地域金融の覚悟と展望、渉外力が切り拓く「次の100年」 ~筑後信用金庫・丸山裕一理事長 インタビュー~ 2026/2/12
福岡県久留米市に本店を置き、筑後地区を営業基盤として事業を展開する筑後信用金庫。2024年に創立100周年の節目を迎え、新本部ビルの新築移転に向けて新たなスタートを切った。地域に根差す金融機関として次の100年をどのように描くのか。理事長に今後の経営方針と地域金融機関としての使命について聞いた。
丸山 裕一(まるやま ゆういち)理事長
福岡県出身。1969年12月生まれ。西南学院大学卒。1993年4月筑後信用金庫入庫。2014年4月甘木支店長、2017年4月審査部副部長、2019年4月審査部長、2020年4月本店営業部長、2021年4月企業サポート部長、同年6月常勤理事業務部担当兼企業サポート部長、2022年6月常勤理事総務部担当、2024年6月常務理事総務部担当、2025年6月理事長に就任。
―2026年3月に新本部ビルが竣工予定と聞いた
新本部ビルのオープンは2026年春を予定している。計画自体は、10年以上前から検討していた。旧本店は老朽化と耐震面の課題を抱えており、建て替えは避けられない状況であった。結果として100周年に近い時期と重なり、象徴的なタイミングでの完成となる。
新本部ビルは単なる業務拠点ではない。1階には地域に開かれたフリースペースを設け、学生や地域住民が気軽に立ち寄れる空間とした。セミナーや相談会の開催、さらには災害時の支援拠点としての活用も想定している。信用金庫は地域とともに存在する金融機関であり、建物自体がその姿勢を体現するものでありたい。

インタビューに応じる丸山 裕一理事長
―100周年ロゴ「心でつながる未来へ」に込めた想いは
信用金庫の原点は顔の見える営業だ。何かあったときに、まず当金庫の顔を思い浮かべてもらえる存在でありたい。その想いを「心でつながる」という言葉に込めた。このキャッチコピーは従業員から募った。
地域が元気でなければ信用金庫の存在意義もない。地域と運命共同体であるという理念は、これからも不変である。
―デジタル化が進む中、「信用金庫らしさ」とは何か
デジタル化やAI活用は当然進める。しかし、それだけでは信用金庫の価値にはならない。決算書の数字だけでは見えないものがある。事業所の雰囲気、従業員の様子、経営者の姿勢、現場で感じ取る“渉外力”こそが最大の強みであり、これはAIには代替できない。「信用金庫らしさ」とは、Face to Faceでお客様と向き合うことである。
―今後の最大の課題は何か
人材育成だ。情報が容易に手に入る時代において、自ら考える力をどう育てるかが難しい。資格制度やキャリアパス制度は整えているが、挑戦意欲を高める工夫が求められている。スキルは教育できるが、洞察力や感性は簡単には育たない。だからこそ、顧客と対話し、課題を共有し、解決策を考える現場経験が重要だ。
―人口減少が進む中での経営戦略は
人口減少は避けられない現実。規模拡大ではなく、小さくても勝てる経営を目指す。久留米市内でのシェアにはまだ伸びしろがあり、信用金庫らしさを明確に打ち出し、存在価値を高めることで選ばれる金融機関であり続けたい。理想は、営業しなくとも『まずは筑後信用金庫に相談しよう』と思ってもらえる存在になることである。
―九州産業大学との連携について伺いたい
九州産業大学とは産学連携の覚書を締結し、学生が店舗デザインや広報制作に参画している。若い発想は企業に新たな気づきを与え、学生にとっても実践の学びの場となる。地域の企業、大学、そして信用金庫が結びつくことで、地域全体の活力向上につなげていきたい。
創立100周年という節目を経て、筑後信用金庫は次の100年へと歩みを進める。変わらぬ理念は「地域とともに」。デジタル化や人口減少という環境変化に向き合いながらも、顔の見える営業と渉外力を軸に、地域から真に信頼される存在であり続ける。その覚悟と自信が、理事長の言葉から強く伝わるインタビューとなった。
2026/2/12