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インボイス制度 全体の登録率が50%超す、個人事業主は23.7%と登録遅れが鮮明に

 2022年12月末のインボイス登録件数は約200万件に達し、法人と個人事業主を合わせた登録率は51.5%と半数を上回った。法人は、登録率が8割を超えたが、12月の月間登録数は前月から20.2%減少し、法人の登録数のピークは超えたようだ。一方、個人事業主は23.7%と低水準が続いている。
国税庁の適格請求書発行事業者サイトの公表データを基に、東京商工リサーチ(TSR)が独自に分析した。登録率は総務省の「経済センサス」の企業数を基に、12月末の登録率を算出した。
2022年12月末の法人登録数は151万7,844件で、登録率は80.8%に達した。ただ、12月の月次登録数(16万8,227件)は7月以来、5カ月ぶりに前月(21万1,075件)を割り込んだ。都道府県別では、法人登録数の最多は東京都の27万9,252件。一方で、最少は鳥取県の5,841件だった。
東京都の登録率は2016年の「経済センサス」に基づく企業数を上回り、102.7%に達した。東京都では年間4万社の新設法人が生まれている。登録率の2位は大阪府で87.7%、3位が千葉県の84.3%と続く。一方、最低は島根県の65.2%、次いで秋田県の65.9%が続く。
個人事業主は12月に月間登録数の最多を更新し、12月末で累計46万9,504件が登録している。だが、登録率は23.7%にとどまる。インボイス制度に登録しない免税事業者もあり、法人に比べ登録率は低くなりがちだが、様々な負担増や手続きの煩雑さなどを嫌い登録に慎重な姿勢を続ける個人事業主が多いとみられる。
2022年12月に閣議決定された「令和5年度税制改正大綱」で、申請期限の3月31日を過ぎても9月30日までの申請は制度開始の10月1日を登録開始日とするなど負担軽減の方針が示された。
12月にTSRが実施したアンケート調査では、インボイス制度に登録しない免税事業者との取引について「取引しない」と回答した企業が10.2%と1割を上回り、さらに増加する恐れがある。登録が遅れる個人事業主は、負担増か取引継続か、残された時間で難しい選択を迫られている。

  • 本調査は、国税庁「適格請求書発行事業者の公表情報」の法人及び個人企業の登録情報(2022年12月末)を基に、TSRが分析した。  法人数は、総務省「平成28年経済センサス」(活動調査・確報集計(企業等に関する集計))に基づく。

 国税庁によると、インボイス登録事業者のうち、2022年12月末の登録数(人格のない社団等2,297件を除く)は198万7,348件だった。
総務省「平成28年経済センサス」に基づく法人数は187万7,438件。法人の登録数は151万7,844件、登録率は80.8%と8割超となった。
個人事業主の数は197万9,019件。登録数は46万9,504件で、登録率は23.7%にとどまっている。
国税庁の2020年度統計年報の課税事業者数は約315万件で、法人約205万件、個人事業主約110万件。課税事業者すべてが登録すると仮定した試算では、法人の登録率は74.0%、個人企業は42.6%と、法人に比べ個人企業は31.4ポイント低かった。

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法人の都道府県別インボイス登録数 東京都がトップ、最少は鳥取県

 2022年12月末の法人登録数や登録率を都道府県別で分析した。法人数は、総務省「平成28年経済センサス」を利用した。
都道府県別の登録数トップは東京都の27万9,252件だった。次いで、大阪府の12万2,576件、愛知県の9万607件、神奈川県の9万38件、埼玉県の7万1,362件、北海道の6万5,002件、千葉県の5万6,350件、福岡県の5万4,956件と社数も多い大都市が上位に入った。
一方、登録数が最少だったのは鳥取県の5,841件。次いで、高知県の7,107件、島根県の7,312件、佐賀県の7,433件、徳島県の8,520件と続く。
2016年時点の企業数を基にした登録率は、東京都が102.7%でトップ。2位は大阪府の87.7%、3位は千葉県の84.3%、4位は福岡県の81.7%、5位は愛知県の81.4%の順。
一方、登録率の最低は、島根県の65.2%で、秋田県の65.9%、長崎県と徳島県の各67.01%、山形県の67.03%、佐賀県の67.6%などが続き、登録率に濃淡が出ている。
※ 国税庁は9月26日、個人情報保護の観点から個人企業の所在地や氏名などをダウンロードデータから削除したため、個人事業主の都道府県別の分析はしていない。

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