中小企業が福岡経済を強くするー知事が語る稼ぐ力と成長戦略 ~福岡県・服部誠太郎知事 インタビュー~ 2026/7/6
福岡県への注目が高まっている。政令指定都市として人口伸長率1位の福岡市をはじめ、県として産業成長・国際性・スタートアップ支援・交通アクセスのすべてが揃い、“最も元気のよい県”として国内外から強い関心を集めている。さらにQOL(暮らしやすさ)の高さに加え、観光や食文化の魅力も相まって、インバウンド需要も好調に推移している。
成長を続け、世界的にも注目を集める福岡県の原動力は何か。東京商工リサーチが服部誠太郎福岡県知事に聞いた。
―福岡県の経済状況、取り巻く環境は
ロシアによるウクライナ侵攻やイラン・中東情勢など、戦後最も厳しい安全保障環境の中にあります。こうした国際情勢は、福岡県だけでなく日本全体の産業・経済や生活に影響を及ぼし始めています。国際競争も一段と厳しさを増しており、この環境の中で勝ち抜いていかなければなりません。
そして、日本は超少子高齢社会の真っ只中にありますが、福岡県は全国の中でも比較的元気だと言われています。ただ、九州各県からの転入により年間約5千人の転入超過となっている一方で、対東京圏では6千人を超える転出超過が続き、また、県内でも人口の偏在が進んでいます。人口減少は人手不足を招き、あらゆる産業に影響を与えています。
福岡県は、福岡市を中心とした都市機能の集積、半導体・水素・バイオなどの成長産業の拡大、インバウンド需要の回復などにより、九州経済を牽引する役割を担っています。一方で、本県経済の原動力であり、県内企業の99.8%を占める中小企業は、人手不足や原材料価格高騰、生産性向上、DXへの対応など多くの課題に直面しています。
中小企業の課題解決や成長を力強く支援していくため、今年度から商工部内に「中小企業振興局」を新設しました。また、5月には「福岡県中小企業“稼ぐ力”応援センター」を開設し、生産性向上、DX、先進モビリティなどをワンストップで支援する体制を整えました。私たちは、中小企業の皆さまとともに歩み、経済を大きく成長させていきます。
―今後の戦略・ビジョンは
私が産業政策の中心に据えているのが「グリーンな成長」です。環境と経済は対立するものではなく、好循環を生み出すものと捉えるべきです。福岡県では、半導体(グリーンデバイス)、先進モビリティ、グリーン水素の3分野を柱としてグリーン成長プロジェクトを推進しています。
そして、バイオ分野では、県内に250社を超える企業が集積し、創薬・再生医療・ヘルステックなどで優れたスタートアップも生まれています。グロース市場への上場や大規模な資金調達などの素晴らしい成果を挙げているスタートアップも出てきています。研究開発から事業化、販路開拓、人材確保、大学との連携までバイオエコシステムという考え方で、一貫した支援を行っています。昨年度は九州大学病院の中にシェアラボを備えたインキュベーション施設も開所し、スタートアップの更なる成長加速が期待できます。
宇宙分野では、九州大学発のスタートアップ「QPS研究所」が世界最高水準の小型SAR衛星を開発し、すでに9基を運用しています。最終的には36基体制で「準リアルタイムデータ提供サービス」を目指しています。この衛星の開発には、県内中小企業17社が参画しており、私たちは「下町衛星」と呼んでいます。
また、こうした衛星から得られるデータの活用や宇宙食の開発など、幅広い分野での企業集積が進んでいます。
福岡県のさらなる発展のため、これらの他にも多くの産業プロジェクトを推進し、経済成長を実現して、「ここなら成功できる」「幸せになれる」と感じていただける福岡県をつくってまいります。
―企業が福岡県に進出するメリットは
福岡県には、企業が進出するための多くのポテンシャルがあります。
まず、交通インフラです。九州自動車道や東九州自動車道などの高速道路網が縦横に整備され、新たに2箇所のスマートインターチェンジを整備しています。さらに、高速道路インターチェンジなどへのアクセス性を高めるため、交通ビッグデータ分析を用いた戦略的な道路整備「Fukuokaスムーズコネクト」に取り組んでいます。
福岡空港は都心から約10分という世界一の利便性を誇り、国内外への多彩な路線を有するなど、アジアのゲートウェイとして重要な役割を果たしています。北九州空港は24時間利用可能で、2027年完成予定の滑走路延長により北米・欧州への大型貨物機の就航が可能になります。
企業活動においてBCPは極めて重要です。福岡県は日本海側にあり、地震や津波のリスクが比較的低い地域です。震度6以上の発生確率は6.2%と、東京・大阪・愛知などと比べて極めて低い水準です。
そして一番の強みは人材です。企業を誘致する際にも、企業側から、まずそこを聞かれます。福岡県は技術系人材の供給力が全国トップクラスであり、地元就職率も高く、優秀な若手人材が豊富です。
私たちは、アントレプレナーシップを持った若者を育成するため、高校生の起業に向けたチャレンジを支援しています。さらに、金融経済の専門人材を講師として、全県立高校生を対象に実践的な金融リテラシー教育を実施しています。
―スタートアップ企業への支援は
東京虎ノ門にアジア初拠点を構えたCIC(ケンブリッジ・イノベーション・センター)が、二つ目の拠点として「CIC Fukuoka」を天神に開設し、県はその中に「グローバルコネクト福岡」を開設しました。県職員が常駐し、企業の協業や資金調達への支援、ピッチイベントの開催など、日々スタートアップの成長を後押ししています。
CICの狙いは、国内にとどまらず、韓国・台湾などの東アジアやタイなど東南アジアのスタートアップを福岡に呼び込み、投資家や企業との出会いを生み出すことにあります。福岡県もタイ・バンコク都と友好提携を結んでおり、バンコク都知事との連携のもとタイのスタートアップを呼んでピッチイベントを行いました。
―海外情勢への県の対応について
中東情勢の緊迫化に伴う原油価格の高騰は、県内企業の経営に深刻な影響を及ぼしています。県では、関係各部及び国の機関で構成する「イラン情勢緊迫に伴う原油高騰・供給確保対策連絡会議」を設置し、情報収集・提供に努めています。また、業種や相談内容に応じた相談窓口を設置したところ、資材価格の上昇や入荷遅延、資金繰り悪化などの相談が寄せられたため、中小企業向け低金利の県制度融資を創設するなどの対応を行っています。
今後も、流通の実態把握、目詰まりの解消、十分な流通量の確保が図られるよう国へも現場の声を積極的に届けるとともに、関係機関と連携しながら必要な情報提供や相談対応を行い、県民や事業者の皆さまの不安の軽減と経営の安定につなげてまいります。
―最後に、企業経営者へメッセージを
福岡県で新たなチャレンジに挑もうと考えられている企業の皆さま。
「大歓迎します!」。
福岡県は、皆さまが成功をつかみとる場所として最適です。万全のサポートを準備してお待ちしていますので、一緒に夢をつかもうじゃありませんか!
何度失敗しても、またチャレンジできるのが福岡です。県内の中小企業をはじめ、先端技術産業に挑戦する企業、スタートアップ、そしてこれから福岡に進出する企業、福岡県はすべての皆さまのチャレンジを全力で応援してまいります。