第2回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査(速報値)
全国で感染拡大が続く「新型コロナウイルス」の影響が、企業経営にも波及している。
東京商工リサーチ(TSR)が国内企業に新型コロナウイルスの影響を聞いたところ、94.8%(1万408社中、9,872社)の企業が「すでに影響が出ている」、または「今後影響が出る可能性がある」と回答した。3月2日~4日16時半までの回答を集計した。
前回(2月7日~16日実施)のアンケート(回答1万2,348社)では、「すでに影響が出ている」が22.7%、「現時点で影響は出ていないが、今後影響が出る可能性がある」が43.7%で、何らかの「影響がある」企業は合計66.4%にとどまっていた。わずか2週間で28.4ポイントアップし、ほとんどの企業に影響が広がっていることがわかった。
政府は、2月26日に大規模なスポーツや文化イベントの中止や延期を要請し、27日には全国の小中高校に臨時休校を求めるなど、日を追うごとに自粛ムードが広がり、消費マインドも落ち込んでいる。新型コロナウイルスは、株価や国内の企業活動を翻弄している。
- ※本調査は2020年3月2日~8日までインターネットを通じて実施しているアンケートのうち、4日16時半までに回答のあった1万408社を集計、分析した。
- ※前回(第1回)の「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査は、2月20日発表。
- ※資本金1億円以上を大企業、1億円未満を中小企業と定義した。
Q1.新型コロナウイルスの発生は、企業活動に影響を及ぼしていますか?(択一回答)
大企業の63.9%、中小企業で52.0%が「すでに影響が出ている」
最も多かったのが、「現時点ですでに影響が出ている」で54.1%(1万408社中、5,640社)。次いで、「現時点で影響は出ていないが、今後影響が出る可能性がある」が40.6%(4,232社)で、全体の94.8%の企業が企業活動への影響をあげた。
規模別では、「現時点ですでに影響が出ている」は、大企業(資本金1億円以上)で63.9%(1,890社中、1,208社)に対し、中小企業(同1億円未満)は52.0%(8,518社中、4,432社)で、大企業が11.9ポイント上回った。前回調査比では、大企業が32.4ポイント、中小企業が31.4ポイント、それぞれアップした。
産業別 卸売業への影響が顕著
産業別では、「すでに出ている」は、卸売業の61.6%(2,285社中、1,408社)が最多だった。卸売業は「今後出る可能性がある」の34.7%(793社)を含むと、合計96.3%にのぼる。卸売の特性上、取引先は多岐にわたり取引連関の中心に位置するため、他産業より影響が出やすい。
宿泊業や旅行業を含むサービス業他では、「すでに出ている」が59.9%(1,902社中、1,141社)と約6割に達する。外国人観光客などインバウンドの減少が直撃し、打撃を受けていることがわかる。
一方、農・林・漁・鉱業の12.2%(41社中、5社)、建設業の8.9%(1,233社中、110社)、が「影響なし」と回答した。内需を中心に展開する業種では、広がりは緩やかなようだ。
規模別では、大企業では小売業で「影響なし」がゼロ(全62社)だった。国内外で広く店舗展開する企業は、外出自粛や買い占めなどの影響を受けやすいが、同時にインバウンドは都市部の百貨店など大企業を中心に恩恵を受けていた反動とみることもできる。
Q2.Q1で「すでに影響が出ている」と回答した企業に伺います。どのような影響がでていますか?(複数回答)
最多は「イベント、展示会の延期・中止」
「すでに影響が出ている」と回答した企業に内容を聞いたところ、5,497社から回答があった。
最多は、「イベント、展示会の延期・中止」の2,835社(構成比51.5%)。次いで、「マスクや消毒薬など衛生用品が確保できない」の2,809社(同51.1%)。
「商談の延期・中止」も2,290社(同41.6%)に達し、ビジネスチャンス獲得にも影響を及ぼしている。
また、「従業員が感染、または濃厚接触者となった」は54社あった。こうした企業は、事業所閉鎖などで企業運営そのものに大きな影響を受けている可能性がある。
Q3.貴社の今年(2020年)2月の売上高は前年同月を「100」とすると、どの程度でしたか?
中央値は「90」、中小の約2割が「80未満」
感染拡大が急激に広がった2月の売上高は、Q1で「すでに影響が出ている」と回答した企業のうち、2,981社から回答を得た。「100以上」は、32.8%(979社)にとどまり、約7割が前年割れだった。中小企業では、「80未満」が19.7%(2,565社中、507社)にのぼる一方、大企業は13.4%(416社中、56社)にとどまった。
中央値は全企業が90、中小企業が90、大企業が95だった。
今回の調査で、約7割の企業が「新型コロナウイルス」感染が広がった2月の売上高が前年同月より落ち込んだと回答した。中小企業の約2割は20%以上の減収で、資金繰り支援の緊急性が高まっている。また、前回調査で何らかの「影響がある」は66.4%だったが、今回は94.8%まで急増した。消費増税や暖冬などの天候不順に加え、感染拡大による小中高校の一斉休校の要請などで自粛ムードも広がり、企業活動への影響は深刻さを増している。
政府は日本政策金融公庫などに総額5,000億円の緊急貸付・保証枠を設けることを決め、さらに2019年度予算の予備費2700億円の活用方法を検討している。ただ、内需低迷が避けられず、終息も見通せない状況下で、どれだけの企業が新たな負債(借金)を背負うことに踏み出すか未知数だ。2019年(1-12月)の企業倒産は8,383件(前年比1.7%増)で11年ぶりに増加した。休廃業・解散は4万3,348件(同7.2%減)で、合計5万件以上の企業が市場から退場している。
新型コロナウイルスの感染拡大で、企業業績は低迷が始まっている。事業継続が難しい企業には最後のひと押しにもなりかねず、倒産だけでなく休廃業・解散につながることが危惧される。