• TSRデータインサイト

2022年上半期飲食業倒産、過去20年間で最少 コロナ関連は全体の約6割に上昇

 2022年上半期(1-6月)の飲食業倒産(負債1,000万円以上)は237件(前年同期比28.1%減、前年同期330件)だった。上半期では2021年同期に続く2年連続の減少で、過去20年間で最少になった。
 新型コロナ関連倒産は141件(前年同期比3.4%減)で、構成比は59.4%と前年同期(44.2%)から15.2ポイント上昇した。飲食店倒産が減少するなか、コロナ禍の深刻な影響が次第に顕在化している。
 業種別では、最多が「酒場・ビヤホール(居酒屋)」の61件(前年同期比22.7%減)だった。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が全面解除され、通常営業の店舗も増えてきたが、長引くコロナ禍で新しい生活様式が浸透し、客足が戻らず厳しい状況が続いている。
 資本金別では、個人企業を含む「1千万円未満」が191件(構成比80.5%)、負債額別は、「1億円未満」が199件(同83.9%)といずれも8割を超え、小・零細規模を中心に推移している。
 ただ、資本金「1億円以上」が3年ぶり、負債「50億円以上」が2件(前年同期ゼロ)発生するなど、倒産企業の規模は中堅まで広がっている。
 コロナ関連支援が下支えしながら経済活動の再活性化で通常営業が広がり、倒産は低水準で推移している。しかし、コロナ感染の先行きが不透明ななかでは、コロナ前に戻るには時間が必要だ。人の移動が活発になる夏場の第7波が危惧されるが、小・零細規模を中心に、過剰債務を抱え、業績回復が遅れた飲食業者の息切れ倒産が増勢に転じる可能性も高まっている。

  • 本調査は、日本産業分類の「飲食業」(「食堂,レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場,ビヤホール」「バー,キャバレー,ナイトクラブ」「喫茶店」「その他の飲食店」「持ち帰り飲食サービス業」「宅配飲食サービス業」)の2022年上半期(1-6月)の倒産を集計、分析した。

コロナ関連支援の効果高く、過去20年間で倒産件数最少

 2022年上半期(1-6月)の「飲食業」倒産は237件(前年同期比28.1%減)で、2年連続で前年同期を下回り、上半期では過去20年間で最少を記録した。コロナ禍での各種資金繰り支援の効果に加え、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の解除で通常営業が広がり、飲食業倒産は低水準で推移した。
 ただ、飲食業倒産に占める新型コロナ関連倒産は約6割(59.4%)を占め、業況が厳しい企業との二極化が拡大してきた。新型コロナの新規感染者数は、6月後半から再拡大の傾向を見せ始めており、飲食業界が落ち着いて次の展開に歩み出すにはまだ時間を要しそうだ。

飲食業

業種別 最多は居酒屋61件

 業種別の最多は、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」の61件(前年同期比22.7%減)。次いで、「食堂,レストラン」51件(同1.9%減)、「専門料理店」47件(同48.3%減)。
 業種別の件数で、居酒屋がトップになるのは過去20年間で初めて。
 コロナ関連倒産の構成比では、食べ歩きや行楽需要の減少などが影響した「持ち帰り飲食サービス業」が75.0%(コロナ関連倒産6件)で最も多かった。以下、「専門料理店」72.3%(同34件)、「バー,キャバレー,ナイトクラブ」64.2%(同9件)の順。
 飲食店の営業制限は解除されたが、長引くコロナ禍や消費者の生活様式の変化は思いのほか根付き、客足に影響しているようだ。

飲食業

資本金別 「1億円以上」が3年ぶりに発生

 資本金別では、個人企業を含む「1千万円未満」が191件(前年同期比33.6%減)で、飲食業倒産の80.5%を占めた。一方、「1億円以上」は2019年同期以来、3年ぶりに発生した。
 負債額別は、「1億円未満」が199件(構成比83.9%)で、前年同期から30.9%減と大幅に減少した。また、「50億円以上」が2件(前年同期ゼロ)発生した。
 資本金・負債ともに小・零細規模の事業者が主体だが、中堅規模での増加の兆しも出始めた。

都道府県別 増加10、減少29、同数8

 都道府県別では、増加が10府県、減少が29都道府県、同数が8県。
 増加は宮城(1→5件)、山形(1→3件)、新潟(4→6件)、長野(4→5件)、三重(0→5件)、京都(11→15件)、奈良(2→5件)、岡山(ゼロ→4件)、徳島(1→2件)、香川(1→2件)。
 一方、東京(47→46件)、愛知(19→10件)、大阪(57→29件)、広島(8→4件)、福岡(19→11件)など都市部では減少が目立った。
 地区別では、唯一、東北10件(前年同期比42.8%増)が増加した。減少は北海道7件(同22.2%減)、関東84件(同17.6%減)、中部29件(同17.1%減)、北陸5件(同66.6%減)、近畿66件(同37.1%減)、中国13件(同38.0%減)、九州18件(同41.9%減)の7地区。四国は前年同期と同件数の5件だった。

飲食業

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ