40年ぶりに生え抜き理事長が誕生 ~遠賀信用金庫・井野敬一郎理事長 インタビュー~ 2026/4/16

福岡県遠賀郡岡垣町に本部を置き、北九州地区から福岡地区を営業基盤として事業を展開する遠賀信用金庫。2025年6月、40年ぶりに生え抜き理事長として井野敬一郎氏が就任し、現在の経営課題、今後の展望や戦略について聞いた。

―経歴と経営方針について

福岡県筑紫郡那珂川町(現・那珂川市)出身で今年3月で59歳になった。西南学院大学卒業後、大阪の非鉄金属会社に勤務した後、1989年10月中途採用で遠賀信用金庫に入庫した。

今年で37年目になるが、様々な部署を経験し、直近では総務担当の理事・常務理事を務め、2025年6月理事長に就任した。歴代理事長は3代約40年間にわたって大蔵省(現・財務省)出身者が務めてきたが、40年ぶりの生え抜き理事長となる。

就任後は全15店舗と約110名の総代を訪問し、現場の声を聞いたが、改めて職員や顧客に支えられていることを実感した。私が最重要視しているのは経営方針である「職員とその家族の幸せのために働きがいのある職場を実現する」であり、常にこれを念頭に置いて業務に取り組んでいる。

―エリア内の状況について

製造業中心の北九州市から商業都市の福岡市が営業エリアであるが、業種の偏りがなく、景気変動に強いのが特徴だ。さらに北九州市と福岡市の間に位置する岡垣町、宗像市、福津市、古賀市、新宮町など、いわゆるベッドタウンでは人口流入が続いており、住宅ローンや消費者ローンのニーズが高い。

福岡県では信用金庫のブランド認知が相対的に低く、メガバンクや地銀が優勢であり、福岡市内でのシェアは約1.4%にとどまるが、経営方針として「地域のベスト金融機関」を掲げ、地場理解・顧客理解を武器にエリア内での競争に打ち勝つ方針であり、「スモールイズナイス(小さいことはカッコ良い 小さいからこそ出来る」を合言葉に「利回りより身の回り(金利より顧客本位のサービス)」を重視している。

こうした状況のなか、当金庫では年金業務に早くから力を入れ、女性職員をねんきんアドバイザーとして各店舗に配置した結果、現在では毎月約40億円の年金振込があり、安定した預金基盤を構築している。また、インターネット支店での貸出金14億円超の実績やデジタル化への積極的な取り組み(全役職員のITパスポート取得推進、DX会議の実施)など、先進的な取り組みも進めている。

井野敬一郎理事長がインタビューに応じる様子
インタビューに応じる井野敬一郎理事長
―現在の経営課題は

全国の信用金庫の95%が有価証券の含み損を抱えているが、当金庫も例外ではない。この含み損処理が最大の経営課題であり、自己資本への影響を考慮しながら対応していく必要がある。また、金利上昇局面において、預金金利の引き上げに対応できない信用金庫が存在するなど、優勝劣敗が進む可能性があることを懸念しており、体力のない金融機関は厳しい状況に直面する可能性があると考えている。その他、人材確保と定着率向上が課題である。現在、3年以内離職率については、業界平均の30%を下回る15%を目標としているが、まずはこの目標をクリアしたい。

―今後の展望や戦略は

先にも述べたが、有価証券の含み損処理は思い切った対応を行う必要があり、中途半端な処理ではなく、決断を持って実行する方針である。預金獲得戦略においては、住宅ローン顧客の約3千先に対してSNSを活用した商品提案やメイン化を図るための給与振込・公共料金引き落としの獲得を推進する計画を立てているほか、インターネット支店の商品ラインナップ拡充を図り、現在の消費者ローン中心から住宅ローンのウェブ申込など、より幅広い商品展開を目指している。また、職員教育においては、これまで住宅ローンの獲得に注力してきた若手職員を事業資金融資にも注力させるなど、バランス調整を行う必要があると考えている。

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