• TSRデータインサイト

「特例リスケ」窓口相談が過去最多ペース、出口戦略の多様化も重要に

 コロナ禍で、中小企業向け資金繰り支援制度の利用が活発だ。中小企業再生支援協議会(支援協)では、4月から8月までの窓口相談(1次対応)件数が累計2,661件に達した。2019年度(4-3月)は2,247件だったが、わずか5カ月で昨年度の件数を突破した。2003年に支援協が設置されて以降、最多は2013年度の4,128件で、今年度はこれを大幅に上回ることが確実になっている。
 支援協は4月1日から、新型コロナウイルス感染拡大による事業者の資金繰り支援を目的に、「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール」(特例リスケ)の運用を開始した。開始前の3月の窓口相談は169件だったが、4月以降は窓口への「駆け込み」が大幅に増加。特例リスケは、事業改善の可能性を支援決定の判断材料とせず、足元の資金繰り破たんを防ぐための計画を策定し、1年間のリスケや新規融資に向けた金融機関との調整に重きを置いている。コロナ禍で傷んだ企業の資金繰り支援として機能し、受け入れられている。
 新型コロナの影響は長期化が予想され、今後は抜本再生や廃業支援を含めた「出口戦略」も重要となってくる。支援協では、一定の資産を手元に残すことが可能な「経営者保証ガイドライン」を活用した支援にも取り組んでいる。ただ、再チャレンジを念頭に置いており、廃業を必ずしも出口としているわけではない。コロナ支援で過剰債務に陥った企業の債務解消への道筋と同時に、代表者が高齢化する中で再チャレンジに依存しない企業版「終活」支援も必要になりそうだ。

特例リスケ


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年9月14日号掲載予定「SPOT情報」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

建材販売業の倒産 コロナ禍の2倍のハイペース コスト増や在庫の高値掴みで小規模企業に集中

木材や鉄鋼製品などの建材販売業の倒産が、ジワリと増えてきた。2025年1-7月の倒産は93件で、前年同期(75件)から2割(24.0%)増加した。2年連続の増加で、コロナ禍の資金繰り支援策で倒産が抑制された2021-2023年同期に比べると約2倍のハイペースをたどっている。

2

  • TSRデータインサイト

「転勤」で従業員退職、大企業の38.0%が経験 柔軟な転勤制度の導入 全企業の約1割止まり

異動や出向などに伴う「転勤」を理由にした退職を、直近3年で企業の30.1%が経験していることがわかった。大企業では38.0%と異動範囲が全国に及ぶほど高くなっている。

3

  • TSRデータインサイト

女性初の地銀頭取、高知銀行・河合祐子頭取インタビュー ~「外国人材の活用」、「海外販路開拓支援」でアジア諸国との連携を強化~

ことし6月、高知銀行(本店・高知市)の新しい頭取に河合祐子氏が就任した。全国の地方銀行で女性の頭取就任は初めてで、大きな話題となった。 異色のキャリアを経て、高知銀行頭取に就任した河合頭取にインタビューした。

4

  • TSRデータインサイト

ダイヤモンドグループ、複数先への債務不履行~蔑ろにされた「地域イベントの想い」 ~

ライブやフェスティバルなどの企画やチケット販売を手掛けるダイヤモンドグループ(株)(TSRコード:298291827、東京都、以下ダイヤモンドG)の周辺が騒がしい。

5

  • TSRデータインサイト

2025年1-8月の「人手不足」倒産が237件 8月は“賃上げ疲れ“で、「人件費高騰」が2.7倍増

2025年8月の「人手不足」が一因の倒産は22件(前年同月比37.5%増)で、8月では初めて20件台に乗せた。1-8月累計は237件(前年同期比21.5%増)に達し、2024年(1-12月)の292件を上回り、年間で初めて300件台に乗せる勢いで推移している。

TOPへ