• TSRデータインサイト

「自分の車はどこに?」、カーシェア会社が突然の破産連絡

 複数の登録者がクルマを共同で利用する「カーシェアリング」。利用頻度にもよるがレンタカーより安く、駐車場代や車検など自動車のオーナーに掛かる手間と費用を抑えられるメリットが支持を集めている。なかでも駐車場が高い都心部では、ニーズが広がり新規参入も相次いでいる。
 ところが10月上旬、複数の関連会社を持つカーシェア会社(グループ)が突然、関係先に「破産手続きに入る」と通知し、波紋を広げている。投資家(オーナー)が購入した車両を預かり、マッチングアプリなどを通じ、利用者に貸し出していた。
 ブームの「カーシェア」で何が起きているのか。東京商工リサーチ(TSR)情報部が取材した。


 投資していた男性会社員がTSRの取材に応じた。今年3月、カーシェアに使用する中古の外国車と国産高級車の2台のオートローンを契約したと語った。車両の取得費用は、保険料金を含め2台で約1,000万円。購入後、手元にはカーシェア会社と交わした契約書とオートローンの申込書、自動車保険の証券3点が残った。契約した実車は、今回の騒動まで一度も目にしていなかったという。
 男性はカーシェア会社が斡旋した車を購入し、その翌月に1台当たり50万円のキャッシュバックを受けた。カーシェア会社からは、毎月のローンと保険代金に相当する金額が振り込まれ、1台当たり1万円ほどの配当金も支払われた。契約終了時に100万円も受け取れる契約だったという。

支払い遅延と突然の破産の連絡

 契約から7月まで、約定通りに男性の口座に入金された。だが、8月23日、突然「資金繰りが厳しいため、今月の支払い分を9月に2カ月分支払わせてほしい」と要請があった。そして、9月も支払いが困難との連絡があった後、10月8日、同社から「現在の事業を継続することは困難で、破産手続きを含めた法的手続きに入る」とメールが届いたという。
 このメールが届いた直後から、全国のオーナーがSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のグループを形成した。グループのメンバーによると、同社のサービスを利用した投資家は全国で少なくとも「600名にのぼる」とみている。カーシェア会社に委託した車両は手元になく、SNSには心配するオーナーからの声が相次いでいる。

カーシェアリング

‌車両が並ぶ駐車場(首都圏某所)

オーナーから預かった240台の車両を発見

TSR情報部は、カーシェア会社がオーナーから預かった車両が置かれた首都圏の駐車場を突き止めた。駐車場には約240台の高級車が隙間なく並んでいる。確認できる限り、すべての車両にはナンバーが付いている。関係者によると、その近くにさらに数十台も駐車しているという。
だが、存在が確認できていない車両もある。先の男性は2台契約した車両のうち、1台は関西で所在を確認できたが、もう1台はいまもわからないと憤る。

「自分に責任もあるが、早く説明してほしい」

 車両の行方に投資家らが不安を募らせるなか、15日、同社から男性のもとにSMSを通じて連絡があった。メールには、「弊社は現在、破産手続などの法的整理に向けて、弁護士にも相談をしながら準備を行っております」(原文ママ)と記載されていた。
 男性は「契約内容や、車の所有などを確認せずに投資をした自分に責任があるのは、もちろん承知している」としたうえで、「法的整理をすると言っても、会社から届くメールには具体的な決定事項が何も記されていない。今後のローンの支払いや車両のことなど、一刻も早く説明してもらいたい」と訴える。


 TSR情報部は関係先に取材を進めているが、カーシェア会社の代表とは連絡がつかない状況が続いている。カーシェア会社の取引先も、同社と連絡が取れないと語る。取引先は、10月上旬に従業員の解雇をカーシェア会社から聞いたと話すが、実態は不明なままだ。
 オーナーから車を預かったまま連絡を絶ったカーシェア会社のホームページは、いまも事業停止などの状況は書かれていない。
 TSRでは引き続き、動向を注視していく。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」10月19日号に掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「倒産発生率」ワーストは京都府 近畿2府4県がワースト10位内、地域の格差拡大

2025年の「倒産発生率」は0.199%で、2024年から0.005ポイント上昇した。地区別は、ワーストの近畿が0.31%、最低の北海道は0.126%で、最大2.4倍の差があり、地域格差が拡大したことがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

新型コロナ破たん、2カ月連続の150件割れ

2月は「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1,000万円未満含む)が140件判明し、2020年2月の第1号の発生から累計1万3,715件に達した。2026年1月は143件で2022年1月の117件以来、4年ぶりに150件を下回ったが、2月も140件と小康状態が続いている。

3

  • TSRデータインサイト

2025年の株主優待「導入」上場企業は175社 個人株主の取り込みが課題、優待廃止は68社に

2025年に株主優待の導入(再導入を含む)を発表した上場企業は175社だった。一方で、廃止を発表した上場企業は68社だったことがわかった。

4

  • TSRデータインサイト

2026年度の「賃上げ」 実施予定は83.6% 賃上げ率「5%以上」は35.5%と前年度から低下

2026年度に賃上げを予定する企業は83.6%で、5年連続で80%台に乗せる見込みだ。 2025年度の82.0%を1.6ポイント上回った。ただ、賃上げ率は、全体で「5%以上」が35.5%(2025年8月実績値39.6%)、中小企業で「6%以上」が7.2%(同15.2%)と、前年度の実績値から低下した。

5

  • TSRデータインサイト

2025年 上場企業の「監査法人異動」は196社 「中小から中小」が78社、理由のトップは「監査期間」

全国の証券取引所に株式上場する約3,800社のうち、2025年に「監査法人異動」を開示したのは196社(前年比43.0%増、前年137社)だった。