• TSRデータインサイト

食品の価格改定、今年すでに1万品超を予定 主要食品メーカー121社の「価格改定・値上げ」調査

 為替相場は、一時期に比べ、円安が落ち着いているものの、原材料や資源価格の高騰で食品の値上げが相次いでいる。仕入コスト上昇が続き、2023年の出荷分で主要食品メーカー121社のうち、半数以上の64社(構成比52.8%)がすでに価格改定を公表している。品目数は計1万36品に及び、約7割が年度末の2・3月に集中している。原材料そのもののコスト高に加え、パッケージや包材などの資材価格や物流費の上昇など、複数の要因を値上げの理由にあげている。メーカーによっては今春の値上げに次いで、年下半期にも値上げを検討する商品もあり、価格改定の波は続きそうだ。

東京商工リサーチ(TSR)は国内の主要食品メーカー121社を対象に、2023年1月以降の出荷・納品分で価格改定を公表した商品について調査した。
食品メーカー121社のうち、2023年1月以降の出荷・納品分で値上げを公表したのは64社(構成比52.8%)で5割以上にのぼる。64社の値上げの対象商品は、1万36品と1万品を超えた。
値上げの要因では原材料高に加え、製造に掛かる光熱費や資材価格も影響している。1万36品目の分類別では、加工食品(2,906品)、冷凍食品(2,289品)、調味料(1,755品)、飲料・酒(1,431品)が上位で、一般家庭で身近に食卓に並ぶ食品が占めた

  • 本調査は、国内の主な食品メーカー121社を対象に、2023年1月1日以降出荷・納品分で値上げを表明した商品を文書、ウェブ、開示資料等を基に集計した。本調査の実施は今回が初めて。値上げ、価格改定は、2023年1月17日公表分までを対象に集計。

【値上げ率】「5%以上10%未満」が最多

 各社の値上げ対象の商品から代表的な商品を抽出し、その値上げ幅を算出した。
2023年1月以降に出荷・納品の商品のうち、値上げ率「5%以上10%未満」が最多の5,267品(構成比52.4%)で半数以上を占めた。
次いで、「5%未満」が3,635品(同36.2%)で、「10%未満」は全体の約9割(同88.7%)だった。
一方、パンやスナック菓子を中心に価格は据え置きながら、内容量を少なくする「内容量変更」(実質値上げ)も99品(同0.9%)あった。

0120値上げ

【値上げ理由別】「原材料の影響」が最多

 1値上げを表明した64社が、リリースなどで公表した値上げの「理由」では、「原材料」が1万34品でトップで、ほぼすべての商品が値上げの理由としている。次いで、「資源・燃料」の9,618品、「資材・包材」が8,799品と続く。
「為替」は2,497品で、理由の5番目に、「人件費」は1,196品で、最下位だった。物価高を背景とした社会的な賃上げ要請も控え、「人件費」は今春以降、値上げの要因になる可能性を残している。

0120値上げ2

【分類別】 加工食品がトップ 冷凍食品、調味料が上位

 価格改定の対象となる1万36品の分類別では、最多が加工食品2,906品(構成比28.9%)で、全体の約3割を占めた。次いで、冷凍食品2,289品(同22.8%)、調味料1,755品(同17.4%)、飲料・酒1,431品(同14.2%)と続く。
加工食品2,906品の内訳では、ハム・ソーセージ974品、練り物・すり身が732品、缶詰等360品の順で多かった。これらは、原材料として使用する肉や魚介類などを輸入に頼る側面が強く、原材料そのものの世界的な需給に加え、為替動向や物流費などのコスト上昇要因が複数ある。

0120値上げ3

 主要食品メーカー121社で、2023年1月以降の出荷・納品分で価格改定を表明した商品は1万36品に及ぶ。月別では、1月は11社・242品にとどまるが、2月は30社・5,142品の価格改定が行われる。
食品の値上げは、スーパーマーケットで季節商品の入れ替えが行われる春(3・4月)や秋(10・11月)に実施することが慣例だ。そのため、メーカー出荷が2・3月に集中しやすい傾向はあるが、4月も2,033品、5月以降も298品の値上げがすでに決定している。
ドル円相場は、2022年10月の150円台をピークに2022年末から上昇し、2023年1月19日終値で1ドル128円と120円台後半で推移している。一部の加工食品メーカー担当者は、為替の影響が輸入材料に本格的に反映されるのが「今年の春以降」とも話し、先行きは不透明な状況だ。小麦製品や魚介類、肉類などの輸入食材をメインに扱う商品は、年内に2度目の値上げも予想され、まだ価格の安定化は遠いようだ。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ