• TSRデータインサイト

会社更生のイセ食品、とん挫した事業承継と「数百億円の美術品」

 イセ食品(株)(TSR企業コード:311024971、千代田区)と、関連のイセ(株)(TSR企業コード:590002805、富山県高岡市)の会社更生に至る舞台裏が次第に明らかになってきた。
 株主と金融機関が会社更生を申し立てる異例の展開は、私的整理の枠組みを反故にし続けたグループオーナーへの不信が背景にあった。
 東京商工リサーチ(TSR)が関係者への取材や閲覧した資料によると、イセ食品グループは、関連会社へ資金融通や過大投資、高額な美術品への資金投下のほか、不適切な人員配置などでガバナンスが機能せず、生産性の低下が著しかった。また、グループオーナーが事実上支配するイセ食品グループ外の企業が買収した先を巡り、金融機関との関係も悪化していた。
 高額な美術品への資金投下を続けた結果、イセ食品グループの法人が所有する美術品は、イセ食品グループの2021年度経営改善計画書によると、「パブロ・ピカソ」、「ポール・セザンヌ」、「マルク・シャガール」などの西洋絵画を中心に約80億円、中国陶磁器などの購入もあり総額約120億円に及ぶ。
 一方で、イセ食品グループは2020年3月、約50行の金融機関へリスケ要請など私的整理を要請した。交渉した関係者によると、2021年3月末までにグループオーナーの後継者を決めて事業承継することや、オーナーへの貸付金の弁済などが私的整理の枠組みに盛り込まれ、2020年9月に全行が同意。これにより、2021年7月まで金融債務の返済が猶予された。
 しかし、グループオーナーは、この枠組みの実行に非協力的で、事業承継は進まなかった。また、美術品も所有形態を巡り、金融機関との関係が悪化。猶予期限の2021年7月を過ぎても、約定を履行できない状態に陥った。
 2022年に入ると、卵価の下落や飼料高騰などでイセ食品グループの資金繰りがさらに悪化。ノンバンクから高利資金を調達したほか、金融機関の同意を得ないまま、グループ会社の事業譲渡などを進め、従業員の離職も止まらなかったようだ。
 このため、グループオーナーの子息(現在はイセ食品グループと資本関係のない企業の代表者)や金融機関は経営体制の抜本的な見直しが不可欠と考え、3月11日に会社更生法の適用を申し立てるに至った。
 イセ食品グループは、3月末までの開始決定を目指し、すでに興味を持ったスポンサーが何社か現れている。
 鶏卵生産量トップメーカーの唐突の破たん劇は、過度なオーナー依存のガバナンス不全が引き起こした。事業再生への険しい道のりを乗り越えられるか、経営陣と金融機関の力量も問われている。

事業承継も会社更生の一因となった「イセ食品」

事業承継も会社更生の一因となった「イセ食品」(TSR撮影)

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

政策金利引き上げ 「1年は現状維持」が59.6% すでに「上昇」が52.0%、借入金利は上昇局面に

企業の59.6%が、これ以上の政策金利の引き上げに「待った!」を希望していることがわかった。今後の望ましい政策金利の引き上げ時期は、「向こう1年は現状維持」が59.6%で最多だった。「引き下げ」も23.6%あり、企業経営の観点では利上げを望む声は少数(16.6%)にとどまった。

2

  • TSRデータインサイト

中小企業の12.2%が事業資金を個人名義で調達 保証債務に上乗せ負担、債務整理や廃業を複雑に

事業資金を代表者名義で調達したことのある中小企業は12.2%に達することがわかった。政府や金融界は「経営者保証ガイドライン」(適用開始2014年2月)や「事業再生ガイドライン」(同2022年4月)などを通じ、企業が抱える債務を整理する際に個人保証が足かせにならないよう取り組んでいる。

3

  • TSRデータインサイト

2025年「早期・希望退職募集」は 1万7,875人 、リーマン・ショック以降で3番目の高水準に

2025年の「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は43社(前年57社)で、募集人数は1万7,875人(同78.5%増)に達したことがわかった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年7-9月の客室単価 1万6,975円 稼働率80%超え 人手不足の解消が課題

ホテル運営の上場12社(13ブランド)の2025年7-9月期の平均客室単価は、1万6,975円(前年同期比8.9%増)で前年同期を上回った。7-9月期で、13ブランドの平均が前年を上回るのは3年連続。平均稼働率は83.9%で前年同期を2.9ポイント上回り、 稼働率も3年連続で上昇している。

5

  • TSRデータインサイト

【最新決算】 私立大学、半数以上が赤字に転落 売上高トップは順天堂、利益トップは帝京大学

全国の私立大学を経営する545法人のうち、半数を超える287法人が直近の2025年3月期決算で赤字だったことがわかった。  

TOPへ