• TSRデータインサイト

「白鳥エステ」運営の(株)アキュートリリー、「人件費率85%」の異常経営

 10月1日、負債1億5,000万円を抱えて東京地裁から破産開始決定を受けた(株)アキュートリリー(TSR企業コード:300584920、渋谷区)。身の丈を超えた「人件費率85%」の異常な経営ぶりが倒産の一因だったことが、東京商工リサーチ(TSR)の取材で浮かんできた。

 アキュートリリーが運営するエステサロン「白鳥エステ」は、ピーク時は東京や大阪など10店舗以上を展開していた。代表者のA氏は、エステティシャン養成講座を開くなど、一部ではカリスマ的な人気を誇り、同氏のパーソナリティーにほれ込んでアキュートリリーのお客からエステティシャンになった従業員もいたという。
 同社はエステの世間相場が1時間1万円以上と言われる時代に、約3,000円と破格の料金設定で若い女性を引きつけた。同社が東京地裁に提出した「破産申立書」に経営実態が赤裸々に記載されている。

 異常な経営ぶりは人件費率(人件費/売上高)に表れている。同業他社の平均が20-30%に対し、同社の2014年度の人件費率は50%程度とほぼ2倍だった。そして、2017年度に新卒採用を本格化すると給与体系を歩合給から固定給に移行する。同社関係者はTSRの取材に、「従業員の給与は(同業他社より)比較的高めに設定していた」と明かした。だが、固定給への移行で2018年度の人件費率は85%程度まで上昇した。経営の常識を覆すような人件費率は、すでに損益を語るレベルではなかった。

 この時期から給与遅配が散発する。損益上とキャッシュフロー上の人件費率の乖離は常態化していた。安値のサービス提供と従業員の給料上昇が両立するはずもなく早晩、経営危機に陥るのは自明の理。それでも同社は突き進んだ。
 さらに、破産申立書にはこんな一文がある。「(2018年)8月には東京商工リサーチにて破産会社の記事がインターネット上で掲載されるなどし、次第に国税局をはじめ各所より支払いを強く求められる状況が発生した」。給料遅配を詫びる気持ちは感じられない。
 人手不足や可処分所得の伸び悩みが叫ばれるなか、従業員と顧客への「価格優位性」は魅力的に映る。だが、どんな高い給料も期日通りに払われなければ絵に描いた餅だ。多くの顧客と従業員、取引先に迷惑をかけた異常な経営は、誰もが容易に想像できる末路だった。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年10月28日号掲載予定「SPOT情報」を再編集)

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「倒産発生率」ワーストは京都府 近畿2府4県がワースト10位内、地域の格差拡大

2025年の「倒産発生率」は0.199%で、2024年から0.005ポイント上昇した。地区別は、ワーストの近畿が0.31%、最低の北海道は0.126%で、最大2.4倍の差があり、地域格差が拡大したことがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

新型コロナ破たん、2カ月連続の150件割れ

2月は「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1,000万円未満含む)が140件判明し、2020年2月の第1号の発生から累計1万3,715件に達した。2026年1月は143件で2022年1月の117件以来、4年ぶりに150件を下回ったが、2月も140件と小康状態が続いている。

3

  • TSRデータインサイト

2025年の株主優待「導入」上場企業は175社 個人株主の取り込みが課題、優待廃止は68社に

2025年に株主優待の導入(再導入を含む)を発表した上場企業は175社だった。一方で、廃止を発表した上場企業は68社だったことがわかった。

4

  • TSRデータインサイト

2026年度の「賃上げ」 実施予定は83.6% 賃上げ率「5%以上」は35.5%と前年度から低下

2026年度に賃上げを予定する企業は83.6%で、5年連続で80%台に乗せる見込みだ。 2025年度の82.0%を1.6ポイント上回った。ただ、賃上げ率は、全体で「5%以上」が35.5%(2025年8月実績値39.6%)、中小企業で「6%以上」が7.2%(同15.2%)と、前年度の実績値から低下した。

5

  • TSRデータインサイト

2025年 上場企業の「監査法人異動」は196社 「中小から中小」が78社、理由のトップは「監査期間」

全国の証券取引所に株式上場する約3,800社のうち、2025年に「監査法人異動」を開示したのは196社(前年比43.0%増、前年137社)だった。

TOPへ