• TSRデータインサイト

2024年7月の「人手不足」関連倒産は32件 1-7月累計は177件、すでに年間最多を更新

2024年1-7月の「人手不足」関連倒産


 人手不足と人件費上昇が企業経営に深刻な影響を及ぼしている。2024年7月の「人手不足」関連倒産は32件(前年同月比77.7%増)で、5カ月連続で前年同月を上回った。
 1-7月の「人手不足」を一因とする倒産は177件(前年同期比108.2%増)と、前年同期の2倍に達した。調査を開始した2013年以降の1-7月では過去最多を更新し、7カ月間で年間最多の158件も超えた。
 内訳は、「求人難」が71件(前年同期比91.8%増)、「人件費高騰」が60件(同106.8%増)、「従業員退職」が46件(同142.1%増)。「人件費高騰」と「従業員退職」は、すでに年間最多を更新した。賃上げ原資となる業績の改善が見られないなかでの賃上げは、資金繰りの悪化に拍車を掛ける。一方、賃上げをできない企業では人材流出が避けられず、人材確保が経営上の大きな課題に浮上している。

 産業別では、金融・保険業を除く9産業で前年同期を上回った。最多がサービス業他の53件(前年同期比112.0%増)。次いで、建設業52件(同205.8%増)、運輸業37件(同54.1%増)と、労働集約型産業で人手不足に伴う倒産が顕著となっている。
 資本金別は、1千万円未満が112件(同119.6%増)と6割超(63.2%)を占めた。
 形態別は、破産が161件(同98.7%増)と9割(90.9%)を占めた。経済活動が活発になるなか、人手不足で受注機会を逃し、事業継続を断念する企業が多いことを示している。

 物価高や最低賃金の引上げなどが企業収益を圧迫するなか、売上増が運転資金の需要を活発にしている。だが、過剰債務が解消されず、新たな資金調達が難しい企業は、「黒字倒産」が現実味を帯びてきた。賃上げの流れに乗れない企業は、従業員の採用が難しく、人材の流出も避けられない状況に直面しており、しばらく「人手不足」関連倒産は増勢が続く可能性が高い。

※本調査は、2024年1-7月の全国企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「人手不足」関連倒産(求人難・従業員退職・人件費高騰)を抽出し、分析した。(注・後継者難は対象から除く)

左:「人手不足」関連倒産(1-7月) 右:「人手不足」関連倒産推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

私立大学の経営、売上トップは(学)順天堂 赤字企業率5割に迫る、損益は地域格差が鮮明に

私立大学を経営する全国の543法人のうち、約半数の253法人が2024年決算で赤字だった。赤字企業率は46.5%にのぼり、前期(40.8%)から5.7ポイント上昇し、5割に迫った。

2

  • TSRデータインサイト

企業倒産、破産の割合が9割超で過去最大 ~ 背景に「手形減少」と「準則型私的整理」 ~

企業倒産のうち、破産の構成比が90.3%に達し、過去最大を記録した。民事再生法はわずか2.2%にとどまる。破産は、売上不振や財務内容が悪化し、再建が見通せない企業が選択する。なぜ今、破産の構成比が高まっているのか――。

3

  • TSRデータインサイト

2025年上半期 20床以上の病院倒産が急増 「病院・クリニック」倒産21件、5年連続で前年同期を上回る

病床20床以上の病院の経営が厳しさを増している。2025年上半期(1-6月)の病院・クリニックの倒産は21件(前年同期比16.6%増)だった。上半期では、コロナ禍の2020年を底に、2021年から5年連続で前年同期を上回り、1989年以降で最多の2009年同期の26件に次ぐ、2番目となった。

4

  • TSRデータインサイト

リフォーム・塗装工事の倒産が急増 ~ 点検商法などのトラブル多発 ~

リフォーム・塗装工事の倒産が急増している。2025年上半期(1-6月)の倒産は119件に達し、過去20年で最多だったリーマン・ショック後の2009年同期の111件を上回った。

5

  • TSRデータインサイト

ホテル業界 止まらない客室単価の値上げ インバウンド需要で高稼働・高単価が続く

インバウンド(訪日旅行客)需要に支えられ、ホテル業界は好調が続いている。ホテル運営の上場13社(15ブランド)の2025年3月期の客室単価は、インバウンド需要の高い都心や地方都市を中心に前年同期を上回り、稼働率も前年同期並で高水準を維持している。

TOPへ