています。こうした地域の力も、“新しい価値”を生む土台になっています。

佐賀県コンセプトイメージポスター
佐賀県コンセプトイメージ

―県内企業および今後佐賀県に進出する企業の経営者に向けてメッセージをお願いします

佐賀県は、企業価値を上げられる環境がある地域だと考えています。県民という言葉はありますが、その一人ひとりにそれぞれの事情や思いがあります。企業についても同様で、一社ごとの事情や思いに寄り添うことが大切です。そうした考え方のもと、融資などの窓口対応にとどまることなく、企業を積極的に訪問し、フォローアップを丁寧に行うことに力を入れています。その結果、県外への流出防止や、新工場の県内立地の促進といった効果も表れています。これからも、企業へのフォローアップに力を入れ、佐賀県の強みにしていきます。

また、「世界海洋プラスチックプランニングセンター( PLA PLA プラプラ )」をつくり、地域発で地球規模の課題である海洋プラスチック問題の解決を目指すことや、株式会社スノーピークとの官民連携で進めてきた吉野ヶ里遺跡が持つ本物の歴史的価値を生かした「スノーピーク グラウンズ 吉野ヶ里」の整備など、一つ一つの政策に新たな価値を注入することを大切にしています。そこから自然に化学反応が起き、新しい動きが生まれます。今まさに勢いのある佐賀県の新しい動きに、ぜひ参加してもらいたいです。

佐賀県では、個性のある価値を生み出そうとする企業との連携に大きな可能性を感じています。周囲がそうしているからという理由ではなく、自社はこの方針で、この理念で、この価値を打ち立てたいという強い志を持つ企業の皆さんと、佐賀県は親和性が高いと考えています。佐賀県も“新しい価値”をつくる挑戦を続けています。だからこそ、強い志と熱い思いを持つ企業の皆さんと共に、次の時代の佐賀をつくっていきたいと考えています。

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