• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

「自分の車はどこに?」、カーシェア会社が突然の破産連絡

 複数の登録者がクルマを共同で利用する「カーシェアリング」。利用頻度にもよるがレンタカーより安く、駐車場代や車検など自動車のオーナーに掛かる手間と費用を抑えられるメリットが支持を集めている。なかでも駐車場が高い都心部では、ニーズが広がり新規参入も相次いでいる。
 ところが10月上旬、複数の関連会社を持つカーシェア会社(グループ)が突然、関係先に「破産手続きに入る」と通知し、波紋を広げている。投資家(オーナー)が購入した車両を預かり、マッチングアプリなどを通じ、利用者に貸し出していた。
 ブームの「カーシェア」で何が起きているのか。東京商工リサーチ(TSR)情報部が取材した。


 投資していた男性会社員がTSRの取材に応じた。今年3月、カーシェアに使用する中古の外国車と国産高級車の2台のオートローンを契約したと語った。車両の取得費用は、保険料金を含め2台で約1,000万円。購入後、手元にはカーシェア会社と交わした契約書とオートローンの申込書、自動車保険の証券3点が残った。契約した実車は、今回の騒動まで一度も目にしていなかったという。
 男性はカーシェア会社が斡旋した車を購入し、その翌月に1台当たり50万円のキャッシュバックを受けた。カーシェア会社からは、毎月のローンと保険代金に相当する金額が振り込まれ、1台当たり1万円ほどの配当金も支払われた。契約終了時に100万円も受け取れる契約だったという。

支払い遅延と突然の破産の連絡

 契約から7月まで、約定通りに男性の口座に入金された。だが、8月23日、突然「資金繰りが厳しいため、今月の支払い分を9月に2カ月分支払わせてほしい」と要請があった。そして、9月も支払いが困難との連絡があった後、10月8日、同社から「現在の事業を継続することは困難で、破産手続きを含めた法的手続きに入る」とメールが届いたという。
 このメールが届いた直後から、全国のオーナーがSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のグループを形成した。グループのメンバーによると、同社のサービスを利用した投資家は全国で少なくとも「600名にのぼる」とみている。カーシェア会社に委託した車両は手元になく、SNSには心配するオーナーからの声が相次いでいる。

カーシェアリング

‌車両が並ぶ駐車場(首都圏某所)

オーナーから預かった240台の車両を発見

TSR情報部は、カーシェア会社がオーナーから預かった車両が置かれた首都圏の駐車場を突き止めた。駐車場には約240台の高級車が隙間なく並んでいる。確認できる限り、すべての車両にはナンバーが付いている。関係者によると、その近くにさらに数十台も駐車しているという。
だが、存在が確認できていない車両もある。先の男性は2台契約した車両のうち、1台は関西で所在を確認できたが、もう1台はいまもわからないと憤る。

「自分に責任もあるが、早く説明してほしい」

 車両の行方に投資家らが不安を募らせるなか、15日、同社から男性のもとにSMSを通じて連絡があった。メールには、「弊社は現在、破産手続などの法的整理に向けて、弁護士にも相談をしながら準備を行っております」(原文ママ)と記載されていた。
 男性は「契約内容や、車の所有などを確認せずに投資をした自分に責任があるのは、もちろん承知している」としたうえで、「法的整理をすると言っても、会社から届くメールには具体的な決定事項が何も記されていない。今後のローンの支払いや車両のことなど、一刻も早く説明してもらいたい」と訴える。


 TSR情報部は関係先に取材を進めているが、カーシェア会社の代表とは連絡がつかない状況が続いている。カーシェア会社の取引先も、同社と連絡が取れないと語る。取引先は、10月上旬に従業員の解雇をカーシェア会社から聞いたと話すが、実態は不明なままだ。
 オーナーから車を預かったまま連絡を絶ったカーシェア会社のホームページは、いまも事業停止などの状況は書かれていない。
 TSRでは引き続き、動向を注視していく。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」10月19日号に掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

三井住友銀行の「メインバンク取引社数」増加 ~ メガバンクで唯一増加、新設・中小企業向け脚光 ~

東京商工リサーチ(TSR)がまとめた「2026年メインバンク調査」で、三井住友銀行がメガバンクで唯一、社数が増加した。他に先駆けてデジタル総合金融サービスをリリースし、取引社数の増加につなげた。

2

  • TSRデータインサイト

「テレビ番組制作会社」の倒産 過去最多タイ コスト上昇と番組制作の予算削減で苦境

2026年1-8月のテレビ番組制作会社の倒産は14件で、同期間では最多の2010年に並んだ。このペースで推移すると、年間では2009年と2012年の21件を抜き、過去最多を更新する可能性が高まっている。

3

  • TSRデータインサイト

「一人で悩まず、まずは早めの相談を」 ~ 中小企業活性化全国本部 インタビュー ~

中小企業の伴走者として、中小企業活性化協議会の存在感が高まっている。 東京商工リサーチは、全国47都道府県の活性協を支援する中小企業活性化全国本部にインタビュー。再生支援の現場経験も豊富な松田正義氏、佐藤友泰氏、茂木俊裕氏の3名から話を聞いた

4

  • TSRデータインサイト

2026年1-8月の「税金滞納」倒産181件、前年超える 税金滞納が事業再建の障壁、破産が97.7%を占める

2026年8月の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は、26件(前年同月比73.3%増)と大幅に増加、4月から5カ月連続で前年同月を上回った。1-8月累計は181件(前年同期比58.7%増)に達し、8月で前年の年間160件を上回り、納税(納付)に苦慮する企業が多いことを示している。

5

  • TSRデータインサイト

倒産前の「事業譲渡」 コロナ後に高水準 2025年度は213件、旅館,ホテルが最多

主力事業を他社に譲渡した後、倒産手続きに入る「事業譲渡後の倒産」が、2025年度は213件発生した。2024年度は227件で、2年間の平均は220件となり、前回調査(2019年度-2023年度)の同189件を上回り、増勢が続いていることがわかった。

TOPへ