第3回「東京五輪・パラリンピックに関するアンケート」調査~6割以上の企業が「中止」「延期」を望む~
東京五輪・パラリンピックの開催予定日(7月23日開会)まで40日を切った。4月末に発令された3度目の緊急事態宣言は1カ月半を経過したが、東京都を含む10都道府県はまだ宣言解除に至らず、国内の開催ムードはいま一つの状況が続く。
東京商工リサーチは6月1日~9日に、企業を対象に「東京五輪・パラリンピックに関するアンケート調査」を実施した。無観客を含めた「予定通りの開催」は35.9%にとどまり、前回調査(2021年2月1日~2月8日)の43.8%から7.9ポイント下落した。
一方、「中止」と「開催延期」は合計64.0%で、前回調査(55.9%)を8.1ポイント上回った。
国内のワクチン接種は徐々に広がりを見せるが、都市部を中心に多くの地域での対象は高齢者が中心で、2回目の接種率は1.73%(6月13日現在)にとどまる。こうした社会情勢も反映し、6割以上の企業が東京五輪・パラリンピックの予定通りの開催に懐疑的な見方を示している。
- ※本調査は2021年6月1日~6月9日にインターネットによるアンケート調査を実施。有効回答9163社を集計し、分析した。
調査は2020年7月28日~8月11日(公表2020年8月20日)、2021年2月1日~2月8日(公表2月15日)に続いて3回目。
2021年の東京五輪・パラリンピックの開催で望ましい形はどれですか?(択一回答)
「中止・延期」が64.0%
東京五輪・パラリンピック開催の望ましい形[択一解答]では、最多は「予定通り開催」(2021年7月開催)の35.9%(9163社中、3297社)だった。次いで「中止」が34.7%(3181社)で拮抗し、「延期して開催」が29.3%(2685社)と続く。「中止」と「開催延期」を合計すると64.0%が2021年7月開催に否定的な見方を示した。
「中止」「延期」は前回調査(2021年2月)から8.1ポイント上昇し、今夏の開催を不安視する回答が増えた。企業規模別では、大企業(資本金1億円以上)は予定通りの開催が38.1%だったのに対し、中小企業(資本金1億円未満、個人企業など)は35.6%で、大企業が2.5ポイント上回った。

「延期して開催」、「中止」と回答された方に伺います。理由は何ですか?(複数回答)
「国内ワクチン接種率」「感染拡大懸念」がともに7割以上
「開催延期」「中止」と回答した理由[複数回答]では、最多は「国内のワクチン接種率が低い」で76.2%(4469社)。次いで「大会関係者の来日で感染拡大を懸念」の75.7%(4436社)で、ともに7割を超えた。国内の感染防止対策に不透明感が漂うなかでの開催を懸念する見方が強かった。
また、「大会に医療従事者が充当され一般の医療がひっ迫する」も63.6%(3729社)と6割を超えた。大会期間中、感染者が増加した際の対応策について不安視する回答も少なくなかった。

東京五輪・パラリンピックが中止や無観客での実施、延期となった場合、経営にどのような影響があるか?(複数回答)
「悪い影響が多い」が約6割
中止や無観客となった場合の経営への影響[択一解答]を聞いた。4092社から回答を得た。
最多は「悪い影響が多い」の58.7%(2405社)で6割近くを占めた。一方、「良い影響が多い」も41.2%(1687社)と4割を超えた、大企業では「良い影響が多い」は37.6%(221社)と4割を切り、中小企業の41.8%(1466社)と4.2ポイントの差がついた。

東京五輪・パラリンピック開催が間近に迫り、6月15日には国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ調整委員長ら大会関係者が来日した。開催への歓迎ムードが盛り上がりに欠けるなか、開催地・東京の現在を目の当たりにしてIOC役員らが五輪開催に向け、今後どのようなメッセージを発信するか注目される。
アンケート結果では無観客開催・中止となった場合、約6割の企業が「悪い影響が多い」との見方を示している。開会まで40日を切ったが、開催の可否による企業業績への影響も懸念されるなか「予定通りの開催」を望む声が4割に満たなかった。予定通りの開催を望む声が4割に満たないのは、開催期間中の感染拡大や医療体制のひっ迫、それに伴う大会終了後の景況感の悪化への不安が強いことの表れともいえる。
東京都の感染者数は直近の週平均で一日300人を超えるなか、予定通りの開催への不安を残り1カ月で払拭できるか、明確な説明が必要だろう。
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