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来年度の新卒採用「大変厳しい状況」 はとバス・塩見社長 独占インタビュー(後編)

-昨年、埼玉のバス会社が民事再生法を申請した

 “無利子無担保”のような有利な融資制度があればいいが、要望はしているものの、なかなか実現は難しい。訴えたいのは、まず、バスをはじめ観光によってどれだけの感染拡大の影響があるかという明確なデータ、そして「どの程度の観光」であれば感染リスクを抑制して実現が可能なのかという指針を示してほしいということだ。観光することが一番の悪影響なのか。
 地方の人の中には、一部で“東京が怖い”というマインドが芽生えているだろうし、“観光自体が怖い”という人も少なくないだろう。こういうマインドが解けない限り、この状況は長引く可能性がある。

-夏には東京オリンピック・パラリンピックを控えている

 大会関係者は基本的に公共交通機関の使用が不可であるので、今のところ私どもは審判ら大会関係者の輸送を担うと思われる。他社も同様だ。ただ、密を避けるために、どの程度乗客の間隔をもって輸送するかは、まだ決まっていない。場合によってはかなりの数のバスを稼働させる必要が出てくる。

はとバス2021の2

‌はとバスが今春導入した「オープントップバス」(はとバス提供)

-安定したバスの供給が求められる

 ただ、この間、コロナ禍でいくつかバス会社が廃業や事業を停止している。さらに、運転士がもうバスの仕事から離れてしまっており、期間中に必要な台数を確保することが困難になる可能性はある。
 はとバスは平和島に車庫があるため、待機時の駐車スペースの問題はクリアしており、期間中は大会関係者の輸送に積極的に協力していける。まだ、需要は未知数だが。
 一方で、大会期間中の臨海学校や学校行事の実施自粛の話もない。私どもは学校関係の貸切利用も少なくない。学校関連や日頃からのお客様の需要があれば、やはりそちらを優先する必要がある。その辺は稼働状況をにらみながら運用しなくてはならない。

-まだ決まっていないことが多い

 国内の観客はどこまで入ることができるのか。私どもはホテルも経営しているので、この状況でバスと両方、先の需要がしっかりあるところを取っていかなくてはならない。蓋を開けたら開催期間中、お客さまがいなかったということは避けなければならない。

-コロナ前は運転士の不足が深刻だった

 今、コロナ禍の状況で運転手にも一時休んでもらっているが、もし需要が回復した時には再び人手不足になることは明らかだ。大型二種免許を持っている人の数が年々減ってきている。なので、雇用調整助成金は非常に助かっている。そういう意味でも、現業系である運転士、バスガイドの雇用は何としても守らねばならない。

-雇調金も現行の特例措置の終了が間近に迫る。不安は?

 需要が回復しないと難しい。雇調金で休業しているだけでは次が開けない。それでもバスの維持など固定費はかかる。雇調金をもらう状況が続いても経営の根本的な解決にはならない。今は延命措置をしているだけの段階だ。

-コロナ前は運転士の不足が深刻だった

 今、コロナ禍の状況で運転手にも一時休んでもらっているが、もし需要が回復した時には再び人手不足になることは明らかだ。大型二種免許を持っている人の数が年々減ってきている。なので、雇用調整助成金は非常に助かっている。そういう意味でも、現業系である運転士、バスガイドの雇用は何としても守らねばならない。

-採用の状況は

 今年(21年4月入社)の新卒採用は、事務職が5人とバスガイドが8人。整備部門も入れてトータル20人ほど。例年よりは少ない規模だが、こんなにコロナの影響が続くとは思っていなかった。

-来年度は?

 難しい。当社は6月が決算だが、来期(2022年6月期)は必ず黒字にしないと大変厳しい。そのためには、もちろん多くの策を講じているが、採用についても大幅に見直さざるを得ない状況だ 。
 ただ、全く採用しないとなると、世代間で人数に偏りも出てしまい、支障もある。経営での出血がどのぐらいの規模で止まるか、期間はいつまでか、にらみ合いの状況が続く。これは採用だけの問題ではなく、大胆な経営の見直しが必要となる可能性がある。

-路線バスの運行も受託している

 都バスを受託しているが、利用客が減っている。都心部の路線は出社する人が減り、乗客の落ち込みが大きい。2~3割は減っている。懸念されることは、乗客が大幅に減ったことによって路線バスを撤退する事業者も出る可能性があることだ。
  都内も路線バス事業者は観光ほどではないが、影響を受けている。受託している路線バスも、乗客減による減便が増えると、売上に影響する可能性もある。

-今後、推進する施策は?

 東京の人に都内を中心に観光してもらう「マイクロツーリズム」に注力する。近年注目されてきたが、これはまさにはとバスの守備範囲でもある。東京のことを再発見する良いチャンスと捉えている。
  東京も多摩の方まで含めれば知られざる名所は少なくない。東京に観光客が訪れないことを悩むのではなく、どのようにお客様のニーズを創出できるかが鍵だ。
  コロナ前のマインドに戻るにはまだ時間を要する。ただ、その都度、お客さまの気持ちを諮って対応し、コースを立てていく。

-観光産業にどのような支援が必要か

例えば、Go Toに代わる助成制度としてマイクロツーリズムや、近場の観光に限定して利用できる助成があれば、今のニーズにも沿った形になってありがたい。果たしてその段階まで実現となるかどうか。
  もし、学校行事などで従来の人数でのバス利用が密であるとするならば、1台分のところを2台稼働させるための助成制度の創設など時勢に応じた制度を講じてもらえれば、と思う。


 最初の緊急事態宣言が発令されて2年目に入る。はとバスは、緊急事態宣言中、主力事業の観光バスツアーを停止していた。従業員もバックオフィスを含め、大半の社員が休業を強いられた。宣言が明けたからとは言え、雇調金の特例措置終了も間近に迫り、経営環境の厳しさに変わりはない。
 問題が多く山積する中、バス業界はコロナ前まで慢性的な運転士不足に悩まされてきた。いつ需要が回復するか不透明な現状に、業界関係者の不安は募る。
 観光客の落ち込みの影響はバス事業者だけでなく、飲食業、土産物店など多方面に広がっている。魅力ある観光文化の育成に目を向け、国や自治体による支援が急がれる。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年4月16日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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