• TSRデータインサイト

コモディティ価格変動へのヘッジ(回避)、「かけていない」が97.8% ~「コモディティ取引に関するアンケート」調査 ~

世界的に原油や小麦、貴金属などコモディティ(商品)の値上がりが続いている。
今年3月~5月にコストアップが要因で業績の下振れを開示した上場企業は181社に達し、原材料費の高騰は企業業績にも影響を及ぼしている。
東京商工リサーチ(TSR)が6月1日~9日に実施したアンケート調査では、コモディティ取引に「ヘッジ(回避)をかけている」と回答した企業はわずか2.1%にとどまった。
価格ヘッジの取り組みを業種別でみると、食料品の値上がりが大きい「飲食料品小売業」は12.0%と唯一、1割を超えた。ただ、事業規模や業種により温度差が大きく、対応にも差が出ている。ヘッジをかけた企業のうち、2022年に入って取り組んでいる企業は28.8%(26社)にとどまり、大半の企業はコモディティの価格上昇が深刻になる前から対策を始めていた。
コロナ禍のなかでロシアによるウクライナ侵攻、円安加速など、企業が直面する事業リスクは複雑に絡み合っている。今後、コモディティの値上がり対策のひとつとして、ヘッジ取引は拡大していく可能性もある。

  • 本調査は、2022年6月1日~9日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答5,285社を集計・分析した。
    資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。

Q1.貴社では、商品市況の変動に対応するため、石油、砂糖、貴金属などコモディティの取引にヘッジ(回避)をかけていますか?(択一回答) 

ヘッジを「かけている」は2.1%
 コモディティ取引で、ヘッジ(回避)を「かけている」は2.1%(5,285社中、113社)にとどまった。
 規模別でみると、「かけている」企業は大企業で3.5%(741社中、26社)に対し、中小企業は1.9%(4,544社中、87社)で、2倍近い格差が生じた。
業種別では、「飲食料品小売業」が12.0%(25社中、3社)で、唯一、1割を超えた。

価格転嫁アンケート

Q2.Q1でヘッジ(回避)を「かけている」と回答した方に伺います。ヘッジ取引を始めた時期はいつ頃ですか?(択一回答)

4割が「2年以上前」から
商品価格のヘッジを開始した時期の最多は、「25カ月以上前」の43.3%(90社中、39社)。
一方、商品の値上がりが顕著となった2022年に入ってからの「1~6カ月前」と回答した企業は28.8%(26社)で、3割未満にとどまった。

価格転嫁アンケート

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

建材販売業の倒産 コロナ禍の2倍のハイペース コスト増や在庫の高値掴みで小規模企業に集中

木材や鉄鋼製品などの建材販売業の倒産が、ジワリと増えてきた。2025年1-7月の倒産は93件で、前年同期(75件)から2割(24.0%)増加した。2年連続の増加で、コロナ禍の資金繰り支援策で倒産が抑制された2021-2023年同期に比べると約2倍のハイペースをたどっている。

2

  • TSRデータインサイト

「転勤」で従業員退職、大企業の38.0%が経験 柔軟な転勤制度の導入 全企業の約1割止まり

異動や出向などに伴う「転勤」を理由にした退職を、直近3年で企業の30.1%が経験していることがわかった。大企業では38.0%と異動範囲が全国に及ぶほど高くなっている。

3

  • TSRデータインサイト

女性初の地銀頭取、高知銀行・河合祐子頭取インタビュー ~「外国人材の活用」、「海外販路開拓支援」でアジア諸国との連携を強化~

ことし6月、高知銀行(本店・高知市)の新しい頭取に河合祐子氏が就任した。全国の地方銀行で女性の頭取就任は初めてで、大きな話題となった。 異色のキャリアを経て、高知銀行頭取に就任した河合頭取にインタビューした。

4

  • TSRデータインサイト

ダイヤモンドグループ、複数先への債務不履行~蔑ろにされた「地域イベントの想い」 ~

ライブやフェスティバルなどの企画やチケット販売を手掛けるダイヤモンドグループ(株)(TSRコード:298291827、東京都、以下ダイヤモンドG)の周辺が騒がしい。

5

  • TSRデータインサイト

2025年1-8月の「人手不足」倒産が237件 8月は“賃上げ疲れ“で、「人件費高騰」が2.7倍増

2025年8月の「人手不足」が一因の倒産は22件(前年同月比37.5%増)で、8月では初めて20件台に乗せた。1-8月累計は237件(前年同期比21.5%増)に達し、2024年(1-12月)の292件を上回り、年間で初めて300件台に乗せる勢いで推移している。

TOPへ