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2020年度「結婚式場の倒産動向」調査

 2020年度(20年4月-21年3月)の「結婚式場」の倒産(負債額1,000万円以上)は、9件(前年度比28.5%増)で、2年連続で前年度を上回った。
 「結婚式場」の倒産9件のうち、新型コロナウイルス関連倒産は7件(構成比77.7%)と約8割を占めた。宿泊業の倒産127件のうちコロナ関連は68件(構成比53.5%)、飲食業は784件のうち202件(同25.7%)だが、「結婚式場」の倒産は、コロナ禍の影響がより大きく、直撃に見舞われたことがわかった。
 結婚式場業は、少子化や非婚化による婚姻数の減少に加え、挙式・披露宴を行わないカップルが増え、ホテルやレストランなど会場の多様化も進んでいる。
 そうしたなか、新型コロナウイルス感染拡大で2020年3月以降、挙式の中止や延期が増加し、結婚式場はかつてない苦境に追い込まれている。写真撮影だけのフォトウェディング、「三密回避」のため複数回の挙式開催など、結婚式場のプランナーはコロナ禍でのニーズの変化に沿った結婚式の提案を模索している。しかし、2021年1月に11都府県で緊急事態宣言が再発令されたほか、新たに大阪府など3府県で「まん延防止等重点措置」が適用される事態となり、先行き予断を許さない状況が長引いている。
 コロナ収束が不透明ななか、雇用調整助成金の特例措置や制度融資などの各種支援策は縮小されつつある。多くの結婚式場では、生活様式の変化や挙式数の減少で、売上がコロナ前の水準に戻ることはしばらく難しいだろう。また、コロナ支援策は、一時的な資金繰り緩和をもたらしたが、副作用として過剰債務を招いている。もともと結婚式場は豪勢な施設に大型の先行投資を要しており、売上減少は財務圧迫に直結しやすい。新型コロナ感染拡大が長引くほど、若者の結婚式場離れが進みかねず、当面厳しい状況が続くとみられる。

  • 調査は、日本産業分類の「結婚式場業」の2020年度(2020年4月‐2021年3月)の倒産を集計、分析した。

2020年度の「結婚式場」倒産は9件、このうち、7件が「新型コロナ」関連倒産

 2020年度の「結婚式場」倒産は9件(前年度比28.5%増)で、2年連続で増加した。
 9件のうち、7件(構成比77.7%)が「新型コロナ」関連倒産で、コロナ禍で結婚式場の経営は苦境に立たされている。
 もともと結婚式場は、少子化や適齢期の非婚化で市場が縮小傾向にある。結婚式場の倒産は2015年度以降、6年連続で10件を下回っている。2018年度から微増をたどっているが、コロナ禍が背中を押す形で生活様式の変化を促しており、経営環境はより厳しさを増している。

結婚式場

原因別 「不況型倒産」が約9割

 原因別の最多は、「販売不振」が6件(前年度比20.0%増)。倒産に占める構成比は66.6%(前年度71.4%)で、前年度から4.8ポイント低下した。
 次いで、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が2件(前年度比100.0%増)、「他社倒産の余波」が1件(前年度比±0.0%)。
 『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は8件(前年度比33.3%増)で、構成比は88.8%(前年度85.7%)と、全体の8割以上を占めた。
 コロナ禍での急激な売上減少が業績に直撃し、事業継続を断念するケースが多かった。

負債額別 「1億円以上」が約9割

 負債額別では、「1億円以上5億円未満」と「5億円以上10億円未満」の各3件(構成比33.3%)で最多。次いで、「10億円以上」が2件(同22.2%)、「5千万円以上1億円未満」が1件(同11.1%)の順。
 「結婚式場」の倒産では、「1億円以上」の構成比が9割弱(88.8%)だった。
 企業倒産全体では、「1億円以上」の構成比が23.5%にとどまるが、結婚式場は装置産業で、随時、設備投資が行われるため、負債額も大きくなるケースが多い。
 また、資本金別をみると、最多が「1千万円以上5千万円未満」で6件(前年度比100.0%増)。以下、「5百万円以上1千万円未満」2件(前年度比±0.0%)、「5千万円以上1億円未満」が1件(前年度ゼロ)だった。「5百万円未満」は発生しなかった(同2件)。
 倒産全体では小・零細規模が中心となったが、コロナ禍での業績悪化が著しい結婚式場では、中堅規模にも倒産が広がっている。

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