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仕入先の8割が中小企業、「マレリグループ国内取引状況」調査

 2月15日、自動車部品大手のマレリ(株)(TSR企業コード:291139833、法人番号: 8030001014831、さいたま市北区)が私的整理に向け金融機関に支援要請したことがわかった。マレリは取引先に対し、取引の継続を要請し事態の沈静化を進めている。
 マレリグループの1次(直接)仕入先は471社で、このうち377社(構成比80.0%)が資本金1億円未満の中小企業だった。2次(間接)取引先を含めた仕入先総数は2545社(重複除く)に及ぶ。
 支援に向けた金融機関の同意を得られない場合、事業再生ADRに基づく私的整理は難しくなる。その場合、スポンサー主導の再建か法的手続きが選択肢に入るが、法的手続きの場合は全国の取引企業に連鎖倒産が広がることも懸念される。

 マレリは新型コロナ感染拡大の影響で、半導体不足や輸送費の高騰を受け、資金繰りが悪化していた。約30行ある金融機関に支援を要請し、一般取引先への影響が少ない事業再生ADRを目指し、すでに金融機関への説明を進めている。だが、融資先には中国や台湾などアジアの金融機関や国内の生命保険会社もあり、調整が難航する可能性もある。
 マレリグループの1次仕入先471社のうち、製造業が296社(構成比62.8%)と6割を占め、自動車部品・附属品製造業62社など下請け企業が多い。
 また、従業員500名以上は45社(同9.5%)、資本金1億円以上は94社(同19.9%)にとどまり、従業員10名未満の零細企業は114社(同24.2%)あった。
 取引先の都道府県別では、最多は東京都の110社で、日産自動車の本社がある神奈川県は102社、本社地の埼玉県は61社と続く。グループ会社のある福島県は16社、大分県は26社だった。

  • 本調査は企業情報サービス(tsr-van2)の企業相関図から、マレリおよび同社グループの主要な仕入先、 販売先とする企業を1次(直接取引)、2次(間接取引)を抽出し(重複除く)、業種、地区、規模などを抽出、分析した。
    対象は、マレリのホームページに掲載のマレリ含む日本のグループ会社9社と、持株会社のマレリホールディングス(株)(TSR企業コード:022746064、法人番号:7010001178910、さいたま市北区)の10社。
    1次取引先は直接取引のある取引先、2次取引先は1次取引先と取引のある間接取引企業を示す。

マレリ

‌マレリの本社(TSR撮影)

 マレリの持株会社であるマレリホールディングスは、2020年12月末で1兆1707億9300万円の資金を調達し、マレリはその一部を債務保証しているようだ。このため、マレリの資金繰り悪化はグループ全体に影響を及ぼすことになる。
 マレリは事業再生ADRによる私的整理を目指し、すでに取引金融機関に説明を始めている。しかし、マレリグループは一部の資金管理をイタリアなどの海外で行い、取引金融機関は中国や韓国など海外にも広がる。
 事業再生ADRの全行一致の成立は容易でないとの指摘もあるが、会社更生法や民事再生法など法的手続きに移行すると、マレリグループの取引先の8割を占める中小企業も債権カットの影響が及ぶ。マレリは取引先の動揺を抑えるためにも、積極的な情報発信が必要だろう。
 EV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド自動車)など自動車業界は歴史的な転換期を迎えている。マレリ再建への道は、部品メーカーの生き残り策の試金石になるかも知れない。

マレリ

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