人手不足と人材派遣=2023年を振り返って(8)
経済活動の再開と物価高が重なり、賃上げも進んだ。しかし、2023年の「人手不足」関連倒産は11月までで144件(前年同期比132.2%増)で2.3倍と急増している。コロナ禍前の2019年(1-12月)の132件以来、過去2番目の高水準だ。
人手不足は、受注の機会損失や従業員の過重労働など、経営上のリスクにつながりやすい。人材不足には派遣会社を利用する企業も多いが、2023年はその人材派遣会社の倒産も大幅に増加した。
人材派遣業の倒産(年間)は、2022年に55件(前年比120.0%増)と急増した。2023年は11月までで70件(前年同期比145.8%増)に達した。過去最多の2009年(102件)に迫る水準だ。コロナ禍で結婚式場や外食向け食品工場などへの派遣が急減し、ここに来てギブアップする派遣会社は少なくない。
経済活性化に伴う人材の需要局面では、知名度が乏しく規模が小さい業者には派遣する人材が集まらない。「時給を含めて待遇の良い派遣先を多くもつ大手が根こそぎ人材をさらっていく」(業界関係者)という。さらなる賃上げ機運もあり、小・零細規模の人材派遣業者には冷たい師走の風が吹く。
人材派遣業界は、2020年4月に施行された「同一労働同一賃金」に関わる派遣法改正や、2022年10月の社会保険適用拡大による人件費上昇の影響を引きずっている。
「人手不足」が深刻化するなか、2023年は人材派遣業の二極化が進行した。こうした状況下で迎える「2024年問題」は人材派遣業界の勢力図を塗り替えかねない。