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調剤薬局の「クラフト」、事業再生ADRを申請

 クラフト(株)(TSR企業コード:298239329、法人番号:8010001129202、千代田区丸の内1-1-1、設立2009(平成21)年12月7日、資本金100万円、代表取締役:森要氏ほか)ほか8社は2月28日、事業再生実務家協会に事業再生ADR(裁判外紛争解決手続)を申請した。
 事業再生ADRは民事再生法など法的手続きによらない再生手続き。通常、金融債務のみを対象とし商取引債務は対象外だが、原則、全対象債権者の合意が必要で、合意を得られなければ法的手続きに移行する可能性もある。
 クラフトは、さくら薬局グループの中核企業で、2020年3月期には売上高約1937億円をあげている。調剤薬局「さくら薬局」は、全国1002店舗(直営店618店舗)の規模を誇る。
 同時に事業再生ADRを申請したクラフト本社(株)(旧:クラフト(株)、TSR企業コード:292905980、法人番号:9010001015153、同所、設立1960(昭和35)年3月12日、資本金1億円、同代表)は、1995年4月に店頭市場に株式を公開、2004年12月にはJASDAQに上場した。その後、積極的な出店政策を進めるため、2008年4月、グループの持株会社のクラフトホールディングス(株)(旧:クラフトフィナンシャルホールディングス(株)、TSR企業コード:297264940、法人番号:4010001113762、同所、設立2007(平成19)年11月19日、資本金1億円、同代表)のMBO(経営陣が自社の株式や一部の事業部門を買収して独立)により、上場を廃止した。
 上場廃止後の2010年3月期より主力事業を引き継いだクラフトは、中小の調剤薬局メーカーへの積極的なM&A戦略を展開。グループの店舗数を270店(2007年12月時点)から1000店超まで急拡大し、業界第3位に位置付けられるまで業容を拡大させた。しかし、M&A資金など旺盛な資金需要に対応するため50行超の金融機関から約500億円を調達し、借入の返済負担が経営の重荷となっていた。また、「新型コロナウイルス」感染拡大で、医療機関への通院が減少し、調剤報酬が大幅に落ち込み、資金繰りが悪化。リファイナンスの調整も難航し、クラフトはグループほか8社とともに、事業再生ADRを申請した。
 クラフトは金融機関に対し債権カットは求めず、今後の返済額や期間の変更を求めるとみられる。第1回債権者会議は3月24日の予定。
 クラフト、クラフト本社、クラフトホールディングスのほか、同時に事業再生ADRを申請した6社は以下の通り。
 クラシス(株)(TSR企業コード:294276564、法人番号:9010001015137、千代田区神田駿河台2-2、設立1996(平成8)年9月5日、資本金5000万円)
 ハルカ合同会社(TSR企業コード:027363600、法人番号:5010403018055、港区虎ノ門3-22-10、設立2018(平成30)年2月2日、資本金1万円)
 合同会社みさき(TSR企業コード:130543225、法人番号:2010403020253、港区虎ノ門3-22-10、設立2019(平成31)年2月21日、資本金1万円)
 (株)万葉(TSR企業コード:298275830、法人番号:3010801020127、品川区東五反田5-28-10、設立2010(平成22)年1月12日、資本金5000万円)
 アドバンス(株)(TSR企業コード:910210578、法人番号:6330001015859 、熊本県人吉市土手町37、設立1986(昭和61)年1月24日、資本金1000万円)
 (有)すみれ薬局(TSR企業コード:322340349、法人番号:9040002078378 、千葉県大網白里市みやこ野2-1-7、設立1996(平成8)年4月18日、資本金500万円)

クラフト

‌クラフトグループが展開する店舗(TSR撮影)

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