全国企業倒産状況

2022年上半期(1-6月)の全国企業倒産3,060件

2022年上半期(1-6月)の倒産

上半期の倒産 低水準ながら2年ぶりに増加、コロナ関連倒産は1.3倍増の1,015件

 2022年上半期(1-6月)の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が3,060件(前年同期比0.5%増)、負債総額は1兆7,088億1,800万円(同179.3%増)だった。 
件数は、微増ながら上半期としては2年ぶりに前年同期を上回った。2022年は4月以降、3カ月連続で前年同月を上回り、コロナ関連支援で抑制されていた倒産が増勢の兆しを強めている。ただ、2年連続で3,000件台にとどまり、低水準での推移に大きな変化はない。
負債総額は、3年ぶりに前年同期を上回った。全金融機関から事業再生ADR手続の同意を得られず、簡易再生手続き(民事再生法)を申請したマレリホールディングス(株)(埼玉、負債1兆1,330億円)が負債を押し上げた。負債1兆円超の大型倒産は、2017年上半期のタカタ(株)(東京・同1兆5,024億円)以来、5年ぶり。また、同10億円以上は88件(前年同期78件)、同5億円以上10億円未満が106件(同95件)、同1億円以上5億円未満が608件(同578件)で、徐々に中堅企業にも倒産が広がりつつある。
2022年上半期の「新型コロナウイルス」関連倒産は1,015件(前年同期比32.3%増、構成比33.1%)で、3月(205件)と6月(200件)は200件台に乗せた。
上場企業の倒産は、2年連続で発生がなかった。
産業別では、建設業が576件(前年同期比9.2%増)で、14年ぶりに前年同期を上回った。

企業倒産上半期推移


  • 「人手不足」関連倒産のうち、「後継者難」は224件
  • 形態別:法的倒産の構成比96.9%、上半期としては過去2番目に高い水準
  • 都道府県別件数:増加26道府県、減少20都府県、同数1県
  • 負債別:負債1億円未満の構成比が73.7%、1兆円以上が5年ぶりに発生
  • 業種別:道路貨物運送業、老人福祉・介護事業、教育,学習支援業などが増加
  • 従業員数別:従業員数10人未満の構成比が87.4%
  • 中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)は3,059件。上半期では2021年同期に次ぐ、2番目の低水準

産業別 10産業のうち、4産業で前年同期を上回る

 2022年上半期の産業別件数は、10産業のうち、農・林・漁・鉱業、建設業、運輸業、情報通信業の4産業が前年同期を上回った。
最多はサービス業他の993件(前年同期比0.3%減)で、上半期としては2年連続で前年同期を下回った。このほか、小売業347件(同5.7%減)が4年連続、製造業334件(同1.7%減)、卸売業400件(同2.9%減)、金融・保険業10件(同9.0%減)が2年連続、不動産業99件(同27.7%減)が3年ぶりに、それぞれ前年同期を下回った。
一方、建設業576件(同9.2%増)は、2008年同期以来、14年ぶりに前年同期を上回った。このほか、農・林・漁・鉱業35件(同34.6%増)が2年ぶり、情報通信業116件(同8.4%増)が3年ぶりに、それぞれ前年同期を上回った。
また、燃料価格の高止まりが続くなかで影響が注目される運輸業は150件(同25.0%増)で、2年連続で前年同期を上回った。

2022年上半期の産業別倒産

産業別倒産上半期推移

地区別 倒産件数 北海道と東北、九州の3地区で前年同期を上回る

 2022年上半期の地区別件数は、北海道と東北、九州を除く6地区で前年同期を下回った。
北海道108件(前年同期比40.2%増)は、上半期としては2017年以来、5年ぶりに前年同期を上回った。このほか、東北171件(同59.8%増)は2年ぶり、九州257件(同8.8%増)は3年ぶりに、それぞれ増加した。
一方、関東1,152件(同4.0%減)は、上半期としては2018年以降、5年連続で前年同期を下回った。また、中部356件(同2.7%減)、北陸64件(同22.8%減)、近畿773件(同0.2%減)、中国127件(同3.7%減)、四国52件(同23.5%減)は、それぞれ2年連続で減少。

2022年上半期の都道府県別倒産

地区の範囲は以下に定義している。

  • 東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
  • 関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
  • 中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
  • 北陸(富山、石川、福井)
  • 近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
  • 中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
  • 四国(香川、徳島、愛媛、高知)
  • 九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)

上半期の主な倒産

[負債額上位5社]

  1. マレリホールディングス(株)/埼玉県/純粋持株会社/1兆1,330億円/民事再生法
  2. (株)ホープエナジー/福岡県/電力小売/300億円/破産
  3. イセ食品(株)/東京都/鶏卵販売ほか/278億4,700万円/会社更生法
  4. (株)SH東雲堂/広島県/書籍販売ほか/193億100万円/特別清算
  5. イセ(株)/富山県/飼料販売/171億円/会社更生法

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年度の業績見通しに大ブレーキ 「増収増益」見込みが16.6%に急減

トランプ関税、物価高、「価格転嫁」負担で、国内企業の業績見通しが大幅に悪化したことがわかった。2025年度に「増収増益」を見込む企業は16.6%にとどまり、前回調査(2024年6月)の23.3%から6.7ポイント下落した。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月20日時点) 役員報酬1億円以上の開示は117社・344人

2025年3月期決算の上場企業の株主総会開催が本番を迎えた。6月20日までに2025年3月期の有価証券報告書を510社が提出し、このうち、役員報酬1億円以上の開示は117社で、約5社に1社だった。

3

  • TSRデータインサイト

チャプター11をめぐる冒険 ~ なぜマレリはアメリカ倒産法を利用したのか ~

ずっと日本にいるのに時差ボケが続いている。  「マレリのチャプター11が近いから関連サイトをチェックし続けろ」と6月6日に先輩に言われて以降、私の生活はアメリカ時間だ。

4

  • TSRデータインサイト

代金トラブル相次ぐ、中古車販売店の倒産が急増

マイカーを売却したのに入金前に売却先の業者が破たん――。こうしたトラブルが後を絶たない。背景には、中古車価格の上昇や“玉不足”で経営不振に陥った中古車販売店の増加がある。倒産も2025年1-5月までに48件に達し、上半期では過去10年間で最多ペースをたどっている。

5

  • TSRデータインサイト

定量×定性分析 危ない会社は増えたのか?

2024年度の全国倒産が1万144件(前年度比12.0%増)と11年ぶりに1万件を超えたが、企業の倒産リスクはどの水準にあるのか。東京商工リサーチが企業を評価する「評点」と「リスクスコア」のマトリクスからみてみた。

TOPへ