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ミレニアム債権回収・検本社長 独占インタビュー(後編)必要なところに寄り添い汗をかくのが事業再生

-不良債権に対する金融機関の動向は

 公的なコロナ融資は、政策的な支援だが、負債という形でバランスシートに載ることには変わりはない。今後は銀行の融資が不良債権化するよりも、公的融資が不良債権化する局面がでてくる。今はそういう局面でのサービシングを研究している。
公的コロナ融資は38兆円。飲食業や旅行業にもでている。絶対にすべては返せない。ただ、これは赤字運転資金ではなく、別に企業が悪くて出たわけではない。
保証協会は私的整理ガイドラインに乗った案件以外は債務免除しないが、それも今後は変化していくのではないか。

検本社長

インタビューに応じる検本社長

-公的コロナ融資や保証協会、政策公庫の不良債権の扱いは

 銀行から出ている不良債権は、公的コロナ融資のものでも扱えるが取り扱いには注意が必要だ。保証協会や政策公庫などの不良債権は、現状では協会や公庫が売らないので買えない。特に保証協会付は、債権を売ってしまうと保険を使えず、補填を受けられないので売れないという事情がある。

-御社の強みは

 我々はミレニアムホールディングスとして、サービサーからアセットコンサルティングを含む様々な事業コンサルや他の不動産関連事業、キャピタルマネージメントでのSPCや投資家の資金管理など、ワンストップサービスを提供している。弁護士法の特例として、サービサーは基本的に債権管理回収業務だけしかできないので、グループ全体で不良債権問題の解決のためにワンストップでサービスできることが強みだ。
さらに、今後は世界の投資マネーのアレンジを行うペッパー・グループとのハイブリッドで、グローバルな債権管理回収、買取もできるようになる。ペッパー・グループは投資ファンドのように自分たちのファンドのためだけでなく、広い視野でマーケットを捉えているので、それを活かした活動もできるだろう。
資金ニーズがあれば、他のサービサーにも応えていきたい。なかでも、他のファンドやサービサーの手伝いはやろうと思っていて、何社かとは共同投資の話も進めている。ファンドに対しても、こちらでサービシングをやりますよという声かけをしている。
また、ペッパー・グループでノンバンクの買収や設立をしてレンディングのビジネスに取り組む。そこにミレニアムグループの機能を融合させ、ペッパー・グループが他の国でもやっているような金融グループに成長させていく構想もある。
ペッパー・グループは自身も投資家であり、一般投資家からも資金を集めることができるので、ゆくゆくは事業再生ファンドを設立したいとも考えている。
地銀では再生の難しい取引先を再生させるようなファンドを設立して、そのファンドを通じて債権をサービシングし、事業再生の手伝いをする。ニーズにもよるが、イメージとしては、数十億円から数百億円規模のファンドになるのではないか。また、各金融機関から債権を買ってく れというケースもあるだろう。
まだ構想段階だが、もう少し取引の間口が広がっていけば、そういう形もありえる。それが中期的な目標だ。

-サービサーの数はどうなっていくか

 新規のサービサーは少しずつだが新たに設立されている。今後、不良債権は増えるとみているので、それを扱うサービサーの数もさらに増えてくるのではないか。
新規のサービサーとしては、オンラインレンディング向けのみで人を使わず、オートコールとショートメールで初期延滞までにだけ対応する革新的な会社や、地銀同士の業務提携によって設立されるなど、今までとは違ったアプローチでの会社なども出てきた。

-ミレニアムのポジション、施策は

 現在のサービサーは金融機関、大手ノンバンクの系列が多く、独立系は少ない。その中の一つとして、存在感はあると思っている。金融機関に対する不良債権買取やオファーを積極的に行っているサービサーは、現在数は多くない。
当社は外資という側面もあるが、全員が金融機関の出身なので、日本の銀行の考え方をよくわかっているとも思っている。だから、なるべく外資色を出さず、日本の金融機関の実情をよくわかっている独立系のサービサーとしてやっていきたい。
当社としては、ペッパー・グループに入ったことで、第二の創業期に入ったというイメージだ。今後はこれまで以上に広範囲な事業展開をしていく。ペッパー・グループ傘下となったことで、投資のための資金ができるなど、事業再生に必要な要素が加わり、これまで以上にいろいろなことをポストコロナを見据えてやっていけるようになった。

-事業再生について

 当社自体も20年間回収の現場を踏んでいて、事業再生もかなりやってきている。例えばゴルフ場の法的再生、メーカーの事業再生などもやっているし、ノウハウはある。ペッパー・グループ傘下となったことで、その潜在能力がさらに引き出せるようになった。

-事業再生のターゲットは

 必要なところに寄り添い汗をかくのが事業再生。儲けようとだけ思ってやるわけではなく、経済の活性化、再生のためにやる。なので、やるとしたら今一番困っている業種。飲食、宿泊、観光や旅行業などを中心に、今回のコロナで負ってしまった過剰債務を処理して、本来の姿に戻す手伝いをしたい。

 コロナ関連融資に伴う過剰債務の問題が浮上し、不良債権市場の拡大が予想されている。
国内だけでなく、外資系サービサーも日本の不良債権市場へ関心を寄せており、ペッパー・グループ傘下となったミレニアム債権回収は新しい展開を進めている。
同社は新たに、ポストコロナに向けた事業再生分野への意欲も見せる。
コロナ禍の過剰債務解消や事業再生の一手として、今後はサービサーや再生ファンドの動きからも目が離せない。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年5月12日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

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