• TSRデータインサイト

裁判資料で明らかになった「架空循環取引」

 大手リース会社が、事業会社を相手に提起した裁判が注目を集めている。訴因は、事業会社による詐害行為の取り消しだ。この中で、昨年末に発覚した複数の企業が絡んだとされる「ある取引」に言及している。
 裁判記録によると、この取引は「複数の債権者による詐欺を理由とした告訴がなされている経済犯罪の事案であり、その中核をA社が担っていた。A社は2008年頃から架空循環取引を行っていた」と指弾している。

「基本契約書(ウソ)」との記載

 取引スキームを裁判資料より抜粋すると以下のようになる(以下、伏字は東京商工リサーチによる)。

1. A社は経営コンサルタントとコンサルティング契約して経理業務を委託。A社の経理業務は本社ビル4Fで実施され、会計書類作成は経営コンサルタントらが行っていた。

2. A社は、大手家電量販店の名義で自己またはB社、C社の口座に振り込み、外形的に大手企業との取引があるように見せた。振込名義人は「(カ)●●(TSR注:大手家電量販店)」などとしていた。または、B社らから同様の手法でA社の口座に振り込みを受けた。

3. そのうえで、A社やB社、C社は振込履歴に併せて計算書類や架空の契約書類を作成し、金融機関に提出して多額の融資を受けた。A社の取締役から経理資料の任意提出を受けたところ、「基本契約書(ウソ)」(原文ママ)と記載されたあからさまな偽造書類が存在した。

4. A社は偽装した書類、振込履歴、通帳の記載を利用して大手企業と継続的な取引があるように装い、ファクタリングを利用。将来生じる債権を第三者に対して譲渡し、金銭を詐取した。取引確認のため、譲渡債権の債務者とされる大手企業に対して架電されることもあるが、A社はこのような場合に備えて、大手家電量販店名義の名刺を作成し、架空の電話番号を記載。偽の従業員に対応させていた。また、大手量販店の虚偽のオフィスで第三者に取引の経緯を説明した。

5. A社は巧みに循環取引を繰り返していた。2019年10月以降、資金繰りに窮し、詐欺を繰り返した結果、多くの債権者から請求を受け音信不通となった。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年7月22日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ