• TSRデータインサイト

金融庁、事業成長担保権「論点整理2.0」を公表

 11月30日、金融庁は「事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会・論点整理2.0」を公表した。2020年12月の1回目の「論点整理」後、事業者やVC(ベンチャーキャピタル)、金融機関などから寄せられた意見を踏まえ、12月7日に行われる法制審議会での議論に向け「論点整理」を改訂する形で作成された。  「論点整理2.0」では、企業の成長・事業承継・再生局面を想定し、具体的な制度の検討にも踏み込んだ。

記者向けブリーフィングで、金融庁は具体的な制度設計上、重要になる点を3つあげた。

・「事業者が、事業の継続や成長に必要な資金を調達できるよう、特定の金融機関が優先的に弁済を受けられる対象を個々の財産の清算価値ではなく、事業全体の継続価値とする設計とすること」
現状の担保制度ではコストやリスクに対し、支援する金融機関へのリターンが少ない点を指摘した。

・「事業者が、事業の継続や成長に必要な取引や労働サービス等を得られるよう、商取引先や労働者等が売買代金債権や賃金債権等の支払いを優先的に受けられる設計とすること」
他の債権者の意見とは無関係に実行できる不動産担保と違い、事業成長担保権では全債権者や様々なステークホルダーに配慮することになる。担保実行手続きと倒産手続きの両方の性質を持つことを踏まえ、その位置づけもカギになるとした。
しかし、商取引債権のみを優先し過ぎると事業成長担保権の利点が薄れ、商取引債権などの保護範囲が狭すぎると事業価値が毀損するので、両者のバランスも重要だと述べた。

・「事業者が、事業の継続や成長を妨げられることのないよう、担保制度一般に内在する濫用のおそれや人的担保たる個人保証の課題等を踏まえた特別の手当てを備えること」
事業者保護のためにも、民法ではなく特別法の形式を採ることで、特定の金融機関のみが事業成長担保権を行使できるようにするといった方針も考えられるとの認識を示した。


ただし、前回の論点整理と同様、事業成長担保権が従来の不動産担保などを否定するものではないことを強調し、不動産担保については現状の実務を維持し、現場を混乱させない配慮も必要であるとした。

また、破産や民事再生法などの倒産手続きの際の事業成長担保権の扱いにも触れ、今は担保権者が強い権利を持つが、それでは事業価値との間にズレが生じてしまう。事業成長担保権では、事業自体の価値が担保となるため、倒産手続き中であっても金融機関などは事業価値を高めるよう支援を継続することが考えられ、事業再生において重要となるニューマネーの供給(DIPファイナンス)に対して特別な担保権(Priming Lien)を設けるべきではないかとの意見も紹介した。

金融庁は、事業成長担保権についての今後のスケジュールは未定だが、海外における同様の法制について調査している最中であり、引き続きディスカッションなどを継続し、制度を具体化していきたいと早期の法制化に意欲をみせた。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年12月2日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ゴールデンウィーク明け、「退職代行サービス」の利用は慎重に

長かったゴールデンウィークが終わる。職場「復帰」を前に例年4月の新年度からGW明けにかけ、退職する人の話題が持ち上がる。この時期の退職代行サービスの利用も増加するという。4月に実施した「退職代行に関する企業向けアンケート調査」から利用するリスクの一端が浮き彫りになった

2

  • TSRデータインサイト

トーシンホールディングスの「信用調査報告書」

5月8日に東京地裁に会社更生法の適用を申請した(株)トーシンホールディングス(TSRコード:400797887、名古屋市、東証スタンダード)を取り上げる。

3

  • TSRデータインサイト

2025年度「医療・福祉事業」倒産、過去最多 ~ 健康と生活を支援する事業者の倒産急増 ~

生活に不可欠な医療機関や介護事業者の倒産が急増している。バブル経済1988年度(4-3月)以降の38年間で、2025年度は金融危機、リーマン・ショックを超える478件と最多を記録した。

4

  • TSRデータインサイト

2026年4月「人手不足」倒産 33件発生 春闘の季節で唯一、「人件費高騰」が増加

2026年4月の「人手不足」倒産は33件(前年同月比8.3%減)で、3カ月ぶりに前年同月を下回った。 4月の減少は2022年以来、4年ぶり。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度の「早期・希望退職」 は2万781人 約7割が「黒字リストラ」、2009年度以降で4番目の高水準

2025年度に「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は46社(前年度51社)で、人数は2万781人と前年度(8,326人)の約2.5倍に急増したことがわかった。社数は前年度から約1割(9.8%減)減少したが、募集人数は2009年度以降で4番目の高水準となった。

TOPへ