• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

オーケー社長、関西スーパーへのTOB 成功した場合も「屋号変えない」 オーケー・二宮社長 単独インタビュー(後編) 

―H2Oとの統合案が可決された場合の対応は。理論株価の整合性も含めてどう考えればいいのか

 可決となったら、可決に至るまでにどういった投票行動があったか、という経緯が重要だと思う。また、株価がどう動くかという部分も注視したい。
 むしろそこで、市場としての冷徹な判断が下される可能性もある。可決となった場合、関西スーパー、H2Oそれぞれが、責任をしっかり背負われていくのではないか。我々も質問状で提示しているが、今回のTOB価格2250円を選択せず、理論株価の方が優位であるとして意思決定をした経営陣は、経営統合後、直接子会社の方の取締役になられて、経営陣は刷新されてしまう。新たな経営陣の方が理論株価の前提となる事業計画にコミットしていくのか、株主としては重要なポイントとなる。

―TOBが成功した場合の雇用は

 関西スーパーとオーケーは別会社なので、現状を変えるつもりはない。当然、特別委員会の中で「何年で(給与体系を)変えるのか」という質問も寄せられたが、そもそも経営陣と協議できていない。
 H2Oには経営陣同士協議してデューデリジェンスまで行っている一方、こちらにはH2Oの提案がある事実も伏せられ、人事制度についても詳しく教えていただけていない状態で、いきなり何年だと言われても返しようがない。こちらははっきりと、不利益な変更をする方針はない、ということをお伝えした。重要なことは、お客様にもっとご支持いただけるか、ということなので、人事政策についてとやかく言うとか、従業員の方々のモチベーションを下げるようなことは一切しないと申し上げた。

オーケー二宮社長(後編)

インタビューに応じる二宮社長

―屋号については

 そのままだ。「屋号を変えません」と私は最初から言い切っている。オーケーの看板には“高品質・Everyday Low Price”の文言が付いている。協議の上で売価政策が変われば、この文言を併記したい旨はお伝えした。関西スーパーの屋号を維持することは明確にしている。書面でも最初から示している。

―今夏、ドラッグストア事業を開始した

 ワンストップで、ドラッグストアのサービスをお客さんにご提供できればと今年8月、自前でオーケー調剤薬局を(横浜市)港北の店舗に開設した。医薬と、まだ全店で展開できていないがOTC(カウンター越し)の部分を強化していく。非食品商品の拡充を図る。
 まだ、スーパーマーケットで調剤をもっているところはない。食品はもちろん、非食品と薬品を含めて処方箋付きの調剤薬局も全部揃うのは、お客様にとっても便利だろう、と。

―これまでは調剤もクリニック前の門前薬局が主流だった

 普段買い物に行くスーパーマーケットに薬局があれば、かかりつけ薬局のロケーションとしては相応しいのではないか。処方箋を渡してもらった間に、店内で買い物ができる。お客様にとっても便利な取り組みと思う。
 港北店は、病院の門前薬局ではなく、かなり広い地域から処方箋を持ってきていただいている。薬局としても、かなり時間をかけながら認知を得てベースを広げていかなくてはならないが、立ち上がりとしては好感触を得ている。順次、調剤の機能を持たせたドラッグストアを増やしていきたい。

―コロナ禍での消費動向に変化は?

 2020年の3月~5月は、ちょうど新型コロナ感染拡大で、社会も1回目の緊急事態宣言前後が大変だった。ただ、1回目の宣言時に「スーパーマーケットは休業しない」ことが分かり、そこで(混雑は)落ちついた。一方で、買い物の頻度を減らそうと、延べの客数は減って、1回当たりの単価が上がった。

―その後は

 秋口から、Go Toトラベルの影響で秋にひと段落した瞬間があった。今年の上期は、結局「こんなにお客様がいらっしゃるのか」とびっくりした昨年の上期並みの規模だった。そういう意味では、引き続きコロナの影響は今年の上期も残ったと言える。

―緊急事態宣言が全国で解除された。スーパーマーケット業界への影響は

 緊急事態宣言中は、旅行に行けない、さらに居酒屋のようなところの長時間の利用も難しい、という状況で“プチ贅沢消費”のようなものがスーパーマーケット中であったのは事実だ。ただ、アフターコロナの消費は(スーパーマーケット以外の)他の方向に行くだろう。
 一方で、コロナで経済的にご苦労、ご負担が増えた方も当然いらっしゃる。 コロナがなくても、以前からの人口減少、少子高齢化、ECとの競争激化などで、スーパー他マーケット業界はさらに競争が厳しくなるだろう。だからこそ、オーケーがもっと多くのお客様にご支持いただけるよう努力しなければならない。

 突如として沸いた関西スーパーを巡るオーケー、H2Oの買収争奪戦。数年前からアプローチしていたオーケーが、6割のプレミアムを乗せ、TOBを提案した。そこにホワイトナイト的に現れたH2O、という構図で受け止められた。
 だが、9月24日に関西スーパーが発表した「見解」文書は、精緻な分析がなされたとは必ずしも言えない内容だった。「見解」文書では、関西スーパーとオーケー双方の雇用状況について、従業員の勤続年数を比較し、関西スーパーの18.7年に比べ、オーケーは7.2年との数字から「従業員の定着率の向上等の優先度が落ちる可能性もある」と言及する。
 だが、年数店のペースで出店し、従業員が増えているオーケーと、2011年以降の10年間で5店舗の増加にとどまる関西スーパーでは、勤続平均年数は当然違う。
 さらに、H2O傘下入り後、イズミヤは、2019年度に大規模のリストラを実施している。関西スーパーは、先述の「見解」文書にこれを織り込まず、H2Oによる人事施策がオーケーと比較し、「基本的な方針を共通にする」と表現し、自社のステークホルダーに開示している。
 買収判断の参考資料には、客観性が求められる。関西スーパーの争奪戦は、双方のより丁寧な説明とアナウンスが必要だろう。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年10月15日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「最低賃金」改定で、51.3%の企業が「給与変更」 2020年代の1,500円 「対応不可能」が4割切る

厚生労働省は9月3日、2026年度の全国の最低賃金額(平均)を1,177円(56円増)に引き上げた。 1978年度に目安制度が始まって以降、平均引き上げ額56円は前年度に続き2番目の高さで、これを受けて給与改定を迫られる企業が半数に達することがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

1-9月「医療機関」倒産 過去最多の59件 身近なクリニック、歯科医院で苦境が鮮明

医療機関の倒産が再び勢いを増している。2026年1月-9月に倒産した病院・クリニック(診療所)・歯科医院などの「医療機関」は59件(前年同期比28.2%増)と、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

「税金滞納」倒産が168件、前年同期の2倍に大幅増 2026年度上半期の「税金滞納」倒産 破産が97.6%

2026年度上半期(4-9月)の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は、168件(前年同期比100.0%増)と、前年同期の2倍に達し、この10年で最多を記録した。物価や人件費などのコストアップが企業収益を圧迫し、納税原資を確保できない小・零細企業の行き詰まりに拍車を掛けている。

4

  • TSRデータインサイト

「社会保険の適用拡大」 中小・零細企業ほど負担増 企業の44.9%が「働き控え」懸念、「未対応」も半数

2026年10月から非正規従業員にも社会保険の適用が拡大された。「月収8万8,000円以上」の賃金要件が撤廃され給与額に関わらず条件を満たす社員は、新たに厚生年金や健康保険の加入対象となる。10月1~8日企業を対象に「社会保険適用の基準変更」に関するアンケート調査を実施した。

5

  • TSRデータインサイト

2026年1-9月「デイサービス」倒産47件 同期間で過去最多、介護業界の苦境鮮明

デイサービスなど「通所・短期入所介護事業」の倒産が増加している。2026年は9月までに47件(前年同期比34.2%増)と大幅に増加し、1-9月で過去最多を更新した。多様化するサービスなど、他社との競争が激化するほか、物価高に人手不足も重なり、苦境が深まっている。

TOPへ